ENo.0096　クロウラー

広域出品について、また一つ欠点を見つけた。
それは買取先にも同じ素材がないといけないという事だ。
超物質は今では貴重、それ故にこれを用いたパーツを流すのはあんまり賢いとは言えない。
相手も同じ素材を持ってるとは限らないからだ。

これではまるでショーケースに入った高価な品だな…

以前はどこにでもあったものだから気付くのが遅くなってしまった。
とすると本当に需要があるものを出品するべきだし、
間に合わせのようなパーツを作ってしまったのは少し早計だった。

次は大型ボイラーを出品予定だ。
Sb3のものを見ないのでこれは需要があるだろう。
出力の為に消費を抑えた方がいいし、強度（出力）も重要だ。
そして大きい方がいい。すぐさま自分が使いたいぐらいの一品に仕上がった。

そういえば出品したものは一回出せばそのまま設計図は流れたままになるのだろうか…
試しに防衛多脚は取り下げてみるか…

物資の輸送が無事に終わった。
横道潮流を通過するのは大変だったが、それをした甲斐はあった。
物資の報酬として超物質をいくつかよこされたのだ。

カオスシルバーにパーマネントゴールド、ドラコニウムも少しあった。
もう少しまとまった数が欲しかったが、とりあえずそれを使って脚を作ってみた。
防衛多脚、配分はPg2Dr1だ。

かつてこの多脚で大暴れした機体を思い出すな。それには及ばないが…
これは広域出品に流しておくとしよう。

…ついでにブランド名でも考えてみるか。
CC、CrawlCraft、というのはどうか…なんてな

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広域出品、パーツの出回りの悪い理由が判明した。
出品してから実際に出品に並ぶまで遅延があるようだ。
（出品→更新を挟む→出品完了）

まさかこういう事だとは思わなかった…
世界が書き換わったと言っていたがまさか通信速度も落ちたのか？

少し、いや、かなり広域出品が使いづらくなってしまったな…

なんとか戦えるほどに機体を組み上げているが、
やはり性能は以前より大きく落ちてしまった。

マーケットの動きが悪く、ほしいパーツが全然手に入らないのも問題だった。
ここから我々は持ち直せるのだろうか…

傷だらけになった機体を見上げた。
まるで今の状況を象徴するように見えた。

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手元にあったコンテナを必要とする者から連絡があった。
傭兵の次は運び屋か…いや、今はそのどちらもしなければならない訳だ。
行き先に迷ってた所だし、せっかくなので持っていくとしよう。

今はこうやって草の根のように活動しなければならない。

南西柱、遠目からでもわかる光の柱。
話には聞いていたが、実際の目前にするのは初めてだった。
近づけば、声が聞こえたような気がした。

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何か、古い夢を見ていたような気がする。
背中にシートの感触…私は操縦棺の中に居た。
だが、何か操縦棺に隙間があって外が見える。

違和感。

すぐに降りて、機体を眺め見れば…
殆どのパーツがなくなっていた。

夢でないのなら、カオスシルバーを多量に使い、
他二つの素材も混ざっていた機体は…当然骨組みだけになる。
ガレージにある他の機体も見るが、やはり私の機体と似たような状況だ。

ほぼフレームだけになったそれを目にしばし呆然とそこに佇んでいた。

「………」

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機体のほとんどが超物質だったので当然の如く骨組みだけになり、
そして超物質のものでないものも何か錆びついていてとてもじゃないが使えそうになかった。
管を巻いていても仕方ないので広域出品を眺め見て、本当に1から作り直す事に相成った。

超物質を抜きにすると出力はまだしも重量の確保がかなり難しい。
その重量、大きさが大事になってくるパーツがある。
その一つがレーダーだ。
これは重量と出力をどっちも多くしなければいけない。
現状で取れる最高のものがジルコニウムとソールブラスを組み合わせたもの
比率はジルコニウムを多めにするのがいい。
これを超物質であるパーマネントゴールドに変えられればよかったのだが…

