ENo.0060　Lupth

「狼、しつこいようだが、戦いが終わってすぐに飛ぶわけではないんだな？」

「ひゃん！」


出撃の支度をしながらの彼女の問いかけに犬は元気よく鳴いて返事をした。


「ならば数日ここで過ごしてから行こう」

「ぁうん？」

「ああ、ホームには寄る。だがお前がすぐ喧嘩してしまうものだから、長居できた記憶がない。だから休んでから出発したいんだ」


犬には思い当たる節があるのだろう。鼻から抜けるか細い声で返事をしてその場にぺたりと伏せをする。


「怒ってなどいない。ただ…そう、暫くは気が抜けない可能性は高いからお前の手入れもできなくなる」

「ひゃん、ひゃぅぅん！」


飛び跳ねるように起き上がりそれは嫌だと主張するように鳴く犬に、彼女は苦笑で応じる。


「だから数日滞在すると言ってるんだ。文句はないだろう？」

「ひゃん！」


一人と一匹の意見は一致したらしい。

そこでその話題は終わったが出撃までの間、支度をしつつポツポツと会話を交わしていた。

1LDKの居住空間と簡易ガレージを内包した移動型拠点。少々角ばったドーム型をしている。
全ての窓や出入り口には過剰なロックが施されているようだ。




戦いが終わっても数日の間様々な場所で見られたが、いつの間にか姿を消していた。