ENo.0006　凍てつく竜の魔王『フロワ』

「…空の色。とっても素敵！」

カヴが、テオからもらったソーダアイスを眺めている。
…フロワの心に、何かがくすぶりだす。

「……」
「フロワのも素敵よ！　雨上がりの空にかかる虹みたい！」
「フロワ、もしかして妬いちゃった？　焼きもちさんだね！　へへっ！」
「や、妬いてないの。絶対…。」

「フロワ、なんだか雰囲気が前より賢そうというか…。大人になった感じがする。何かあったの？」
「そう…？」

言われてみれば、頭が良くなったような…？
いつも氷のように　凍っていた　フロワの感情も、すっかり溶けている。
レガリア覚醒の　恩恵。それとも…。

「レガリアって、よくわかんないことが多いけど…なんだかすごいや！」

カヴは両手にアイスバーを持って、交互に食べ出した。

「それにしても　カヴ。そんな量　食べて…大丈夫？」
「う゛っ…。」
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手で　空を薙げば、吹雪が　舞い。
糸を　巻き取るように　動かせば、雪が　人の形になる。
「おいで」と　招けば、それは　歩きだし。
氷の剣で　貫けば、それは　たちまち　砕け散った。

そして　後ろの方で　響く、拍手の音。

「フロワの魔法、やっぱりすごいや！」
「わたしもフロワのように強くなりたいな！　ドラグーンに乗って、空を飛んで…雲に飛び込んで、虹の上でダンスするの！」
「ふふ。楽しそう。」
「でしょでしょ！」

壁に　もたれかかる　カヴ。何だか　辛そう。
フロワは　竜で　魔王だから　疲れとかは　平気だけど…。

「ここで遊んでいるのも楽しいけど、そろそろお家に帰りたいや。トロバも今頃心配してるだろうし…。」
「トロバ？」
「うん！」

カヴの表情が、ぱっと　明るくなった。

「わたしの、双子のお兄ちゃん！」

あらゆる種類の木々がねじれ、取り込まれた一本の大樹が生えている。 焦げかけの看板に『プランタ・タルタリカ『ルマ 』・バロメッツ』とあるが特に羊が生えてくる様子はない。
様々な形の葉が作る木漏れ日の下にあるハンモック、はめ込まれた丸い窓。ごつごつとした木肌葉が黄色赤に色づき、時々あるところから甘い香りの煙が立ち上る以外このツリーハウスに変わった様子はないようだ。
朝焼けを浴びると燃えるような輝きを見せ、ぱきり、ぱきりと樹が伸びる音がして、目覚ましがわりになる。正直早すぎる。