第10週目 B・ミナスジェライス兄妹の一週間
◆日記
業務日誌
最終日
記入:臨時店長リオ・バーントイエロー・ミナスジェライス
決算が近い。金魚坂グループとの契約も終了ということで、これがおれが記入する最後の業務日誌になる。
バイト募集のチラシを拾ったら金魚坂グループを巡る騒動に巻き込まれ、この世界でコンビニの店長になれと言われた時はどうなることかと思ったが、過ぎてしまえば一瞬のことだった。大変ではあったが楽しい日々だったというのが、おれの正直な感想だ。妹達もそう言って契約終了を残念がっている。
さて、今後の処遇について、驚くべきことにシトリン・マーケット本部から返答が届いた。おれとしては実在を疑っていたのだが、杞憂で済んでほっとしている。
この返答を持って、これから妹達と話し合いをしようと思う。おれ達が今後、どう生きていくのかを。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
契約最終週の最終日、コンビニ「シトリン・マーケット」のバックヤードにて。
「リオ兄ちゃん、本当に行っちゃうの?」
錆びた橙から透き通る金に推移する髪、それを二つに結った娘、アニカが言う。
「リオ兄さん、私達も一緒じゃなくて大丈夫?」
アニカと同じ色の長髪を流れるままにした娘、ヴェラが心配そうに続けた。二人とも、まだシトリン・マーケットの制服を着ている。
彼らの視線の先にはやはり制服姿の青年、リオが立っていた。慣れた手つきで、薄汚れたカバンに荷物を詰め込んでいる。ウォーハイドラのパイロット用のツナギをカバンにしまってから、最後に黒いジャケットを入れる。ジャケットの背中にはシトリン・マーケットのロゴが燦然と輝いていた。
「ああ、何とかなると思う」
一通り荷造りを終え、リオは妹達の方へ振り返った。紫と金の、二対の瞳がじっとリオを見ている。心の底から兄を案じる視線だった。
リオは少しだけ笑って(やっと自然に笑えるようになってきた、と彼は内心で思った)妹達に近づき、その頭を撫でた。
「でもでもでも、今まで『バーントイエロー』はアタシら三人で操縦してたじゃん!」
「そうですよ兄さん、一人じゃ操縦する時の負担が全部兄さん一人にかかっちゃいます! やっぱり私達も……!」
「だから、大丈夫だ。対策はちゃんと考えてある」
妹達に心配をかけていることに、リオは少しだけ胸が痛むのを感じた。
「ここで結構稼げたからな、向こうに戻ったらおれの体を改良してみようと思う。処理能力が上がればおれ一人でも動かせるさ」
リオは妹達を夕闇国に残し、一人で残像領域に帰ることを決めたのだった。
先日、リオがシトリン・マーケット本部から受け取った返答にはごく簡潔にこう記されていた。
『シトリン・マーケット夕闇国支店の今後の人事は、臨時店長リオ・バーントイエロー・ミナスジェライスに一任する』
その人事権をもってリオは妹達を連名で次の臨時店長に任命し、自身は「他世界営業担当」として店長職を降りた。売り上げのうち幾許かを報酬兼経費として受け取り、既に自分の口座への振り込みも済ませている。
「向こうで、やってみたい事ができたんだ」
妹達を宥めながらリオは続ける。
「だけど残像領域での仕事は危険が多い。おれのわがままにお前達を巻き込むわけにはいかないんだよ。夕闇国なら、そう言う意味での危険はない」
夕闇国はリオも気に入っている。この不確かさは肌に合うと感じるし、コンビニの仕事は残像領域の戦闘とはまた違った緊張感があった。それでいて、生死に直結するような事はないのだ。硝煙に慣れた身には随分と気が楽な場所ではあった。
けれどその一方で、彼の中にはあの霧と泥の戦場を求める声がある。やってみたい事があるのは本当だが、実際のところその声に従っているというのが本音だ。これは何だろう、闘争心とでも呼べば良いのだろうか。リオ自身、自問するがよく分からない。
ただ一つはっきりしているのは、どうしてもリオはそれを無視出来ないという事だった。
