ENo.0484　アルサイド

晴れた日差しの中、ぽつりぽつりと滴が地を打つ音がする。
かつて少女だった「彼女」は端末のキーを打つ手を止めて霧の無い窓の外をふと眺めた。
――聞いてくださいよ、機体から降りた瞬間雨が降って来るんですからたまったもんじゃねえですわ。
こんな日は、そんな風に不平を漏らしながら「彼」がひょっこり姿を現すのではないかと、そんな事を考えてしまう。

彼は元の世界に帰る気は無いと言っていたが、やはり何らかの力で元居た場所へと戻ってしまったのだろうか。
或いは、最も彼が居たいと感じていたであろう「あの場所」か。
どちらにしても彼の事だから、相変わらずの調子で元気に、時折ツッコミに回りながら楽しくやっているのだろう。

ふと、思い付きを実行するために彼女は私用の端末を手に取る。
そして懐かしい連絡先へとメッセージを入力した。




＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
マンノウォーシステムの皆さまへ


お久しぶりです。お元気でしょうか？
こちらは変わりなく中間管理職に追われています。
皆さんと一緒にケーキバイキングに行ったり食事に行った日々が恋しいです。
もしこのメッセージが届いていたら、5年ぶりにクリスマスをご一緒しませんか？

それから…
もしも不肖の契約社員が何かの間違いでそちらに居たら、こうお伝えください。

「5年も先方と交友を深めているようですから、
　当然ながら契約更新はもぎとっているんですよね？」


……
…

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

自分用。