ENo.0535　クロノワール・ナイン

残像領域の基地で出撃の時を待っていた
ここでお金を稼ぐことがあなたの使命だ
冷たい格納庫の中、整備の手を休め、あなたは横になる
鉄骨むき出しの天井を見上げ、あなたは出撃のサイレンが鳴るまでひと時の休息を味わっていた……


――彼女、クロノワール・ナインは考える。
相方であるAI-弐式のあり方、どうして私と一緒に組んだのか、依頼があったのか。
ルオシュからの依頼の一連は終わり。メルサリアの置き土産を思う。
無くなった霧と、消えてしまった戦場。

見上げた天井からは、久しく見ることがなかった――星空が見えた。

「スター……ナイト……」

星を守る騎士。――星がある、夜。

随分と洒落ている状況ね、とクスリと笑う。
スターナイト。いい名前だったと自分でも思う。
霧で見れないくせに、いつか見たあの夜空と星が忘れなくて、そんなことで付けた名前。

でも、その夜空はこれからいつでも見れる。
……曇ってる日はあるだろうけれど、それでも、星はある。――霧はない。

「……このマフラーも、もう邪魔になるのかしら？」

寒い残像領域でいつも暖を取ってくれたマフラー。
色々作為もして、霧の濃い日も快適に過ごせるよう改造していたりするこれも、用が無くなる。
いつしか自分のトレードマークにもなるだろうと所持していたから、これからどう使うか、なんて思う。

コロッセオのでは積極的に他者と交流し、大規模なミーティングで勝利を掴み取るために努力をした。
累積ランキングにも常に名が載っていたのはあの時期が最後であろう。
――その後の"私"は、あまり思い出したくもない無気力な日々だった。

生きるとは、死とは。
死んだ後とは、生き続けるということは。

――まだ、答えは分かっていない。

――だけれど、私のやることは結局変わりはないのだ。


「……傭兵、クロノワール・ナイン」

「目標を――撃ち抜く」


「ただ、それだけのこと」
「何を難しく考えていたのか、分からないわ」
「死ぬその時まで生きればいい」

「――それが今の、私が生きる意味よ」



愛銃を胸に抱え、座り込んで目を瞑る。
最後の戦場へ出撃の合図をゆったりと、待つ。


――さて、これが終わったとはどこに行こうか。

星を撃ち落とすように――
そして、一瞬の流れ星のように。


我らは撃つ。