第7週目 下村里美の一週間
◆日記
「残像が消滅しました」
「いや、わずかにいる。下村瘡子Eとのリンクは保たれている。叢雲、ジョン=ドゥ、ドッジメイドあたりも戦場配置されているな」
「領域なんとか遊離環によるものでしょうか?」
「領域拡散精神遊離環にしてはタイムラグがある。しかし残像とのリンクを断ち切るとは言っていたからな、可能性はあるだろう」
「シルウェストリスとマテリアルベルトは作戦の最終段階に入るようです」
「我々も脱出するとしよう。コロッセオもずいぶん人が少なくなった。長い弔いだったが、下村瘡子もそれなりに遊べただろう」
「遺体はいかがしますか」
「最後のコロッセオが終わったら運び出す。タワーにも葬儀屋はあるだろう……火葬にして墓を作って、葬式だ」
「下村計画は」
「しばらく凍結することになるだろう。ごたごたが収まるのにも時間がかかる。また下村瘡子のような人材を見つけ出すことは難しい。彼女のような体細胞クローンが大きくなるのを待っても、待っているあいだに私があまりに年老いてしまう。次のプランを考える必要があるだろう……」
「再開のご予定はおありなのですね」
「ウォーハイドラの技術が抜本的に変化しない限り生体電池の革新は常に必要だ。下村瘡子はいいところまで行ったが、やはりあの十倍、できれば二十倍程度の出力は欲しい。それができてウォーハイドラの夢はようやく進歩する……」
「いや、わずかにいる。下村瘡子Eとのリンクは保たれている。叢雲、ジョン=ドゥ、ドッジメイドあたりも戦場配置されているな」
「領域なんとか遊離環によるものでしょうか?」
「領域拡散精神遊離環にしてはタイムラグがある。しかし残像とのリンクを断ち切るとは言っていたからな、可能性はあるだろう」
「シルウェストリスとマテリアルベルトは作戦の最終段階に入るようです」
「我々も脱出するとしよう。コロッセオもずいぶん人が少なくなった。長い弔いだったが、下村瘡子もそれなりに遊べただろう」
「遺体はいかがしますか」
「最後のコロッセオが終わったら運び出す。タワーにも葬儀屋はあるだろう……火葬にして墓を作って、葬式だ」
「下村計画は」
「しばらく凍結することになるだろう。ごたごたが収まるのにも時間がかかる。また下村瘡子のような人材を見つけ出すことは難しい。彼女のような体細胞クローンが大きくなるのを待っても、待っているあいだに私があまりに年老いてしまう。次のプランを考える必要があるだろう……」
「再開のご予定はおありなのですね」
「ウォーハイドラの技術が抜本的に変化しない限り生体電池の革新は常に必要だ。下村瘡子はいいところまで行ったが、やはりあの十倍、できれば二十倍程度の出力は欲しい。それができてウォーハイドラの夢はようやく進歩する……」
NEWS
ザーッ……ザザッ……ザーッ……もし、この放送が聞こえているとしたら……
あなたはきっと、生きているのでしょう
そして、あなたはきっと、戦いに勝ったのでしょう
雨の中、水に飲まれゆく中で、戦ったハイドラの――
コロッセオ・レギュレータ社担当『シルク』 「コロッセオの救護空母へようこそ! 気分はいかがかしら?」 |
コロッセオ・レギュレータ社担当『シルク』 「一つの時代が終わりを告げましたわね。それは、ハイドラの時代の終わりを意味しますわ」 |
コロッセオ・レギュレータ社担当『シルク』 「ハイドラは解体されるでしょう。ドゥルガーがそうであったように」 |
コロッセオ・レギュレータ社担当『シルク』 「でも、心配いらないですわ。このミニチュアミストエンジンを組み込んで……」 |
コロッセオ・レギュレータ社担当『シルク』 「人間大のハイドラとして記念に保存することもできますわ」 |
コロッセオ・レギュレータ社担当『シルク』 「ハイドラは強すぎた……いや、一つの役目を終えたのですわ」 |
コロッセオ・レギュレータ社担当『シルク』 「それは、世界の浄化。残像領域に上書きされ、破壊された世界を取り戻すための遅効性薬物」 |
コロッセオ・レギュレータ社担当『シルク』 「世界の歪みであった、ドゥルガーの破壊でもって、世界の歪みが清算され、取り戻されたのですわ」 |
コロッセオ・レギュレータ社担当『シルク』 「残像領域は消滅。それに伴って、ハイドラの世界を救命する力も、失われましたわ」 |
コロッセオ・レギュレータ社担当『シルク』 「今は眠りなさい。どうせこの世界はできそこないの世界」 |
コロッセオ・レギュレータ社担当『シルク』 「新たな歪みが現れるころ、また、ハイドラの力を必要とするはずですわ」 |
どこまでも青い空が広がっていた
どこまでも水平線が伸びていた
水平線には、積乱雲が立ち上る
静かな海だった
ただ一つ、海面から突き出す巨大な塔を除いて、他には何もなかった
雨上がりの後の世界は、夏風の通り抜ける、大洋に変わっていた――
ザーッ……ザザッ……ザーッ
……謎の飛行船団が上空に出現……
あれはいったい……!?
消えた……何だったのだろうか
しかし、あの姿は、ハイドラと戦った『グレムリン』に――
Ending...4/12
◆訓練
整備の訓練をしました整備が121上昇した
下村里美は粒子爆雷A_出力出力付与_37を609cで購入した!!
下村里美は試製薄装甲重車輪A-0を461cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
下村里美はモーニングカードを537cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
下村里美はいっぱいの花束を461cで購入した!!
金塊を246cに換金した!!
金塊を246cに換金した!!
金塊を246cに換金した!!
金塊を246cに換金した!!
◆作製
作製しようとしたが必要資金が不足したため、無料で頑張って作製しました
作成時補助発動! 薄装!! APが 74 減少!!
作成時発動! 薄装甲!! パーツ重量を -111 修正!!
粒子爆雷A_出力出力付与_37と試製薄装甲重車輪A-0を素材にして遺体電池培養槽を作製した!!
◆戦闘システム決定
コネクト に決定!!
