ENo.0219　アクロ

やばいな、レコーダーの容量がギリギリじゃねーか。ま、クライマックスは過ぎたし大丈夫か？
栄光のハイドラ大隊が復活した遺跡の巨人を打ち倒し、町にはチャンプの銅像が建ちまくる。
あっちこっちからインタビューの依頼が舞い込んで傭兵家業の特需も来る。命を張った見返りは美味いね！
だから――

「俺は生きて、ここから出ていく。あんたはどうする？」
金目のものは既に後方部隊が回収し終えたサルガッソー、祭りの後のゴミが転がる広大な更地。
地獄の迷宮とクソまみれの故郷を繋ぐデッキの中央に、デバステイター・センチネルが佇んでいた。

ここなら互いに譲り合うだけの道幅がある。譲らぬ理由も既に崩れた。
それでもなお対峙するというのなら――

「ようやく会えたな、≪ΜΕΛΠΟΜΕΝΗ≫　俺の名前はアクロ。よろしくな」
領域拡散精神遊離環。この遺跡で何度も俺に死の白昼夢を見せてきた天使の歌声は、やはり今日も綺麗だった。
俺もハイドラの両腕を高々と掲げれば、今まで部隊を勝利に導いてきた無数の羽が微かな音楽を紡ぎ出す。
無用の戦い、詰まるところはガキの喧嘩だ。そして俺は、いい歳こいてそういうのにゾクゾクするガキなんだ。

「俺はこのハイドラ――≪Boiling Heart≫とともに戦う。今日こそアンタを落としてやるぜ」

雑居ビル地下のゲーセンでは、今日もキッズたちが剥きたての角を突き合わせている。