「大丈夫、お前達の荷物は向こうに着いたら送ってやるし、定期的に連絡もする。休みの時はこちらに遊びに来る」
「……本当?」
「ああ。おれが今まで、お前達に嘘をついたことがあったか?」
リオの言葉に、ヴェラもアニカも首を横に振った。
「兄さん」
「兄ちゃん!」
感極まって飛びついてくる二人の軽い体を、リオはしっかと受け止めた。
こうやって抱き合う事もしばらくないだろう。そんな事を直感する。
「リオ兄さん」
しゃっくりあげながらヴェラが言った。
「私達、うまくやれるかな」
「うん、兄ちゃんに任せっきり、だったのに」
続けて言うアニカの声も、しゃっくりで途切れ途切れだ。そんな二人をリオは愛おしいと思う。
「大丈夫。自動人形達にも、お前達の手助けをしてくれるように頼んである。ここまでやって来たのはお前達だって同じなんだ。きっと、うまくやれる」
自動人形達もこのままシトリン・マーケット夕闇国支店に残ってくれるそうだ。リオが彼らの製作者へ引き続き自動人形のレンタルをさせてもらえないかと打診したのは先週の事だったが、翌日には製作者たるイシコログサの魔王から「承諾」の返事が来た。引き続き、店舗の側で多肉植物の販売を続行する事を条件に。お安い御用だった。
ひとしきり妹達の体を抱きしめてから、リオはしゃがんで二人に視線を合わせた。唇で弧を描きながら言う。
「さあ、もうすぐ開店の時間だ。店に行こう。最後の仕事だ!」
ああきっと、今までで一番うまく笑えたはずだ。声に出さずにそう独りごちて、リオはレジに立つべくバックヤードを出るのだった。その両の手に、妹達の手を取りながら。
最終日
記入:臨時店長リオ・バーントイエロー・ミナスジェライス
決算が近い。金魚坂グループとの契約も終了ということで、これがおれが記入する最後の業務日誌になる。
バイト募集のチラシを拾ったら金魚坂グループを巡る騒動に巻き込まれ、この世界でコンビニの店長になれと言われた時はどうなることかと思ったが、過ぎてしまえば一瞬のことだった。大変ではあったが楽しい日々だったというのが、おれの正直な感想だ。妹達もそう言って契約終了を残念がっている。
さて、今後の処遇について、驚くべきことにシトリン・マーケット本部から返答が届いた。おれとしては実在を疑っていたのだが、杞憂で済んでほっとしている。
この返答を持って、これから妹達と話し合いをしようと思う。おれ達が今後、どう生きていくのかを。
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契約最終週の最終日、コンビニ「シトリン・マーケット」のバックヤードにて。
「リオ兄ちゃん、本当に行っちゃうの?」
錆びた橙から透き通る金に推移する髪、それを二つに結った娘、アニカが言う。
「リオ兄さん、私達も一緒じゃなくて大丈夫?」
アニカと同じ色の長髪を流れるままにした娘、ヴェラが心配そうに続けた。二人とも、まだシトリン・マーケットの制服を着ている。
彼らの視線の先にはやはり制服姿の青年、リオが立っていた。慣れた手つきで、薄汚れたカバンに荷物を詰め込んでいる。ウォーハイドラのパイロット用のツナギをカバンにしまってから、最後に黒いジャケットを入れる。ジャケットの背中にはシトリン・マーケットのロゴが燦然と輝いていた。
「ああ、何とかなると思う」
一通り荷造りを終え、リオは妹達の方へ振り返った。紫と金の、二対の瞳がじっとリオを見ている。心の底から兄を案じる視線だった。
リオは少しだけ笑って(やっと自然に笑えるようになってきた、と彼は内心で思った)妹達に近づき、その頭を撫でた。
「でもでもでも、今まで『バーントイエロー』はアタシら三人で操縦してたじゃん!」
「そうですよ兄さん、一人じゃ操縦する時の負担が全部兄さん一人にかかっちゃいます! やっぱり私達も……!」
「だから、大丈夫だ。対策はちゃんと考えてある」
妹達に心配をかけていることに、リオは少しだけ胸が痛むのを感じた。