◆アセンブル
操縦棺1にコルセットを装備した
脚部2にハイヒールを装備した
スロット3にヴェールを装備した
スロット4にアンブレラを装備した
スロット5にモーニングカードを装備した
スロット6にモーニングカードを装備した
スロット7にモーニングカードを装備した
スロット8にモーニングカードを装備した
スロット9にモーニングカードを装備した
スロット10にブラウスを装備した
スロット11に遺体電池培養槽を装備した
◆僚機設定
生体電池『下村瘡子E』とバディを結成した!!
◆意思表示設定
意志設定……生存優先
◆ミッション
ミッション設定……コロッセオ
ユニオン活動
生体電池研究室の活動記録
生体電池プロジェクト『下村計画』は一時凍結する。
残念ながら文明のアセンブルは今しばらくの後退を余儀なくされるようだ。
エンジンという単に出力源に過ぎないパーツをハイドラの九つの首のひとつに連ねることに私は長いこと懐疑的だった。
操縦棺とエンジンを一体化させる私のプロジェクトはウォーハイドラをさらなる高みへ推し進めるはずだった。
けれど人はエンジンを外すことを欲望する。自由なアセンブルを欲望する。
強く無駄のない機体の姿を人が夢見る限り、生体電池は必ず帰ってくるだろう。
この戦争はここまでで幕引きだ。
私は私の弔いへ行く。
諸君らも諸君らの弔いへ向かってくれ。
喪が明けたらまた会おう。
しばし、よい追悼を。
残念ながら文明のアセンブルは今しばらくの後退を余儀なくされるようだ。
エンジンという単に出力源に過ぎないパーツをハイドラの九つの首のひとつに連ねることに私は長いこと懐疑的だった。
操縦棺とエンジンを一体化させる私のプロジェクトはウォーハイドラをさらなる高みへ推し進めるはずだった。
けれど人はエンジンを外すことを欲望する。自由なアセンブルを欲望する。
強く無駄のない機体の姿を人が夢見る限り、生体電池は必ず帰ってくるだろう。
この戦争はここまでで幕引きだ。
私は私の弔いへ行く。
諸君らも諸君らの弔いへ向かってくれ。
喪が明けたらまた会おう。
しばし、よい追悼を。
ユニオン設備……墓地へ続く長い道を建設!!
ユニオン設備
┗遺体電池『下村瘡子E』
┗遺体電池防腐設備
┗脱出装置
┗墓地へ続く長い道
設備維持費…… -400c
ユニオン連帯
……なし!!
ユニオン金庫……2400c
利子配当…………240c
NO ENTRY...
NO ENTRY...
NO ENTRY...
NO ENTRY...
NO ENTRY...
整備の訓練をしました
整備が1上昇した
整備の訓練をしました整備が1上昇した
整備の訓練をしました整備が1上昇した
整備の訓練をしました整備が1上昇した
整備の訓練をしました整備が1上昇した
100c支払い、今回の戦闘においてAPを10%強化した
メッセージ
ENo.302からのメッセージ>>
《……。
そうか。
彼女はまだずいぶん若かったのにな。
残念だ。
……フーム、まあ、何だって物は言いようってことだね。
けどまあ、あなたがそういうことをしてるってのはわかった。
ふつうなら証拠だなんだ、もう少し面倒くさいやりとりをするべきなのかも知れないが、ここは残像領域だしね。
私にはあなたの邪魔をする理由もない》
《出撃してなくたって、外のことを知る方法はあるだろう。
そりゃまあぜんぶとはいかないが……。
自衛のためだよ。
あの時は自分のいるガレージが、いつ面倒ごとに巻きこまれるか冷や冷やしたものさ。
当時はシャカリキになってこいつを作ってたから》
《あとはまあ……そうやってるうちに、気になる名前を見かけたもんでね。
ドロレス――《ブラックウィドウ》。
それであれこれ調べてたし、少なくともニュースを聞いたりはしていた。
そのくらいなら寝た切りでもできるからね》
《あはは、クラブ活動ってのはいい得て妙だな。
じっさい、ちょうどそんな感じだったよ。
何せアイリーンの――《アルファ・ラルファ》の目的ってのは、アイリーンの死んだ母親の甦生……いや再現というべきかな、そういうもんだったからね。
母親を亡くした十代の女の子だ、それがたったひとりで残像領域に迷いこんで……不憫な話だろう?
それを助けてやろうってんだから、集まるのは物好きばかりだったし、私みたいな年寄りも多かった。
わりと自分の人生ってやつをやってきて、面白半分、誰かの役に立ちたくなってきたような連中だな。
そう……彼女には、強い機体なんてものは必要なかった》
《何もウォーハイドラじゃなくたって、ほかにもやりようがあったのかも知れないがね。
まあ、私はほかのことはわからないから。
自分の得意なジャンルでやってみたらこうなっちゃったんだ。
ネズミの脳?
ああ、《シサン》の話かい?
あれとはまたちょっと違う。
私の場合は丸ごとだ。
切ったり貼ったりもしてない》
《ふう~ん……。
まあ、このまま私が抱えてたって、単なる持ち腐れだからね。
あれこれ譲るのもやぶさかじゃないが……。
あなたにとっちゃ、あまり役に立たないものかも知れないよ。
それに、欲しいものと言われても難しいね。
いまさら金が欲しいかと言われたら微妙なところだし――》
《そうだなあ……。
そこの《ブラックウィドウ》を欲しいって言ったら?》
《いや、いや。
冗談だよ。
でもそうだな……少しドロレスと話をしたくはあるね。
もちろん、そっちが応じてくれればの話だが……。
へえ、勿体ないな。
いい機体だったのに》
《なあに、あんな規模でやろうと思ったら、そりゃ夢物語だろうがね。
シルウェストリスが考えてるのは、たぶんそこまで大きなものじゃない、恐らくごく小さな……。
ウォーハイドラ一機程度のものを想定してるんだろう。
そのくらいなら、何とかなるような気がするんだけどね》
《ん?
それじゃ、時空震でいったん「外」へ出て、また戻ってきたのかい?