広域出品もその煽りを受けたのか、使えるものが限られていた。
そんな中でようやく組み上げた機体は元の機体とは程遠いものに仕上がった。

まず細かい動きができない。
ジルコニウムの特性で細やかな動きや反応ができなくなってしまった。
これでは迎撃にも格闘にも向かないので加速を生かした一撃離脱をする事に。

レーダーも貧弱なので頭部と背面で二つ装備した。
飛行制御用に付けたいものがこれで取られてしまったので特殊接続含めた計3つものブースターをつける。

出力は高いので武装に関しては問題はなさそうだ。
演習データを見ても不足ない火力が出ていた。
他に問題点があるとすれば装甲か…

組み上げてみて実感したが、よほど恵まれた環境に居たんだと痛感する。
この機体でどれだけ戦えるか検討もつかない…

赤く錆びた空を映す海、浜辺の近くにまでやってくれば
その海が透き通っているのだと認識できた。

そして元の世界でも見た事のある目立つ赤い城。
以前は遠目から見る程度だったが…

ここから先の事を考えて更に西へと進もうと思って、
その城を通り過ぎようとすれば"通行証"と求められた。

赤いもの…何故そんなものが必要になるのだろうか
疑問を胸にひとまず持っているもので赤いものを探した。
長い事探していてようやく見つけた一本。それは…

「これでどうだ？」

差し出したのは赤い柄のついた工具だ。
…どうやらこれでいいらしい。

苦労を感じて先を急ぐことにしたが、
何故こんなものが通行証になるのか…

聞くのを忘れたのはそこを離れてからだった。

タワーからずっと南下し、乾きの海まで到達した。
ここに居た者によればここが南の果て、地図上でもここから先の記載がない…

ふと、以前来たメールをもう一度開いた。
…各地に散らばった滞流思念を集める、と言っている。
蓄積された記憶の流れ、と言うが正直よくわからなかった。

自分が何をすればいいのか、この果てまで来て見失ってしまった。
…いや、元から見失っていたのかもしれない。
今の私は辿り着く場所も計れず、ただここにやってきただけだ。
一先ず、赤の海を目指す事にしているが、どうしたものか…

そういえば、先程ここで会った人物は半年も水を飲んでないと言っていたな。
冗談だと思って流して、持っていた水を渡したが、何か引っかかりを覚えた。

この錆だらけの世界へ投げ出された後、私は一先ず近海の風の門へと向かった。
直前の出撃もここを通って赤の海を目指したのを思い出す。
だからという訳ではないが、なんとなくここへ足を運びたくなったのだ。

一通り回った後、どうするかと少し足を停めた時に、
分厚いフィルタースーツ越しに抵抗を感じた。

…風だ。

門番が"心地よい初夏の風"と漏らしていたが、
今その風を受けてもよくわからなかった。

せめて薄型のフィルタースーツにすればわかるんだろうか。

「はは、勇気が出ないな…」

今着ている頑強で予備のフィルターと電源が、
付いているこれを手放す気には到底なれなかった。

粉塵の恐怖に怯えていなければ、
風を受けた感想も言えるんだろうか、なんて…

試験機用のデータの為の戦闘、
遭遇した浮遊機雷の処理は結局安全を考慮して武装を使用して片をつけた。

ガレージに帰ってから、操縦棺の中で哨戒エリアを吟味していたと思う。
ある時、フィルタースーツのメットにひびを見つけた。

かなり頑丈なのを選んだはずだが…なんて思いながらそのひびに指を這わせば…
力を入れてないのにひびが大きくなっていき、割れた。

あまりの出来事に心臓が高鳴り、目を瞑った。
そのままメットを手で探れば返ってくる手触り。
割れていなかった疑問を胸に目を開けた時、見覚えのない場所に居た。
赤く錆びた空が辺りを染め上げる。

