ENo.0050　闇

【記録】
[状況]
　現状、聴く限りでは、要となる人物が無事に結ばれれば、この領域は消滅するようだが……
　消滅に際し、呼び出される以前と同じ場所に帰る事ができるのか否か。
　斯様な領域や現象について、俺自身は初めて聴くものだが……
　此処がどういう領域であるのか、ある程度理解している……ように、見える者達は、この領域の発生が初めてではないかのような言動をしているように感じる。
　とはいえ、此処への来訪の方法が、時空震である以上……任意で転移できるのか否かを知る術は、今の俺にはない。
　望む通りに成る事もあれば、そうでない事もある。
　俺の知る限りの時空震は、そういうものであるからだ。

　さりとて……在籍というか、出席というか。
　斯様な状況に身を置く事になった以上は。
　目出度い連中の門出を、多少なり、祝っておくべきであろうか。

[身体状況]
　今の所は異常なし。
　聞き及ぶ情報通りであれば、危機的状況に陥る前に、整備設備のある所へ戻れるはずだが。

[機体状況]
　――良好。の、はず。
　もはや、此れで良いのか。

[備考]
　帰還見込みを知れた事で、幾ばかりかは、精神的に余裕が出来たのだろうか。
　再会を喜ぶ者の姿をなんとなしにも認識する程度、意識が向いている。
　……此処でしか、逢えぬ者も居ると鑑みるに、怪我の功名とも云えるのか。
　どちらかと云えば、引き離された側である手前、俺としては早く妻子に再会したい。

[えびっこのこと]
　このでかいえびっこにとっては、俺との再会が、此処でしか成し得ぬことになるのか。
　だから機嫌がいいのだろうか。遠慮なしに挟まれても困る。
　だが、もうじきお別れかも知れん、といった旨の事を話すと、震えながら挟んできたが……
　こればかりは、どうしようもない。

　何処とも知れない、水溜まりだけのある格納庫。
　でかい甲殻類が縄張りを主張している。