やれやれ……ハネムーンなら、もっといいとこがいくらでもあるだろうに!》
---------------------------------------------------------------------------------------------
《そしてこの残像領域には霊障がある。
霧と電磁波。
そして残像が》
《けっきょくのところ、私が延命の手段にウォーハイドラを選んだのもそういうことだ――。
真面目に治そうと思ったところで、腕のいい医者はみんな生体電池や生体部品に夢中さ。
まあ、お陰で脳みそを取り出すときもさほど困らなかったわけだけど……。
やれやれ!
ウォーハイドラは兵器だからね。
結果的に何か別の機能を兼ねることはあっても、その根はどうしたって変わらない……》
《さあ、どうかなあ。
面白そうだと思うとついやっちゃうからね。
有利で有効かはわからないが……まあたしかに、失敗するとわかっててやりはしないね》
《……大きすぎる? 《ブラックウィドウ》は量産型の機体のはずだろう。
もしかして水槽を失くしたのかい?
そりゃ大変だ。
さっきあなたがアレンジしたと言ってたが、ずいぶん苦労しただろう。
何というか、そういうことをするにはいささか脆い機体だからね》
《う~ん。
いけるんじゃないかとは思うが……。
どうもなあ、ほら、最初は私一人だけのことと思って、気楽に考えてたからさ……。
成功すれば儲けもんだし、失敗してもそれはそれだと思ってたんだよ。
私は年寄りだし、なんていうか、いまはサッカーのロスタイムみたいな余生だからね》
《だけど、あなた方が乗っかるってんなら話は別だ。
もう少し真面目にならなくっちゃな。
ちょっと待ってくれ――フィネデルシェロの詳細を送ろう。
あなたのほうでも、ちょっと見てみてくれないか?》
《もしシルウェストリスが提示するフィネデルシェロとやらが、あの時空震の、いくらかチープな再現だったとして……行先はどうする?
あなたがたは、どこか行きたいとこがあるんじゃないかね?
私には残像領域の外には宛てがない。
あるにはあるが……あまり積極的に行きたいとは思わないからね。
私を覚えてる人間も、もういないだろうから》
《いや、いまは落ち着いてるよ。
……嵐の前の静けさってやつさ。
だから来るならいまのうちだよ。
おや、有り難いね。
それじゃいくらかはお言葉に甘えようかな》
《……ハロー、ドロレス。
きみは私を知らないだろうが、私はよく知っている……いや、知っているのは《ブラックウィドウ》のことだけだな。
それだって、とうてい全部じゃない。
途中で離れてしまったってのもあるがね》
---------------------------------------------------------------------------------------------
《……たぶん、ウォーハイドラこそがこの残像領域に属するものだからだろう。
ここじゃ人間ってのは、けっきょくどこまでもよそ者だよ。
たとえ残像領域で生まれ、あるいは育ち、多くの時間をここで過ごしてきたにせよ。
ここの主役はどうしたってハイドラだ》
《まあ、動かすのが難しいものではあったからね。
水槽は……ああ、なるほどね。
あなたの言うとおりだ。
しかしなんでまた《ブラックウィドウ》のなかに人格なんてものが?
あの機体にはたしかに、残像を引き留める機能がある――少なくともそのように願って仕組まれたものが――だが、よそから捕まえてくる機能はないはずだ》
《あなたは辛抱強いんだなあ。
いや、私も新しいものは大好きだ。
面白いものも。
だけど、あー、ちょっとね、実技は苦手でね……。
好きは好きなんだが、得意とまでは……》
《……》
《ちょっと待ってくれ。
シルウェストリスがちょいと気になることを言っている。
「時空渡航装置は、身体に悪影響を与える」……。
どうも何度もくり返しやり続けるってことを前提してるみたいだが、気がかりではある。
あなたは一度やってるんだったな。
私はまあいいとして、問題は生身のあなただ。
どうだい、以前の時空震で何か気になることは起こったかな……?》
《ふ~~~む。
それは私も同じだな。
というか、私の場合は命にかかわるところだからね。
整備でどうにかなる程度ならまだしも、損傷した機体でそんなとこへ送られたら目も当てられない。
いまが余生とは言っても死にたいわけじゃないからね》
《意志の力か……ずいぶんアヤフヤなもんで飛んだんだな。
そりゃどうもシステム的なもんじゃなく、もっとこの残像領域に近い――霊障にかかわるもののような気がするな。
規模の問題というより、時空震そのものの性質の問題のようにも思える……》
《ほう、ロンドン!
懐かしいな、若いころに何度か行ったことがあるよ。
……問題は私が知ってるロンドンと、あなた方が知ってるロンドンが同じかどうかってことだ。
これはけっこう怪しい気がするね。
昔そういうことがあったのさ、お互い知ってるはずの場所の内容がまるであべこべだたってことがね。
それも一度や二度じゃない……あんまりSFじみたことは言いたくないが、並行世界とかってやつなんだろう。
だからそのへんのことはあなたに任せてもいいかな?
さっきも言ったけど、私は実技が苦手でね!
まあ、あとはもちろん、私もついてっていいならだけど……》
《……返事をしてくれて嬉しいよ。
なあに、内容が大事なわけじゃない。
ほんとに、単に話がしたかっただけさ》
《とはいえ、あんまりのんびりお喋りしてる場合じゃなさそうだが……。
合流するまでの間くらいならいいだろう?》
《……》
《恨み言か。
まあ、そうだろうとは思うよ。
《ブラックウィドウ》は不当に抛りだされた。
残像領域の冷たい霧のなかに……たったひとつっぽっちで。
それはまるでフェアなことじゃない。
私はただ関わってたってだけで、メインのスタッフだったってわけでもない。
あれこれ口出しはしたし、手も出したけど》
《いや、これはきみと《ブラックウィドウ》をだいぶごっちゃにしちまってるな。
私はきみのことなんかこれっぽちも知らないのにね。
気を悪くしないでくれ。
それ以外にとっかかりがないってことなんだ》
《ああでも、いくつか訊いてみたいことはある。
あれこれ話して、彼のやりたいことはほどほどわかった。
まあ現実的で実際的なことばかりだけど。
でもきみは?
