ENo.0107　ぷりーずぷれすみー

「どんとたっちえにしんぐ？のーのー！
　ぷりーず！
　ぷれす！
　みー！」

ド゛゛ガ゛゛゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛！゛！゛！゛！゛！゛！゛゛゛゛

それは押して欲しそうにアピールしている。
それはとても危険だ。
それはうかつに触れてはいけない。
それは厳密にマニュアル管理されていた。



それは、複数の目的を持って創られた。

勝手に状況判断をし、適切に力を振るうこと。

致命的な打撃を与えられること。

使い捨てに終わらないこと。

それは歩く核爆弾だ。
気まぐれに歩き回り、気まぐれに発火する。
そして……爆弾でありながら、奇妙にも爆発しても滅びず、
それは生き残る。
故に、それを知るものは、『触れるな』と言った。



「えっへへへへ、どーんどーん！」
実験チャンバーの中で、火花を上げながら走りまわる『ぷりーずぷれすみー』。
小規模な爆発。
そして、黒焦げになりながらも、ケラケラと笑うそれがいた。
これこそが本来の彼女であり、もっとも危険な核爆弾だった。
それは極秘裏に開発されており、あらゆる迎撃網に引っかからない
――人間型であるからだ。

それには、歪んだ自我があった。
『Destroy them all!』
全てを破壊する。それが彼女が根底に抱えている意志であり、存在意義だった。
少なくともそれはそう思っている。



その歪んだ自我故に、開発は延びに延びたが、
しかし、実験は継続されていた。
小規模な村を目標として、ぷりーずぷれすみーは歩いた。
住民が訝しげに見る。
それもそのはずで、こんな服を着て、ニタニタと笑いながら歩き回る人間は
不審そのものだ。
「ここでいいかなー？」
本当に適当な、何の合理性もない位置でも、ぷりーずぷれすみーには十分だった。

ド゛゛ガ゛゛゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛！゛！゛！゛！゛！゛！゛゛゛゛

光差す窓。


じつはぷりーずぷれすみーは認識していた。
「核スイッチ」ではゼロのレガリアには恐らく届かないことを。
本当は何をすべきか、そう的外れではない精度で、ぷりーずぷれすみーは理解していた。
しかし、それを遂行するのはぷりーずぷれすみーが自分自身の存在意義を捨て去ることにほかならない。
誰にもわからないであろう狂気の中で、ぷりーずぷれすみーは苦悩した。
そしてその苦悩は、ほどなくして核の炎で焼き尽くされた。


使い捨てでない、知能を持つ核爆弾。
そんな存在が、低い技術レベルで作れるはずもなく。
その当の爆弾は、正気を抱いている時にだけ、必死に思考を巡らせていた。
いかに””稼ぐ””のか。それだけにリソースを割いていた。
しかし――

そうして、今は工場を城に組み込んで、
せっせと核を作っている。
そこまでして核にこだわる理由は、合理的に考えればない。
ないが、自身の存続のためだけに工場の運用を余儀なくされていた。
彼女の目からはそんな現状に対するいかなる感情も読み取れない……。

やった！銅メダルだ！
幸運が重なったとは言え、核とともに3位になったのはまさしく自信に違いない。
君はリーサルボタンを引き抜き、かけらの恐れも抱かずに変異した勇者に向き直った。
今や君は、”ゼロの城砦”のすべての英知を手にしているのだ。
君の手になる核を目にすると、変異勇者の笑いもぴたりと止まった。

「へへへへへ、借金ができなくなっても、私は負けないさ！」

なぜなら……

この城砦にも……

あまねく世界にも……

核の炎の恩恵はもたらされるだろうから！

ド゛゛ガ゛゛゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛！゛！゛！゛！゛！゛！゛゛゛゛



そして世界はリセットされる。
再構築される。
法則が変わる。

「だいじょーぶ！ぜーんぶぜんぶ、燃やすから」

ド゛゛ガ゛゛゛ア゛゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛！゛！゛！゛！゛！゛！゛゛゛゛