ENo.0128　闇

【業務報告】
[状況]
　……北部遺跡、最終決戦。
　何がどうなるのか……思惑も多岐に渡り、一概には言えぬ様相を呈している。
　戦後の状況が、如何様なものとなるのか、何もかもが不透明だが。
　……木っ端の傭兵は、最後まで、仕事をするのみだ。

　……業務続行。

[配属先/指示内容]
　第18ブロック、セクション・７[ハッキング]
　……遺跡の行方。

[身体状況]
　――改善はほぼ成されず。流石に、直前の破損と疲弊が酷過ぎた。
　それでも……これ以上、最悪を更新せずに済んだのは、不幸中の幸いか。
　計測結果類は、前回からほぼ横ばい。
　接続デバイス類のみ、流用にてどうにか基準程度にまで修復。
　飲食は未だ不可能。点滴類への拒絶反応は、軽微ながら発現したまま。
　融合部未稼働時の温上昇は鎮静したが……投薬効果なのか、自然鎮静なのか、判別付かず。
　視覚異常継続。平衡感覚異常由来の嘔吐感は、ほんの僅かながら、持続状態から、不規則発露に移行。一応は、改善と見るべきか。
　四肢末端、膝・肘関節付近、肩・腿関節類の麻痺症状は停滞。
　ウィルス流用からのナノマシン制御による、通常行動補助、継続中。
　融合部稼働中は予定通り、発熱による不調はあるが、概ね制御できる範囲内と判断。適時、稼働と停止を切り替えながら対処。
　打撲、裂傷類は……重ねての、応急処置対処。強度低下が著しいが、もう時間がない。
　脚部のみ、保護具の使用により、幾らかはましに行動ができている……体感的に。
　他、経過要注意。

[機体状況]
　――良好。
　遺跡情報接続構成から、復帰。
　……転移を許容。

[備考]
　契約維持中。
　……交渉。間に合うか。
　拠点設備、完了。

[えびっこのこと]
　先週に続き、俺の肩に乗ったまま、じっとしている。
　バケツに帰れと言っても、戻らなくなった。俺から離れたくないのか。
　その割には、相変わらず、挟まれる。

　整備作業室と、倉庫と、仮住まい――だけが在った。初めは。
　いつしか建造物の外殻は、異様な程、頑丈な隔壁に覆われ。
　自立駆動が可能であるらしき、反重力装置を備え。
　内部、様々に増設された設備群と、それらを駆動・維持する、動力生成装置が造られた。
　ただ、初めから、ずっと変わらずに。
　格納庫兼ガレージの隅には、いつも水溜まり。
　水溜まりの傍には、清掃用ではないバケツと、甲殻類型の謎生物がいる。