せっかくこんなところへまで来たんだし、……どうも、私はきみに借りがあるような気がしててね》
《それに、もし《アルファ・ラルファ》に遺産なんてものがあるのなら、むしろきみにこそ受け取る権利があるんじゃないか?
どういう経緯で、きみがドロレスとして《ブラックウィドウ》のなかにいるのかはわからないが……。
そういうことが起こるそもそものきっかけを作ったのは私らなんだからね。
私にも何がしか支払うべきものがあるだろう》
---------------------------------------------------------------------------------------------
《がんばった? 《ブラックウィドウ》が?
…………。
……それはつまり……外部の残像を捕まえたとか、そういう話じゃないってことか?
フーーーーム。
まあたしかに、訊くにしても本人から聞いたほうがいいだろうな。
そりゃもちろん、話してもらえればだけど……》
《いやあ、そうでなかったら、デザイナーなんてやってないさ。
あっはっは》
《そいつは難しいとこだな。
蓋を開けてみなけりゃわからない。
けっきょく、問題はあなたがそれで構わないのかって話だな。
前回は大丈夫だった。
でも今回はそうじゃないかも知れない。
そういうことだな……あなたが構わないと言うなら私も気にしないようにはするがね。
私としては、あんまり危ないことはしてほしくないとこだ。
あなたはまだずいぶん若いだろう?》
《いくらか話が早くなるとこもあるが、その「差」はちょいと気になるところだ。
なんとか「私のロンドン」じゃなく、「あなたのロンドン」に行かなくちゃならないってことだからな。
さあ、いいんじゃないかと思うがね。
そのくらいすればあなたたちの信用も買えるだろうし。
ウーン。
《アルファ・ラルファ》の遺産を回収したいって話だったからね。
機体のどこかしらを持ってかれるのは困るが、丸ごと行くなら私も死なないで済むし……けっこういいんじゃないかと思ったんだが……。
それにあなたたちはロンドンへ行きたいわけだろう?》
《それに異論はない。
死なないってのは大事なことだ。
禁忌戦争の最終盤に向かうってのは、わりと名案のような気がするね。
もちろん場合によってはって話だが。
何にせよ、代案は多いほうがいい。
……》
きっちりと折りたたんだ八つの脚をわずかに拡げ、ゆっくりと前進する。
それほど大きな機体ではない――。
ウォーハイドラにしてはずいぶん小型の部類だろう。
《やあ、ヨシャファートだ。
良ければヨッシャー、とかヨッシャとか呼んでくれ。
日本の勝ち鬨なんだそうだ。
縁起がいいだろう?
ああ、あと一応こいつにも機体名があってね。
《タラント》っていう……。
まあ、あんまり使う機会もない名前だが》
《じゃあ、少し留守にしてようかな。
ちょっと待ってくれ、いま場所を空けるから》
かすかな噴霧。
機体が身震いをするように振動し、後部にある箱型の部位がわずかに下がる。
ぱかりと開く。
なかから、ごく小さな――一抱えほどの大きさのものがするりと飛び降りてくる。
見た目はバイオ兵器に似ている。
これも八つ脚。
《こっちが本体みたいなものでね、ここに脳みそを入れてある。
こいつが壊されると、まあ大変なことになるわけだ》
バイオ兵器に似た小型ハイドラが、ちょろちょろと移動しながら音声を出す。
本体部分は暗い色をしていて、何が入っているかまではうかがい知れない……。
---------------------------------------------------------------------------------------------
《う~ん、言い方が悪かったな。
私をほっといて、あなたたちはいまから大急ぎでタワーへ駆けこむって手もあるだろう?
こんなぽっと出の、賭けみたいな時空震に乗っからずともね。
どこを軸に考えるかの違いだよ》
《これでもずいぶん小さな部類だと思うんだけどなあ。
かさばるかな……。
……。
まあ、いまさら人間みたいに暮らすってわけじゃなし。
ちょっと大きな変わったおもちゃってことで何とかなるんじゃないか?
それに、あなたたちがロンドンへ行きたいなら、やっぱり私も行くよりほかない気がするんだがね》
《オーケー、3時間前だな。
それじゃあ……》
そう言って、バイオ兵器に似たハイドラは、少し離れたところに立つドロレスのほうへ、のろのろと近づいていく……。
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小型のハイドラが近寄ってきたのを見て、目線を上げる。
首を振る――いささかわざとらしい身振り。
顔をしかめたようだが、表情は薄っすらとしか動かない。
ため息。
服の下で上下する胸と、あまりタイミングの合わない人造の吐息。
よくできてはいるが、それでもいくらかの不自然さはある。
それを隠すかのような、装飾性の高い服。
青く透き通ったカメラアイが遠くを見つめる。
《やあ……どこから話したものかな。
難しいね。
まさかこんな土壇場で、こんなことになるとは思わなかったから。
自分のなかでも、あまり整理されているとは言い難い》
《……。
自分の内面について話すのは難しいな。
私は……》
《色んなことをやってきた。
そりゃあこの年で残像領域にいるんだ、ほんとに色んなことをしてきた。
いまさら、そのことをどうこう言うつもりはないんだが……なんせ楽しかったからね。
そのうち、こんなふうに考えるようになったんだ。
「いつか自分に何がしかの報いがやって来はしないか?」とね》
《何も、わざわざ叱られたいわけじゃない。
その逆もね。
そういう、欲しい言葉とかがあるってわけじゃないんだ。
良いことも悪いこともひっくるめて、何と言えばいいのか……。
ただ――自分がしでかしてきたことがどんなことだったか、思い知る機会が欲しいと思ってた。
稲妻が……》
《……》
《だから――彼がきみを連れるってわかったときには驚いたよ。
すごく驚いた》
《身体を捨てて、いまのいままで生き延びてきた甲斐があったと思った》
《……あなたにしてみれば、こんなのはぜんぶ年寄りのたわ言だろう。
それでいいんだ。
これは何もかも私のなかで起こっていることに過ぎない。
心や魂を分かち合うことはできない。
たとえどれほど強く、そうしたいと願っても》
《それだけだよ。
だからまあ、言ってしまえば、私としちゃそこの彼のことはどうでもいいわけだな。
私はきみに興味があるし……きみが私のとこへ来たってことが大事だし……まあ、その上で何か役に立つことがあるなら、嬉しいかも知れないと思ってる。
まあ、信用ならないってのはその通りだろう。
私の動機はわかりにくいし……いまさっき会ったばかりの相手だからね》
メッセージを送信しました
>>Eno.302 >>Eno.85
《……。
そうか。
彼女はまだずいぶん若かったのにな。
残念だ。
……フーム、まあ、何だって物は言いようってことだね。
けどまあ、あなたがそういうことをしてるってのはわかった。
ふつうなら証拠だなんだ、もう少し面倒くさいやりとりをするべきなのかも知れないが、ここは残像領域だしね。
私にはあなたの邪魔をする理由もない》
《出撃してなくたって、外のことを知る方法はあるだろう。
そりゃまあぜんぶとはいかないが……。
自衛のためだよ。
あの時は自分のいるガレージが、いつ面倒ごとに巻きこまれるか冷や冷やしたものさ。
当時はシャカリキになってこいつを作ってたから》
《あとはまあ……そうやってるうちに、気になる名前を見かけたもんでね。
ドロレス――《ブラックウィドウ》。
それであれこれ調べてたし、少なくともニュースを聞いたりはしていた。
そのくらいなら寝た切りでもできるからね》
《あはは、クラブ活動ってのはいい得て妙だな。
じっさい、ちょうどそんな感じだったよ。
何せアイリーンの――《アルファ・ラルファ》の目的ってのは、アイリーンの死んだ母親の甦生……いや再現というべきかな、そういうもんだったからね。
母親を亡くした十代の女の子だ、それがたったひとりで残像領域に迷いこんで……不憫な話だろう?
