ENo.0325　Дмитрий Сергеевич Перестройков

　【LAST WEEK / LAST DAY】

　ついに今日、この遺跡を——否、この残存領域そのものを——めぐった戦いに終止符が打たれる。世界はまさに終末と言える有様で、酷いものだ。だが、それでも。きっと続くのだろう。それはまさに禁忌戦争での極寒の世界を打破したように。

　しかし、私が見ることは無い。

　ハイドラのコフィンの中で、最後の確認を行う。システムが起動し、機体の状態を表示する。全ての機能、全ての武装がオールグリーン。シルウェストリス社から転送された『フィネデルシェロ』戦闘システムを起動し、ハイドラから表示された”その”確認事項にYESと答える。これで、私はこの時空から旅立つわけだ。そして——『ビーコン』の接続を確認して、上部パネルのスイッチをオンにする。ハイドラシステムがハックされ、無数の文字列が流れた。だがそれも一瞬のことで、すぐに正常な動作に戻る。ただ一つ、新しい機能が表示されて。予め確認されている座標を入力する。シルウェストリスが設定していた時空座標が上書きされた。この、新たに設定した座標の世界は残存領域やそれに連なるあらゆる時間軸上でもなく、ここに来る前に私のいた世界でもなく——人が住める環境である、という以上は何も分からない世界だ。

　これで、私はただ時空を旅立つだけでなく、あらゆる全てから解き放たれ、独り未知の世界へと飛び立つわけだ。

　そして、全ての戦闘準備が整った。次世代重戦車用の超高出力エンジンが唸りを上げる。ハンガーのシャッターが開いていくと、眩い外の光に照らされたハイドラがゆっくりと武装を持ち上げた。エンジンの発する音は徐々に高まり、ついに出撃するときが訪れる。

　私は、操縦席のパネルに挟まれた一枚の写真を見た。それは昔の——禁忌戦争の時に撮った一枚。ちょうど、二つ目の要塞攻略戦時だったか、派遣された部隊の面々と私、そして私の上官ヴラジーミルと、相棒でありライバルだったDAWNが写った唯一の写真。

　そして、前を見、操縦用レバーを握った。ハイドラが前進する。さあ、これで最後だ。薄暗いハンガーから光の中に進み出た。これでもう、戻ることはできない。

　何が起きるにしろ、私は残存領域を立ち去る。




　じゃあな、上官殿。そして相棒。ここで会った全ての者たち。戦い続けるものに幸運を、そして斃れていった者たちに安らかな眠りを——

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かつて残存領域に存在した兵器研究開発機関。ドゥミートゥリの記憶が戻ったことで名前こそ取り戻したものの、人員も物資も失われたままなので、結局内実は変わらないままだ。すなわち、残存物資をばら撒き、残されたわずかな資料を元にパーツを再現する。

そして、今日。最後の一人、最後の残党たる男もこの世界から立ち去る。今日を持って、完全にソビエト地上軍は残存領域から姿を消すだろう。残された設計図、遺された部品は全て、この残存領域に残る者たちへ譲ろう。