「ここは…どこだ…？」

次から次に起こる不可思議な現象に混乱した。
周りにも人が居て、同じように混乱する様が垣間見える。
どよめきの中に見知った顔も居た。

…しばらくして、錆びた鉄塔の先にあったスピーカーから放送が聞こえた。

「これよりシルエットフィールドの過負荷運用を始める」

Silhouette
SYSTEM
Engage

head_slot ... OK
arm_slot ... OK
main_slot ... OK
leg_slot ... OK
engine_slot ... OK
main_weapon_slot ... OK
sub_weapon_slot ... OK
back_weapon_slot ... OK
maneuver_slot ... OK

「システムオールグリーン、シルエットフィールド展開」

…少し前まで試験機の性能について懐疑的だったのだが、
直々のオファーがあって、シルエットフレームの試験データを集める事になった。
大方テストパイロットしていた時の事が耳に入ったんだろうか……

それはさておき、
霊障試験機の為にシルエットフィールドを生かした戦いをする必要がある。
要はこれを使って格闘をするだけなのだが…そんな戦い方を以前はよくした記憶がある。
弾が切れたら機体の手足を以って攻撃手段とするのだ。

防備に不安があったので足回りとエンジンをいくらか一新し、幻影装置とやらを積んだ。
その他レーダーに妨害装置、腕部を発掘で手に入れたものに換装して以前より大きいものとなっている。
とにかく普段あまり目が向かないようなパーツを盛り込んだ。

それもそのはず、この試験は実戦で、そして独りでの戦いだった。
海域をしばらく飛行していれば、レーダーに反応。

「敵機発見…タイプ、フロートマイン……」

浮遊機雷、これに対して体当たりで攻撃しろって事か…？
シルエットフィールド込みで耐えられるか疑問が生じた。

「…クソ、厄介だな。これより戦闘を開始する。加速後、強襲索敵、その後攻撃に移る」

発見した敵機が試験目的との相性の悪さに悪態が混じる。
映像、機体状況、パイロットの音声を記録しているが、そんな事忘れる程の状況だ。

新しく換装した武装がどれだけ功を奏すか…

貯まった回路の破棄先が見つかった。
実のところ発掘に呼ばれたのでどうしようか
悩ましかったのだが、その事を相談したら教えてもらった。

最近はパーツの出回りが悪い。
欲しい物があるのなら自分の足で取りに行くのがいいだろう。
半ば賭けにはなるだろうが…

ガレージに居る者達にも呼びかけてみるか…
とにかく私一人では効率が悪い事だしな。

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シルエットフレームの霊障試験機の話を聞いた。
仕様書を見たが…エンジンを積む所が特殊接続だけしかなかった。

興味深いが使いこなせる気がしない。
肉弾戦特化の機体の方が得意なのはこれまでの戦いでよくわかっていた。
…とは言っても、もし今の機体が壊れたら、と考えると今のうちに経験ぐらいはするのは有りなのかもしれない。

他にも試験機の話が出ているので気が向いたらやってみるとしよう。

カオスシルバー製のボイラーを前に耳にした事を思い出す。
どうも空から降ってくる支援物資、自分の冶金構成と同じもの、
そしてフレームによってパーツが決まっているらしい。
だから今までずっとこれが降ってきた訳だ。

そして話はそれだけではない。
どうやらこのパーツ、機体に特殊接続（自由枠）するのに向いているらしい。
それもそのはず、普通に作ればフルカオスシルバーであれば1210cかかる。
それが"無料"なのだ。

私の場合は毎回タダで出力を増やせる事になる。
今まで使えるか使えないかで見ていただけに、目から鱗だった。

だが……

「解体だ。今の機体にそのキャパシティはない」

残念ながら飛行ユニットとレーダーを特殊接続に頼っている現状余裕がなかったのだ。
知識が増える一方でそれを扱えない悲しみをまたも背負ってしまった。

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回路が貯まってきた。
そろそろガレージの自分のスペースも物で溢れそうでこれの処分に困る。
今装着しているパーツを解体してオーバーホールするのもいいが、それだと回路の総量が減らない。
なので特殊接続で無理矢理破壊するという手を思いついた。

