ENo.0574　言語魔術師アリューカ

　メルサリアを撃墜した直後、オッティアに搭載された計器が全て振り切れた。
　故障ではない。

　残像領域に魔方陣が形成されていく。

　あまりにも超巨大な霊障『ワールドポータル』が生成されたのだ。
　形は不定形。維持費は膨大。30000cはみるみるうちに溶けていく。

　そこに、音速を超える速度で、衝撃波を放ちながら、突き進む機体があった。
　アリューカを乗せたウォーハイドラ『オッティア・ザ・ライアー』だ。

「アリューカ、目を覚ませ……。アリューカ！！」

　先ほどの戦闘での度重なる衝撃。アリューカは気絶していた。
　オッティアの必死の呼びかけは続く。

「俺は、しょせん機械だ。その身がどうなったってかまわない！
　だからどうか、アリューカ……元の世界に……幸せな世界に！」

「……オッティア、そういう自己犠牲の精神は無しって言ったでしょ！」

「ア、アリューカ……！　気が付いて……」

「さあ、オッティア、ワールドポータルに突っ込むよ！　パドとの結婚式に遅れちゃう！」

　全てのブースターが、限界を超えた駆動をし始める。
　衝撃波で砕け散る装甲。加速する機体。
　周囲の霊障のせいか、時間と空間はねじれ、加速はさらに増していく。

「霊障よ！　『この世界のついた嘘』よ！　僕たちを、元の世界に、帰還させてくれ！」

　ワールドポータルに突入。
　機体重量が変動。重量0ジャスト。
　加速に次ぐ加速。第一宇宙速度、第二宇宙速度、第三宇宙速度、亜光速、ワープスピード。

「機体速度、ワープスピードに到達。アリューカ、この風景は……星々がきらめいて……」

「星じゃないよ。世界だ。無数の世界がきらめいているんだ。
　……目標、ベイランド。僕が生まれた世界。
　滅びた大陸と、小さな島国しか存在しない、ちっぽけな世界だけど。
　でもそこには、愛するパドが待っているんだ……。僕は、ベイランドに、帰還する！！」

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　丘の上の教会。アリューカはパドをお姫様だっこしている。

「どうやら、結婚式には間に合ったみたいだね」アリューカは言う。

「どうやら、色々と苦労してきたみたいだな」パドは言う。

「苦労したよ。でも、楽しかった。長い話になる。聞いてくれるよね？」アリューカの問い。

「ああ、もちろんだ。で、その巨大なやつは……？」困惑するパドに、

「オッティア、『オッティア・ザ・ライアー』。僕の相棒だよ」アリューカは最高の笑顔で答えた。



　　　　　　　　～FIN～

■説明
　霧の中、残像領域にうっかり紛れ込んでしまった異世界の人専用のユニオンです。
　ユニオン活動は格闘*5です。ユニオン購入は素材+1ですが、柔軟に対応したいです。

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　警告 警告 警告 警告 警告 警告 警告 警告

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……るか……えるか……聞こえるか……
……今……私は……世界を超えて語りかけている……
……元の世界……異世界に故郷を持つ者たちよ……
……集まれ……集うのだ……帰還……めに……

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　ワールドクラッキングを検知しました。
　逆探。対象を特定。シャットダウンします。

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「青空を見たのは、何時のことだったか」
「夕焼けを見たのも、だいぶ前になるねえ」

そんなことを呟いても、得られるものなど、何もないというのに。
自称＜訪問者＞たちは集い、情報交換し、切磋琢磨し続ける。

霧の果てにあるものが、故郷よりも大切なものかもしれないと思い始めたとき、
その瞬間に大義名分は朽ち果て、残像領域こそが真実＜リアル＞なのだと気付くのだろう。

デイドリームビリーバーは死ぬ。でも、せめてそれまでは。