それを助けてやろうってんだから、集まるのは物好きばかりだったし、私みたいな年寄りも多かった。
わりと自分の人生ってやつをやってきて、面白半分、誰かの役に立ちたくなってきたような連中だな。
そう……彼女には、強い機体なんてものは必要なかった》
《何もウォーハイドラじゃなくたって、ほかにもやりようがあったのかも知れないがね。
まあ、私はほかのことはわからないから。
自分の得意なジャンルでやってみたらこうなっちゃったんだ。
ネズミの脳?
ああ、《シサン》の話かい?
あれとはまたちょっと違う。
私の場合は丸ごとだ。
切ったり貼ったりもしてない》
《ふう~ん……。
まあ、このまま私が抱えてたって、単なる持ち腐れだからね。
あれこれ譲るのもやぶさかじゃないが……。
あなたにとっちゃ、あまり役に立たないものかも知れないよ。
それに、欲しいものと言われても難しいね。
いまさら金が欲しいかと言われたら微妙なところだし――》
《そうだなあ……。
そこの《ブラックウィドウ》を欲しいって言ったら?》
《いや、いや。
冗談だよ。
でもそうだな……少しドロレスと話をしたくはあるね。
もちろん、そっちが応じてくれればの話だが……。
へえ、勿体ないな。
いい機体だったのに》
《なあに、あんな規模でやろうと思ったら、そりゃ夢物語だろうがね。
シルウェストリスが考えてるのは、たぶんそこまで大きなものじゃない、恐らくごく小さな……。
ウォーハイドラ一機程度のものを想定してるんだろう。
そのくらいなら、何とかなるような気がするんだけどね》
《ん?
それじゃ、時空震でいったん「外」へ出て、また戻ってきたのかい?
やれやれ……ハネムーンなら、もっといいとこがいくらでもあるだろうに!》
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《そしてこの残像領域には霊障がある。
霧と電磁波。
そして残像が》
《けっきょくのところ、私が延命の手段にウォーハイドラを選んだのもそういうことだ――。
真面目に治そうと思ったところで、腕のいい医者はみんな生体電池や生体部品に夢中さ。
まあ、お陰で脳みそを取り出すときもさほど困らなかったわけだけど……。
やれやれ!
ウォーハイドラは兵器だからね。
結果的に何か別の機能を兼ねることはあっても、その根はどうしたって変わらない……》
《さあ、どうかなあ。
面白そうだと思うとついやっちゃうからね。
有利で有効かはわからないが……まあたしかに、失敗するとわかっててやりはしないね》
《……大きすぎる? 《ブラックウィドウ》は量産型の機体のはずだろう。
もしかして水槽を失くしたのかい?
そりゃ大変だ。
さっきあなたがアレンジしたと言ってたが、ずいぶん苦労しただろう。
何というか、そういうことをするにはいささか脆い機体だからね》
《う~ん。
いけるんじゃないかとは思うが……。
どうもなあ、ほら、最初は私一人だけのことと思って、気楽に考えてたからさ……。
成功すれば儲けもんだし、失敗してもそれはそれだと思ってたんだよ。
私は年寄りだし、なんていうか、いまはサッカーのロスタイムみたいな余生だからね》
《だけど、あなた方が乗っかるってんなら話は別だ。
もう少し真面目にならなくっちゃな。
ちょっと待ってくれ――フィネデルシェロの詳細を送ろう。
あなたのほうでも、ちょっと見てみてくれないか?》
《もしシルウェストリスが提示するフィネデルシェロとやらが、あの時空震の、いくらかチープな再現だったとして……行先はどうする?
あなたがたは、どこか行きたいとこがあるんじゃないかね?
私には残像領域の外には宛てがない。
あるにはあるが……あまり積極的に行きたいとは思わないからね。
私を覚えてる人間も、もういないだろうから》
《いや、いまは落ち着いてるよ。
……嵐の前の静けさってやつさ。
だから来るならいまのうちだよ。
おや、有り難いね。
それじゃいくらかはお言葉に甘えようかな》
《……ハロー、ドロレス。
きみは私を知らないだろうが、私はよく知っている……いや、知っているのは《ブラックウィドウ》のことだけだな。
それだって、とうてい全部じゃない。
途中で離れてしまったってのもあるがね》
---------------------------------------------------------------------------------------------
《……たぶん、ウォーハイドラこそがこの残像領域に属するものだからだろう。
ここじゃ人間ってのは、けっきょくどこまでもよそ者だよ。
たとえ残像領域で生まれ、あるいは育ち、多くの時間をここで過ごしてきたにせよ。
ここの主役はどうしたってハイドラだ》
《まあ、動かすのが難しいものではあったからね。
水槽は……ああ、なるほどね。
あなたの言うとおりだ。
しかしなんでまた《ブラックウィドウ》のなかに人格なんてものが?
