ENo.0003　ささみ

―――何処か

「こころちゃんはどこ？答えて。」
男の頭に拳銃を突きつける、フライトスーツの女。
「クク……『こころ』という名前の由来、しっているか？薬研ささみ君……いや、333の白柰君。」
「一体何を――ナンバー？何？」
女は動揺する。
「こころというのは、ここではない世界の言葉で、鶏の心臓を示すそうだ」
「それが何？」
「わからないかい。つまり『アレ』に与えられた役目。」
「……っ！お前ら……！」
銃を握る手に力が入る。男は構わずに喋り続ける。
「すでに最終調整段階だ。蒼き星の使いである君を持ってしても、もはやどうすることもできん。いやはや君はよくやってくれた。先生が朱き星と蒼き星を近づけるといったときはどうなるかと思っていたが、研究速度が数倍に跳ね上がるとは。危険な賭けでもあったが間違いなく確かな効果が出た、素晴らしい。この残像領域が終える前に形に出来てよかったよ。」
「もういい、こころちゃんの居場所を答えて」
「しかし本当に蒼き星は必要だったのだろうか？蒼と朱は常に争う運命らしい。無理に会わせずともあの研究者の朱き星でよかったのではな――」
銃声が響くと、男の声はしなくなった。

―――何処か

（この施設で大掛かりな装置が置けるのは、有るとすれば、地下だ）
「居たぞ、奴を止めろ！」
「……どいつもこいつも……！」
一丁の拳銃で数人の衛兵を伸して行く。が、流石に弾が不足している。
可能な限り交戦をさけ、物陰に隠れていると、壁の向こうから声をかけられる。
「ささみ君、こっちだ」
そこに居たのは、見覚えのある、朱い髪の女。

―――何処か

朱い髪の女は頭を抑えて、立ち止まる。
「私が出来るのはここまでだ。後は、君の仕事だ。……私は君のハイドラを整備しておく。」
それだけ告げると、女は去っていった。
「……ありがとう」
フライトスーツの女は歩を進める。

―――此処だ

「っ、そんな……。」
そこにあったのは1機のハイドラと、操縦棺に埋め込まれた、赤い髪の少女だった。
「私が、やるべき事は……――」
フライトスーツの女は、一度引き返す。
（ハイドラが必要だ）
自分の小型飛行機でモミジアーモリーに戻る。
（そのためには戦いを終わらせる必要がある）
整備されたハイドラに乗り込み、崩れ行くドゥルガーとの最終決戦に挑む準備をする。

―――彼処で

（これが終わったら、助けに行くんだ）

形式上申請したユニオン。
個人の銃器工廠をベースにしており、パーツの整備が行える設備があるほか、
個人携行用の銃器の開発製造も行っている。らしい。
シューティングレンジや休憩スペースもあるよ。

朱い髪の技術主任が、勝手にブックメーカーを始めてしまった。