…飛行ユニットはまあいいとして、問題はレーダーだ。
レーダーの性能は重量に大きく依存する。
そしてその重量があるようなものを積むと自然、価格も上がる訳だ。

量産レーダー、これの性能は破格過ぎる。
安く済むのに20haもの索敵範囲があるのだ。

一方でそれより安いフルナイロンの場合、たったの1ha。これでは使い物にならない。
次の出撃は色々考慮してどうしても自前での索敵が必要なので、
今回だけは回路ひとつ減らすぐらいに留まるようだ。

フォッシルメカニクス、次回以降はそれを使う事も考慮してみよう。

今日もカオスシルバー製のボイラーを解体していく。
もはや日常になってしまったこの光景。回路だけを抜き取れば、残りはリサイクルに回す。

以前、このフルカオスシルバーのボイラーを少し褒めたんだが、コレはダメだ。
強度指数が低く、試しにシュミレートしてみたら見事に出力不足に陥った。

こればかりは他に強度の高い精密な冶金が必要だった。
それを探すにもまだ時期尚早だろう。もう少し待ったほうがいい。
最近はパーツの設計図の出回りも悪い。新しい物が沢山来てくれるといいのだが…

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新しく冶金に使う素材が出回るという噂を耳にした。
その詳細を目にしたが…消費が重く、個人的にはあまり見る所がない気がした。
カオスシルバーと比べると連動性が大きく落ちてしまう事もあり、
格闘機として道を定めたこの機体には荷が重い。

瞬発的な加速はもう足りている。
今はレールガンの反動から立ち直るための安定した機動力の確保が先決だ。

フルカオスシルバーのボイラー、これは産廃だ。

物資投下でいつもこれが手に入るのだ。これで3回目だぞ。
何故いつもこれが来るんだ…？

と思ったがこの冶金構成のエンジンを使う者を戦場で見かけた。
しかもそれは広域出品から私の冶金データを持ってきたようだった。

…よく考えてみればエンジン出力は”強度”によって上がる事に気付く。
場合によっては消費分をいつか相殺できるのかもしれないなと思った。
そう仮定すれば重量に余裕ができる…思っても見なかった発見だ。


それに気付いたのは降ってきたボイラーをスクラップにした後だった。

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デミバルナスとやらからミサイルというものを送られた。
…これの仕様を確認してみるが、大量に撃てるようなら
中々に凄まじいと思うが予め持ってきた分だけというと少し尻込みしてしまう。

まだ私の機体も途上にある。
その一発にこれだけクレジットがかかるとなると運用は難しい。

残念だが送り返そう。

地を這うような、腹に響く独特の駆動音が空気を震わせる。
その音の出処は、脚。脚の駆動音が雄叫びのように鳴り響くのだ。

…機動に問題はない。むしろ調子がいいぐらいだ。
だが、その音が煩わし過ぎて機体の状態に変化が起こった時にわかりづらい懸念が生じた。
この機体には機動補助の為に小型のブースターが付いているが…これでは全く音は消えなかった。
隠密行動は機体の大型化の時点で諦めてはいたが、他の課題も増えたようだ。

…こんな事を戦闘の最中に思っていた時に気付いた。
なんだか懐かしいような感覚、…新しい事を始めた時のような、新鮮な気持ちになっていたのだった。

「そういえば、機体の改良までやるのは初めてだったか…」

疾走二脚の軽快な駆動が海面を叩く。
獣の咆哮のような音を織り交ぜながら、敵機へ向かってゆく。

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フルカオスシルバーのボイラー、これは産廃だ。

空から降ってきた。この産廃は空から降ってきたのだ。
この前掘ってきたばかりだぞ。何か、使ってほしい念を感じるが…だがスクラップ行きだ。

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ガレージの者の協力もあり、新しいフルナイロンのボイラーが作れたので早速機体に取り付けてみた。
かなりコンパクトで出力のロスもない。だが、エネルギーが全身に回るのに時間がかかるようだった。
回路には余裕があったのでフルパーマネントゴールドの構成も試してみたが、
大型化に伴いエネルギーの供給も増えた。5倍も差がある。