あの機体にはたしかに、残像を引き留める機能がある――少なくともそのように願って仕組まれたものが――だが、よそから捕まえてくる機能はないはずだ》
《あなたは辛抱強いんだなあ。
いや、私も新しいものは大好きだ。
面白いものも。
だけど、あー、ちょっとね、実技は苦手でね……。
好きは好きなんだが、得意とまでは……》
《……》
《ちょっと待ってくれ。
シルウェストリスがちょいと気になることを言っている。
「時空渡航装置は、身体に悪影響を与える」……。
どうも何度もくり返しやり続けるってことを前提してるみたいだが、気がかりではある。
あなたは一度やってるんだったな。
私はまあいいとして、問題は生身のあなただ。
どうだい、以前の時空震で何か気になることは起こったかな……?》
《ふ~~~む。
それは私も同じだな。
というか、私の場合は命にかかわるところだからね。
整備でどうにかなる程度ならまだしも、損傷した機体でそんなとこへ送られたら目も当てられない。
いまが余生とは言っても死にたいわけじゃないからね》
《意志の力か……ずいぶんアヤフヤなもんで飛んだんだな。
そりゃどうもシステム的なもんじゃなく、もっとこの残像領域に近い――霊障にかかわるもののような気がするな。
規模の問題というより、時空震そのものの性質の問題のようにも思える……》
《ほう、ロンドン!
懐かしいな、若いころに何度か行ったことがあるよ。
……問題は私が知ってるロンドンと、あなた方が知ってるロンドンが同じかどうかってことだ。
これはけっこう怪しい気がするね。
昔そういうことがあったのさ、お互い知ってるはずの場所の内容がまるであべこべだたってことがね。
それも一度や二度じゃない……あんまりSFじみたことは言いたくないが、並行世界とかってやつなんだろう。
だからそのへんのことはあなたに任せてもいいかな?
さっきも言ったけど、私は実技が苦手でね!
まあ、あとはもちろん、私もついてっていいならだけど……》
《……返事をしてくれて嬉しいよ。
なあに、内容が大事なわけじゃない。
ほんとに、単に話がしたかっただけさ》
《とはいえ、あんまりのんびりお喋りしてる場合じゃなさそうだが……。
合流するまでの間くらいならいいだろう?》
《……》
《恨み言か。
まあ、そうだろうとは思うよ。
《ブラックウィドウ》は不当に抛りだされた。
残像領域の冷たい霧のなかに……たったひとつっぽっちで。
それはまるでフェアなことじゃない。
私はただ関わってたってだけで、メインのスタッフだったってわけでもない。
あれこれ口出しはしたし、手も出したけど》
《いや、これはきみと《ブラックウィドウ》をだいぶごっちゃにしちまってるな。
私はきみのことなんかこれっぽちも知らないのにね。
気を悪くしないでくれ。
それ以外にとっかかりがないってことなんだ》
《ああでも、いくつか訊いてみたいことはある。
あれこれ話して、彼のやりたいことはほどほどわかった。
まあ現実的で実際的なことばかりだけど。
でもきみは?
せっかくこんなところへまで来たんだし、……どうも、私はきみに借りがあるような気がしててね》
《それに、もし《アルファ・ラルファ》に遺産なんてものがあるのなら、むしろきみにこそ受け取る権利があるんじゃないか?
どういう経緯で、きみがドロレスとして《ブラックウィドウ》のなかにいるのかはわからないが……。
そういうことが起こるそもそものきっかけを作ったのは私らなんだからね。
私にも何がしか支払うべきものがあるだろう》
---------------------------------------------------------------------------------------------
《がんばった? 《ブラックウィドウ》が?
…………。
……それはつまり……外部の残像を捕まえたとか、そういう話じゃないってことか?
フーーーーム。
まあたしかに、訊くにしても本人から聞いたほうがいいだろうな。
そりゃもちろん、話してもらえればだけど……》
《いやあ、そうでなかったら、デザイナーなんてやってないさ。
あっはっは》
《そいつは難しいとこだな。
蓋を開けてみなけりゃわからない。
けっきょく、問題はあなたがそれで構わないのかって話だな。
前回は大丈夫だった。
でも今回はそうじゃないかも知れない。
そういうことだな……あなたが構わないと言うなら私も気にしないようにはするがね。
私としては、あんまり危ないことはしてほしくないとこだ。
あなたはまだずいぶん若いだろう?》
《いくらか話が早くなるとこもあるが、その「差」はちょいと気になるところだ。
なんとか「私のロンドン」じゃなく、「あなたのロンドン」に行かなくちゃならないってことだからな。
さあ、いいんじゃないかと思うがね。
そのくらいすればあなたたちの信用も買えるだろうし。
ウーン。
《アルファ・ラルファ》の遺産を回収したいって話だったからね。
機体のどこかしらを持ってかれるのは困るが、丸ごと行くなら私も死なないで済むし……けっこういいんじゃないかと思ったんだが……。
それにあなたたちはロンドンへ行きたいわけだろう?》
《それに異論はない。
死なないってのは大事なことだ。
禁忌戦争の最終盤に向かうってのは、わりと名案のような気がするね。
もちろん場合によってはって話だが。
何にせよ、代案は多いほうがいい。
……》
きっちりと折りたたんだ八つの脚をわずかに拡げ、ゆっくりと前進する。
それほど大きな機体ではない――。
ウォーハイドラにしてはずいぶん小型の部類だろう。
《やあ、ヨシャファートだ。
良ければヨッシャー、とかヨッシャとか呼んでくれ。
日本の勝ち鬨なんだそうだ。
縁起がいいだろう?
