ENo.0176　カヴネル・レビン

BEEP! BEEP! BEEP!

オレの相棒『ライトニング』がリズミカルにアラートを鳴らしている。
セレスト・グレムリンから放たれた無数のミサイルが、オレたちハイドラ大隊を喰らい尽くそうと追いかけてくるからだ。

暴力の群れを潜り抜けようと、相棒はその身を壊しかねないほどに翼を羽ばたかせ、旋回し、飛び回った。稲妻のように。
そんな相棒を操るオレの体には、焼けつくような痛みが張り付いていた。

刹那。不意を突かれ、相棒の翼に風穴が空く。見下ろせば、あざ笑うかのような歌声が、地上から聞こえてきた。
これだから軽量機は、とオレは他人事のように呆けた。

だが、まだ終わりじゃない。
今ここで出せるありったけまで、同調率を引き上げる。
翼の穴に、仮初の膜が張られる。
酔うためなんかじゃない。未来を切り開くために！　力を貸してくれ、相棒！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　[Assimilation rate:154%]
　　　　　　　　　　　≪警告：機体同調率100％を超過。モード『ドラゴナイズ』へ移行します≫

竜の餌食になるのは、オレじゃねえ。
――お前らの方だ。

他の機体からはきっと、竜が金色の炎を纏って飛んでいるように見えていたのかもしれない。
オレが相棒の爪を通して、敵機の装甲を砕く感触を得るまでの時間は、それほどかからなかった。
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骨組みだけとなった翼を背負い、相棒は地面にへばりこんだ。
翼の交換は急を要する。この遺跡もいつまでもつか分からねえ。
激しい痛みと疲労。その両方に耐えつつ、オレは相棒の口から這い出した。

ふと、遺跡の外を見ると。見たこともないほどの大きな津波が、はるか遠くから押し寄せて来るのが見えた。波はあまりにも大きく、水の壁がそびえ立っているようにも見えた。
破滅的な光景なのに、まるで神話の絵の中にいるようで、オレは不思議な感動を覚えた。
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パーツの換装を終え、オレと相棒は残像領域でのラストフライトに臨む。
ひどく飛び辛い、霧で満たされた空。あの忌々しい虹色の輪。オレの前に立ちふさがった、手強い奇妙な兵器たち。個性にあふれたハイドラと、それを駆るライダーたち。
そして、セシィと、ニーベの旦那。
どういう結末を迎えるにしろ、次の出撃でお別れだ。

セシィ。あいつはどうしようもねえひよっこ野郎だけど。オレの戦いには懸命について来てくれた。今となっては、かわいい後輩だ。
ニーベ。オレが荒んでる時に煽ってきたのは気に障った。この悪魔め。…けど、鴉のように黒いハイドラに乗り戦う姿は気高い戦士そのものだった。

二人の旅路が少し心配だけど…オレは信じる。きっと、大丈夫だって。

オレが帰る先にも、また過酷な戦場が待ち構えている。それも残像領域（ここ）と同じか、それ以上の。
セシィたちにまた会う日まで、泥水啜ってでも生き残ってやる。
オレの命の残機は一機。…これじゃあ、まるでこっちがハードモードじゃねえか？
相棒の『胃』の中で、オレは含み笑いをこぼした。

待ってろトロバ。もうすぐ帰るからな。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　[HCS:Link success]
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 [Battle System:Fine_del_cielo]
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 [Mode:Warp permission]

オレは飛ぼう。『空の終わり』まで。
そして――その向こうへと！

Dive into the mist!

［説明］
飾り気のない格納庫。中身は空っぽだ。

看板は剥がれ落ち、なくなってしまったようだ。

オーナー：Eno176