武器の大型化を目指していたが、これならエンジンの大型化も考慮してもよさそうだった。

それともう一つ、私には試したい事があったので該当する冶金構成の持ち主を探す事にした。
少々特殊な冶金構成なので探すのに苦労しそうだ…

発掘作業が終わり、掘り出し物を吟味していた。
今回の発掘は大規模なサルベージ団に混じったので、
なるべく自分の冶金構成と同じものを回すように頼んだ。
希望に沿ったのか、今回の発掘品は全てフルカオスシルバー製のものとなった。

フルカオスシルバーの騎士操縦棺と速射砲、これはいいものだ。
特に操縦棺は自前で用意しようと思っていた所だった。

フルカオスシルバーのボイラー、これは産廃だ。
せっかく生み出した出力を同時に消費してしまうのだ。産廃だ。

そういえばフルナイロンのボイラーをガレージの者に頼んでいたのを思い出す。
早速広域出品を確認してみると…ない。後でもう一度言っておくか……

掘り出した物品の構成を計算していたら気付いた事がある。

「なんだこれは」

………メールが来ていた。
どうやら私の冶金構成で部品を作ってほしいとの事。
つまるところ作成依頼…こういうのも来るのだなと、
今までこういう事がなかっただけに驚いた。

この連絡が来てから大分時間が経っている。
今からでも間に合うかわからないが次の出撃直前までは広域出品に出しておこう。

これからはこういう事にも気を配らないといけないのだな…と環境の変化を感じた。

「いい脚だが…」

ガレージの片隅、巨大な脚部パーツを見遣る。
精確には、"巨大な脚部パーツを取り付けた機体"だ。
脚だけがとても大きいので一目でバランスが悪いとわかる。
どうしてこうなったかと言えば…冶金構成に癖があったのが始まりだった。

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機体の改良をする為に色々してみようと思っていたが、
そのまま脚部パーツの構成を計算してみると、出力が不足する事が判明した。
ならばとエンジンも計算してみたが…生み出す出力に対してエンジン自体自身が喰う消費が多く、
元々あったエンジンよりも悪い結果となった。

脚を造るもエンジンを造るもこの冶金構成…完全Cs構成ではそもそもそれらの改良ができなかったのだ。
私がテストパイロットをしていた時期はパーツの換装をさせてもらえず、
修理やちょっとした改修を加えただけでやってきたのが仇になってしまった。
それに冶金構成に関しても未知の部分が多かった…

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そうして今ここにあるのは巨大な脚部パーツ。広域出品にて挙がってきたものだった。
低出力でこれに換えただけで出力面に大きな余裕ができた。
積載量も申し分無い。理想的な条件が揃ってはいたのだが……

「大きすぎるな…」

もう一度その機体を見上げた。見上げる程に大きい。
元々使っていた脚より20、いや30倍は重いのだからこうもなる。
同じ二脚型なのにこれだけ違うのだからこれに合わせて大きく機体も改修しなければならなかった。

だが、幸いにも時間はあった。これから発掘に向かうので出撃は無しだ。
次の出撃までにこれに合わせた機体を造り上げるとしよう。

覘視孔の先に時たま垣間見える波間、その先にある目的地を視認すれば、
随分遠くまで来たものだと感じた。

「晴れて自由の身、か」

テストパイロットの努めも終わり、解放された。
その際の乗機であるシャドウナイフが払い下げられ、幾ばくかの金銭と共に手元に残った。
そして、それからしばらくしない内に有名な資産家に傭兵としての登用の話が来た。
特に断る理由もなく、そしてこの話を断れば生きていける保証もないので承諾する事に。

たまに考える。自由とはなんだろう、と
そうしていつも他人に左右される人生に自由などあるのかと行き着く。

話に聞いていた場所に着いた。
輸送用タンカーから這い出れば、目的のガレージに入ってゆく。
………設備は、まあまあか。
ちらほら人も見かけるのでここで合っているだろう。

ふと、新しい所に来たというのに私の心は新鮮な気持ちにならない事に気付く。

「………」

答えはすぐに出た。どこへ行ったとして、やる事はさして変わらないからだ。