ああ、あと一応こいつにも機体名があってね。
《タラント》っていう……。
まあ、あんまり使う機会もない名前だが》
《じゃあ、少し留守にしてようかな。
ちょっと待ってくれ、いま場所を空けるから》
かすかな噴霧。
機体が身震いをするように振動し、後部にある箱型の部位がわずかに下がる。
ぱかりと開く。
なかから、ごく小さな――一抱えほどの大きさのものがするりと飛び降りてくる。
見た目はバイオ兵器に似ている。
これも八つ脚。
《こっちが本体みたいなものでね、ここに脳みそを入れてある。
こいつが壊されると、まあ大変なことになるわけだ》
バイオ兵器に似た小型ハイドラが、ちょろちょろと移動しながら音声を出す。
本体部分は暗い色をしていて、何が入っているかまではうかがい知れない……。
---------------------------------------------------------------------------------------------
《う~ん、言い方が悪かったな。
私をほっといて、あなたたちはいまから大急ぎでタワーへ駆けこむって手もあるだろう?
こんなぽっと出の、賭けみたいな時空震に乗っからずともね。
どこを軸に考えるかの違いだよ》
《これでもずいぶん小さな部類だと思うんだけどなあ。
かさばるかな……。
……。
まあ、いまさら人間みたいに暮らすってわけじゃなし。
ちょっと大きな変わったおもちゃってことで何とかなるんじゃないか?
それに、あなたたちがロンドンへ行きたいなら、やっぱり私も行くよりほかない気がするんだがね》
《オーケー、3時間前だな。
それじゃあ……》
そう言って、バイオ兵器に似たハイドラは、少し離れたところに立つドロレスのほうへ、のろのろと近づいていく……。
---------------------------------------------------------------------------------------------
小型のハイドラが近寄ってきたのを見て、目線を上げる。
ドロレス 「……まだ何かあるのか?」 |
顔をしかめたようだが、表情は薄っすらとしか動かない。
ドロレス 「……。 先にあんたが話せよ。 あんたは何を考えてるんだ? 何が欲しい? あんた、さっきはおれと話がしたい、なんて言ってたけどな。 その下に、またもう少し別の理由だか、目的だかがあるはずだ――違うか?」 |
服の下で上下する胸と、あまりタイミングの合わない人造の吐息。
よくできてはいるが、それでもいくらかの不自然さはある。
それを隠すかのような、装飾性の高い服。
青く透き通ったカメラアイが遠くを見つめる。
ドロレス 「そいつを説明する気があるんなら……。 もういくらか付き合ってやってもいいぜ。 まだ時間もあるしな」 |
難しいね。
まさかこんな土壇場で、こんなことになるとは思わなかったから。
自分のなかでも、あまり整理されているとは言い難い》
《……。
自分の内面について話すのは難しいな。
私は……》
《色んなことをやってきた。
そりゃあこの年で残像領域にいるんだ、ほんとに色んなことをしてきた。
いまさら、そのことをどうこう言うつもりはないんだが……なんせ楽しかったからね。
そのうち、こんなふうに考えるようになったんだ。
「いつか自分に何がしかの報いがやって来はしないか?」とね》
《何も、わざわざ叱られたいわけじゃない。
その逆もね。
そういう、欲しい言葉とかがあるってわけじゃないんだ。
良いことも悪いこともひっくるめて、何と言えばいいのか……。
ただ――自分がしでかしてきたことがどんなことだったか、思い知る機会が欲しいと思ってた。
稲妻が……》
《……》
《だから――彼がきみを連れるってわかったときには驚いたよ。
すごく驚いた》
《身体を捨てて、いまのいままで生き延びてきた甲斐があったと思った》
《……あなたにしてみれば、こんなのはぜんぶ年寄りのたわ言だろう。
それでいいんだ。
これは何もかも私のなかで起こっていることに過ぎない。
心や魂を分かち合うことはできない。
たとえどれほど強く、そうしたいと願っても》
《それだけだよ。
だからまあ、言ってしまえば、私としちゃそこの彼のことはどうでもいいわけだな。
私はきみに興味があるし……きみが私のとこへ来たってことが大事だし……まあ、その上で何か役に立つことがあるなら、嬉しいかも知れないと思ってる。
まあ、信用ならないってのはその通りだろう。
私の動機はわかりにくいし……いまさっき会ったばかりの相手だからね》
ドロレス 「……。 ……おれは。 あそこで目が覚めたとき……。 ……死にたくない、と、思った。 ガレージは冷たくて……《彼女》もいなくて……。 何もしないでいたら、じき動けなくなる……。 外に出なくちゃならなかった。 何とかして……。 ……戦場は恐ろしかった。 死にたくないと思いながら、二度も撃墜されたよ」 |
ドロレス 「……。 《トラップドア》に会ったって言ったろ? あいつだってそうだ……たぶん、ただ死にたくなかった。 ……だけどあいつのとこにも、誰もいなかった。 何もなかったんだ。 目を覚ましたとき……動き始めたとき。 だから、自分でどうにかするしかなかった。 ……」 |
ドロレス 「でも……やっぱり、そうだな。 どれもこれも過ぎたことなんだよ。 終わっちまったことだ。 あんたにも、病気でそれどころじゃなかった人生があったように、おれたちにも人生があった。 いまはこうして、たまたまそれが行き合ったけどな。 それだけのことさ。 ……。 おれは……」 |
ドロレス 「いまは、もっと別のことをしなくちゃならない。 そりゃ、《アルファ・ラルファ》の遺産を探しちゃどうだってあいつに言ったのはおれだがね。 そんなのは適当なもんだ。 残像領域に来るはめになって、ほかにやることもなし、結果的にそうなったってだけのことだ。 だけど、そうじゃない……。 ほんとにやらなくっちゃならないのは……。 ……」 |
ドロレス 「どうしたら……」 |
ドロレス 「どうしたらあいつに近づける? どうすれば――。 戦争の外へ連れていける?」 |
ドロレス 「おれは人間じゃない……所詮は切り分けられた鼠だ。 あいつがどれだけ人間じみた見た目をくれたって……。 人間のように考えることはできない。 ……これだけたくさんの言葉を口から吐き出したところで、それは変わらない」 |
ドロレス 「昔あいつが言ったんだ。 まだ、おれたちどっちも残像領域にいたころ……五年前の戦争が、まだ終わってなかったころに。 おれがこの身体になる前、時空震に乗る前……。 『未亡人は残像じゃない。喪が明ければケーキも食べる。墓参りにも行く。新しい恋もするかも知れん。俺たち戦争のなかに生きている人間は、そういうものを永遠に羨む』って。 そうやって、戦争の外へ行くことを……。 どうしたら……」 |
ドロレス 「……どうしたら助けられる?」 |
ドロレス 「わからない。 おれにはあいつがいまどんな戦争をしてるんだかもわからない。 話してはもらえない。 ……そうしてこの五年の間、もうずっとそのことを考えてる。 いまのおれには声がある。 自分の声が聞こえる。 血でも命でもないが、身体のなかを巡るものを持っている……それでも、そんなものはなんの役にも立たなかった」 |