「ここで結構稼げたからな、向こうに戻ったらおれの体を改良してみようと思う。処理能力が上がればおれ一人でも動かせるさ」
リオは妹達を夕闇国に残し、一人で残像領域に帰ることを決めたのだった。
先日、リオがシトリン・マーケット本部から受け取った返答にはごく簡潔にこう記されていた。
『シトリン・マーケット夕闇国支店の今後の人事は、臨時店長リオ・バーントイエロー・ミナスジェライスに一任する』
その人事権をもってリオは妹達を連名で次の臨時店長に任命し、自身は「他世界営業担当」として店長職を降りた。売り上げのうち幾許かを報酬兼経費として受け取り、既に自分の口座への振り込みも済ませている。
「向こうで、やってみたい事ができたんだ」
妹達を宥めながらリオは続ける。
「だけど残像領域での仕事は危険が多い。おれのわがままにお前達を巻き込むわけにはいかないんだよ。夕闇国なら、そう言う意味での危険はない」
夕闇国はリオも気に入っている。この不確かさは肌に合うと感じるし、コンビニの仕事は残像領域の戦闘とはまた違った緊張感があった。それでいて、生死に直結するような事はないのだ。硝煙に慣れた身には随分と気が楽な場所ではあった。
けれどその一方で、彼の中にはあの霧と泥の戦場を求める声がある。やってみたい事があるのは本当だが、実際のところその声に従っているというのが本音だ。これは何だろう、闘争心とでも呼べば良いのだろうか。リオ自身、自問するがよく分からない。
ただ一つはっきりしているのは、どうしてもリオはそれを無視出来ないという事だった。
「大丈夫、お前達の荷物は向こうに着いたら送ってやるし、定期的に連絡もする。休みの時はこちらに遊びに来る」
「……本当?」
「ああ。おれが今まで、お前達に嘘をついたことがあったか?」
リオの言葉に、ヴェラもアニカも首を横に振った。
「兄さん」
「兄ちゃん!」
感極まって飛びついてくる二人の軽い体を、リオはしっかと受け止めた。
こうやって抱き合う事もしばらくないだろう。そんな事を直感する。
「リオ兄さん」
しゃっくりあげながらヴェラが言った。
「私達、うまくやれるかな」
「うん、兄ちゃんに任せっきり、だったのに」
続けて言うアニカの声も、しゃっくりで途切れ途切れだ。そんな二人をリオは愛おしいと思う。
「大丈夫。自動人形達にも、お前達の手助けをしてくれるように頼んである。ここまでやって来たのはお前達だって同じなんだ。きっと、うまくやれる」
自動人形達もこのままシトリン・マーケット夕闇国支店に残ってくれるそうだ。リオが彼らの製作者へ引き続き自動人形のレンタルをさせてもらえないかと打診したのは先週の事だったが、翌日には製作者たるイシコログサの魔王から「承諾」の返事が来た。引き続き、店舗の側で多肉植物の販売を続行する事を条件に。お安い御用だった。
ひとしきり妹達の体を抱きしめてから、リオはしゃがんで二人に視線を合わせた。唇で弧を描きながら言う。
「さあ、もうすぐ開店の時間だ。店に行こう。最後の仕事だ!」
ああきっと、今までで一番うまく笑えたはずだ。声に出さずにそう独りごちて、リオはレジに立つべくバックヤードを出るのだった。その両の手に、妹達の手を取りながら。
STORY
とうとう経営黒字化を果たした金魚坂グループ無制限フランチャイズ作戦は終わり、雇われ店長さんたちは自由の身となった
そのまま店を続けるもの、店舗を譲渡し経営から去る者…そう、自由に
雇われ店長さんたちには約束通り報酬が支払われた
ゆらぎの通貨は累積闇円と同額の、それぞれの世界の通貨へと姿を変える
それは30768アメリカドルかもしれないし、30768ラオスキープかもしれない
あるいは海外旅行のあと、使えないお金が眠るように……引き出しの奥に眠るかもしれない
そのお金で、あなたは何を買うのだろう
――お買い物、しませんか?――
◆訓練
笑顔の訓練をしました笑顔が26上昇した
機転の訓練をしました機転が23上昇した
◆送品
◆送金
◆破棄
イエローズは蠱惑的もやしを破棄した!
