ENo.0002　マヒロ・スナミ

　スチゴグマのゴーグルが曇り、少女の硬質入刀が威勢よくシリンダーを切り裂き、緑の培養液の中から出てきた痩身の男は少女をしかと抱き留めた。
　そして、結婚式が始まる。

　どうやら物語はハッピーエンドに到達しようとしているらしい。
　結局、何が何だか分からなかったが、分からないなりにこの結果へ至る手助けができたのは、意外にも悪くない気分だった。
　人が幸せそうにしているのは、決して悪いものではない。

　そうやって素直に思える自分に、マヒロは驚いていた。
　5年前なら、こんな風に思えていただろうか。
　……思えてないだろうな。
　人の幸せを助け、祝えるくらいには、今の俺も幸せなんだろう。きっと。
　それは、悪くないことであるはずだ。

　マヒロは涙を浮かべる花嫁と花婿を見る。
　あの二人の幸せが長く続きますように、と口の中で呟いた。

　花嫁たちは、ガクに硬質ダガーを返したようだ。
　受け取ったそれを、ガクは徐に持ち上げる。
　星が瞬く空の下、硬質ダガーがきらりと光った。

「行こうぜ、マッヒー」

　いつもの調子でガクは言う。
　結婚式。そして、披露宴。
　残された時間は少ないが、まだ終わっていない。
　少しくらい、あの二人の幸せのお零れを貰っても良いだろう。何せ、俺たちは頑張った。
　それに、なぜだか分からないが、知己の姿も多く見えた。
　久々にそいつらと話すのも悪くない。

「ああ」

　ほんの少し口元を緩めて、マヒロはそう言った。

結婚領域に突如舞い降りた、不滅のベイビー。
ベイビーは家に帰る。