ドロレス 「……それがおれのやりたいことだよ。 あんたにはどうすることもできないだろ? ったく、どうしようもない話をしちまったな。 設計が甘いんだよ、出来も悪いし……。 あんたらがもう少しきちっと作ってくれてたら――こんなことにもならなかったのにさ……」 |
ドロレス 「……。 どうやら時間みたいだぜ。 戦場か……もう二度と行きたくなかったが、あいつが行くって言ってんなら仕方がない。 あーあ……」 |
ドロレス 「落とされるなよ」 |
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>>Eno.302 >>Eno.85
◆戦闘結果
戦闘報酬
戦闘収入 2000
追加収入 230
攻撃戦果補正7.15%
支援戦果補正6.17%
防衛戦果補正18%(MAX)
販売数補正 0.1%
ファイトマネー補正4%
追い上げ補正2.4%
合計現金収入3191
--弾薬費請求 0
--装甲費請求 -332
--整備控除修正額6388
整備請求額 0
ユニオン費 -100
手当金 100
パーツ販売数 1個
今回の購入者-->>436
◆反応値が10成長しました
◆整備値が7成長しました
◆経験値が105増加しました……
◆素材が組織から支給されました……
追加収入 230
攻撃戦果補正7.15%
支援戦果補正6.17%
防衛戦果補正18%(MAX)
販売数補正 0.1%
ファイトマネー補正4%
追い上げ補正2.4%
合計現金収入3191
--弾薬費請求 0
--装甲費請求 -332
--整備控除修正額6388
整備請求額 0
ユニオン費 -100
手当金 100
パーツ販売数 1個
今回の購入者-->>436
◆反応値が10成長しました
◆整備値が7成長しました
◆経験値が105増加しました……
◆素材が組織から支給されました……
下村里美は高速増殖培養槽A設計書を入手した!
下村里美は高速増殖培養槽A設計書を入手した!
キャラデータ
名前
下村里美
愛称
下村里美
機体名
小型WH『モーニングドレス』
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プロフィール
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下村里美。47歳。 生体電池『下村瘡子E』のメンテナンスを担当していたウォーハイドラ技術者のひとり。 生体電池プロジェクト『下村計画』の主幹でもある。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
__0__1__2__3__4__5__6__7 __8__9_10_11_12_13_14_15 _16_17_18_19_20_21_22_23 |
機体データ |
|
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23 | 操縦棺D | コルセット [34/薄装甲/薄装甲]《装備:1》 | ▼詳細 |
---|---|---|---|
20 | 中多脚A | ハイヒール [37/薄装甲/薄装甲]《装備:2》 機動[384] 跳躍[101] AP[3105] 旋回速度[811] 防御属性[霊障] 防御値[461] 貯水量[423] 弾数[1] 積載量[4200] 消費EN[461] 金額[461] 重量[978] [多脚] *作者* |
▼詳細 |
19 | エンジンB | ブラウス [34/薄装甲/薄装甲]《装備:10》 | ▼詳細 |
18 | 領域殲滅兵器A | アンブレラ [34/薄装甲/薄装甲]《装備:4》 | ▼詳細 |
28 | 領域瞬間霊送箱A | ヴェール [36/薄装甲/薄装甲]《装備:3》 | ▼詳細 |
4 | レーダーC | モーニングカード [34/薄装甲/薄装甲]《装備:9》 | ▼詳細 |
6 | レーダーC | モーニングカード [34/薄装甲/薄装甲]《装備:7》 | ▼詳細 |
8 | レーダーC | モーニングカード [34/薄装甲/薄装甲]《装備:6》 | ▼詳細 |
9 | レーダーC | モーニングカード [34/薄装甲/薄装甲]《装備:8》 | ▼詳細 |
13 | レーダーC | モーニングカード [37/薄装甲/薄装甲]《装備:5》 | ▼詳細 |
30 | --- | --- | --- |
7 | --- | --- | --- |
17 | --- | --- | --- |
3 | 高速増殖培養槽A | 棺にいっぱいの花 [36/重出力/重出力] | ▼詳細 |
1 | 高速増殖培養槽A | 高速増殖培養槽A設計書 [39/高圧回復/---] 特殊B[460] [設計書] |
▼詳細 |
2 | 高速増殖培養槽A | 高速増殖培養槽A設計書 [39/減霧/---] 特殊B[460] [設計書] |
▼詳細 |
5 | 高速増殖培養槽A | 遺体電池培養槽 [37/出力/薄装甲]《装備:11》 | ▼詳細 |
10 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
11 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
12 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
14 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
15 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
16 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
21 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
22 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
24 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
25 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
26 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
27 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
29 | 高速増殖培養槽A | いっぱいの花束 [37/突撃態勢/飛行] | ▼詳細 |
葉隠忍のブック結果……ランク外!!
現在のユニオン金庫額……2500!!
シェリーのブック結果……ランク外!!
現在のユニオン金庫額……2600!!
ささみのブック結果……ランク外!!
現在のユニオン金庫額……2700!!
オペレーター&シルバーのブック結果……24位ランクイン!! 配当金……なし!!
現在のユニオン金庫額……2800!!
パアム・ライザのブック結果……ランク外!!
現在のユニオン金庫額……2900!!