イエローズはポイントカード28を破棄した!
イエローズはりんごを破棄した!
イエローズはレシピ付きスパイスセットを破棄した!
◆購入
イエローズはヴァンホーテンココアを648闇円で購入した!
イエローズは採れたての杏を648闇円で購入した!
◆作製
くやしさのばね52とはえぬき52を素材にして旅立ちのシトリン・ドロップを作製した!
◆コンビニタイプ決定
ホワイト に決定!!
◆アセンブル
スロット1に目が合う弁当を装備した
スロット2にシルバーバナナを装備した
スロット3にあんず大福NEOを装備した
スロット4に魔王印のあつあつ肉まんを装備した
スロット5にえながまんを装備した
スロット6にヴァンホーテンココアを装備した
スロット7に号外!金魚型オートマタの全てを装備した
スロット8に紫水晶の首飾りを装備した
スロット9に深淵からの呼び声を装備した
スロット10に採れたての杏を装備した
スロット11にあんずタルトを装備した
スロット12に旅立ちのシトリン・ドロップを装備した
◆アイテム改名
◆アイテムアイコン変更
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メッセージ
◆戦闘結果
売り上げ
闇円収入 2842
貢献収入 385
ゲージ突破成功!! ホワイト補正 5%
行動順報酬!! 18%
合計闇円収入3997
商品販売数 3個
◆経験値が58増加しました……
◆体力が173増加しました……
◆素材が本部から支給されました……
貢献収入 385
ゲージ突破成功!! ホワイト補正 5%
行動順報酬!! 18%
合計闇円収入3997
商品販売数 3個
◆経験値が58増加しました……
◆体力が173増加しました……
◆素材が本部から支給されました……
イエローズは椅子56を入手した!
イエローズは気品マニュアル56を入手した!
イエローズは幟56を入手した!
キャラデータ
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プロフィール
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どこぞの霧深い世界からやってきた、サイボーグの三人兄妹。 サイボーグなので、腰から尻尾のような充電ケーブルが生えている。 生活費を稼ぐべくとあるバイト募集のチラシを手に取ったところ、 夕闇国でコンビニの店長をする羽目になってしまった。 兄:リオ・B・ミナスジェライス 青年型サイボーグ。外見年齢は十代後半ぐらい。 三兄妹で一番感情表現が下手くそだったが、コンビニでの経験を経て営業スマイルが使えるようになった。 根は割とおっとりしているかもしれない。 最年長ということでコンビニ「シトリン・マーケット」の店長を押し付けられた苦労人。 勤務日記も彼が書いていた。 契約満了に伴い、妹達を夕闇国に残し自身は元の霧深い世界に戻る事にした。 色々やりたいことがあるらしい。 妹その一:ヴェラ・B・ミナスジェライス 少女型サイボーグ、ロングヘアーの方。外見年齢は十代前半ぐらい。 リオの妹その一。アニカとは双子。いつも穏やかに笑っているおっとりさん。 勤務中に歌い出してしまうのが玉に瑕。 契約満了に伴い独自に経営を開始したシトリン・マーケットを兄から引き継ぐ事になった。 今後はアニカと二人で店長職を行っていく予定。 妹その二:アニカ・B・ミナスジェライス 少女型サイボーグ、ツインテールの方。外見年齢は十代前半ぐらい。 リオの妹その二。ヴェラとは双子。よく笑いよく走るおてんばさん。 勤務中に踊りだしてしまうのが玉に瑕。 契約満了に伴い独自に経営を開始したシトリン・マーケットを兄から引き継ぐ事になった。 今後はヴェラと二人で店長職を行っていく予定。 コンビニ「シトリン・マーケット」 リオ達が経営を任せられた小さなコンビニ。 天井からは黄水晶(紫水晶を加熱して作った人工モノ)のドロップが装飾として いくつもいくつも吊り下がり、看板はけばけばしい黄金色をしている。 外には異世界の魔王から委託されたという多肉植物の無人販売所が併設されている。 店舗で度々目撃されていた幽霊は姿を見せなくなった。 その代わり、いつの間にかちょっとした掃除が行われていたり、+BR | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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店舗データ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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