ENo.0067　ソリッド・フルート

「傷…………」

戦いが終わり、漢……ソリッド・フルートは傷ついた体を教会の壁に預けて息を整えていた。


─それは凄まじい戦いであった。

愛し合う者たちのために。
漢は戦場に立つ全ての敵をちぎっては投げ、投げては千切りに走った。

結婚をしたいという全ての願いを叶えるために。
漢は愛機と手分けをして敵を千切りに千切り尽くした。




～～～～～～～～～（中略）～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～



…戦闘が終わった時、そこは結婚で満ちていた。
敵も、味方も、市民も、漢…ソリッド・フルート以外の全てが手と手を取り合い幸せな結婚に至っていた。


『笛さん！！！！』

『ありがとう！！！笛の人！！！！！』


頭部の笛型ヘルメットを見てそう呼びかける人々の表情は幸せと結婚に満ちた笑顔だ。

「構！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」

漢もまた満足げな様子でそんな人々へと手を振り応える。
…そんな笛に、1人の少女が歩み寄り不思議そうな顔で語りかける。


『…笛さんは、どうして結婚をしないんですか？』


「！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！？！？」


致命傷であった。
無垢なる質問が硬質な笛の軟質な部分に深々と突き刺った。

「ｱ……ｱｧ……ｱ……」

しないのではなかった。なんかこう……出来なかったのだ。

やはり笛のヘルメットを着けているからだろうか。一文字しか話せないからだろうか。
兎に角、漢は望まぬ無婚であった。周りはみな結婚をしたというのに。



「逃！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」



漢は説明をすることも出来ずに逃げ出した。
…そうして、まさしく今結婚が行われるであろう教会へと辿り着いた。
そういった経緯で漢は満身創痍であった。


「婚…………」

どうすれば出来るのだろうか。
わからない、けれども質問をしてきた少女は逃げる背に向かって

『笛さんも、どうか良い結婚が出来ますように…！』

と、声援を投げかけてくれたような気がする。


どうすれば出来るのだろうか。
パーツ作製で”結婚相手”とでも指定すればワンチャンいけないのだろうか。

そんなことを考えていると、教会の鐘が鳴り響く。
また、誰かが結婚をしたようだ。壁越しに人々の祝福の声と、笑い声が聞こえてくる。

「祝…！！！！！！」

それを聞いて、漢は吹っ切れたように壁に肩を預けながら拍手をし笑う。

自分がいつこんな風に結婚が出来るかはわからない。
それどころか自分が何者なのかもわからない。

けれど、自分が結婚を願うなら。幸せになってほしいと願ってくれる人が居るのなら。
自分もいつかは結婚をすることが出来るのだろう。

そう信じて、漢は教会に背を向けて歩き始める。
その行きつく先は幸せな結婚か、それとも………。
─しかし、幸せな生涯を送ることは確かであろう。

Bon Voyage ─よい旅を！─　ご結婚おめでとうございます！！！！！！！！！！！