第12回目 午前2時のスリーピング・レイル
プロフィール

名前
スリーピング・レイル
愛称
スリーピング・レイル
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経歴 記憶喪失のグレムリンテイマー。 自分に関すること、そしてこの虚空領域に関することは何一つわからない。 唯一「グレムリンの操縦」だけは体が覚えている。 『スリーピング・レイル』とは身に着けていたエンブレムに刻まれていた文字列。 (イラストはすのだ様からの頂き物です) |
僚機プロフィール

名前
ネグロ
愛称
ネグロ
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経歴 元真紅連理所属、整備士の資格を持つ。 身長166cm 体重79cm 年齢43 両腕バイオ生体置き換え済 第一次七月戦役時、徴兵以来を受け真紅連理の強襲部隊に所属。 戦役中に左腕を失い、右腕を換金した後両腕をバイオ生体置き換え手術を行う。 現在まで拒否反応含む異常なし。 真紅連理降伏後、第一次七月戦役より消息をたつ。 その後、各地でゲリラ的活動の目撃情報有り。【僚機詳細】 |
◆日誌
『希望も未来も自らの手で絶って。今や、その傷跡だけがお前を物語る』
* * *
――死ぬのが、怖くないのか?
スリーピング・レイルは、その問いに対する答えを持たない。
……もしくは、「死」というものに嫌われていると、無意識に理解していたからかも、しれない。
* * *
――死ぬのが、怖くないのか?
スリーピング・レイルは、その問いに対する答えを持たない。
……もしくは、「死」というものに嫌われていると、無意識に理解していたからかも、しれない。
◆11回更新の日記ログ
スリーピング・レイルに必要とされるのは、グレムリンを操る能力だけだ。
思い返してみれば、今の、スリーピング・レイルとしての記憶が始まった時から、不思議とそういう「自覚」があった。
その認識がどこから来たものかは、未だによくわからない。ただ、何となくそういうものなのだ、と自然と思っていた。
自分は、グレムリンに属するものなのだと。言ってしまえば、自分はグレムリンを操るための部品のひとつ。そんな心持ちで戦場に立っていたし、これからもきっとそれは変わらない。操縦棺にいれば頭の中の声に苛まれなくて済む、とわかってからは、その認識は更に深まったと思う。
その一方で、グレムリンを降りている間の自分について、考えることがある。
操縦棺にいる間のクリアな意識は失われ、意識の片隅を遠いざわめきに支配されて、満足に生活を送ることすらままならない。失われた記憶とぼんやりと霞む思考を抱えて、それでも何となく人らしい日々を送る、自分について。
本当は、ずっと操縦棺の中に籠りきりの方が、よっぽど「スリーピング・レイル」としては上出来なのかもしれない。そんなことを考えもする、けれど。
レイル、という声を意識する。
視線を向けられる。声をかけられる。手を引かれる。
グレムリン越しではない、生身の自分に与えられるそれらを、切り捨てることのできない自分がいる。
その良し悪しを、己が判ずることはできない。
ただ、切り捨てることができないなら、それはもう、かけがえのないものであって。失いたくないものであって。つまりは、この手で守るべきものなのだ。
それが、『継ぎ接ぎ幽霊船』と、その乗組員に対するレイルの認識。
だから、スリーピング・レイルに必要とされるのは、グレムリンを操る能力だけだとしても。
レイルは、今ばかりはグレムリンの部品としてではなく、他でもない『継ぎ接ぎ幽霊船』の乗組員の一人として、侵入者である赤い髪の青年と向かい合っている。
青年は相当の手練れのようで、レイルが仕掛けてもその手を逃れ続けている。こちらも今のところ青年の武器に触れることなく捌いてはいるが、果たしてそれもいつまで続けられるか。自然と体が動くとはいえ、思考を介さない動きはいつか必ず見破られる。
首をもたげかけた弱気を飲み込む。もちろん、この場で侵入者を取り押さえることができればその方がいいのだろうけれど、何も、必ずしも相手を圧倒しなくてもよいのだと思い直す。ミアが侵入者のことを報せて、ルインたちに気付いてもらうだけの時間を稼げれば、まあ、ぎりぎり及第点といったところか。
深呼吸を一つ。逸る心を落ち着けて。
『この顔を知っているのか?』
そう問いかけてきた青年に向かって、言葉を投げかける。
「その顔を、知っているのかって、聞いた、よね」
青年は応えないまま、冷たい目でこちらを見据えている。武器を握る手は相変わらずマントの下。攻撃の出が見えないのはどうにもやりづらい。次はどこから繰り出されるだろう、と、相手の観察を止めないまま、言葉を続ける。
「君は、ツィールさんと同じ顔をしてる、けど、違う。君は一体、誰?」
問いかけへの答えは、踏み込みざまに繰り出される一撃だった。だが、こちらの読みが当たったことで、ぎりぎりのところで武器の狙いを逸らし、手首を掴み取ることに成功する。今度こそ、このまま青年の体を床に縫い留めてしまおうと力を込めようとした、その時だった。
青年の空いていた左手が、レイルの手首を握りしめる。
しまった、と思う間もなく、腕を捻り上げられると同時に視界から青年の姿が消える。次の瞬間、背後から与えられた衝撃で、床に膝をつく。脳裏に激しい警鐘が響くが、ここまで動きを封じられてしまっては、成すすべもない。
伸びてきた手がこちらの顎を掴む感触。
背筋に走る、悪寒。
それきり、
――希望も未来も自らの手で絶って。
――今や、その傷跡だけがお前を物語る。
いつの間に、意識を手放していたのだろう。
レイルは、いつから閉じていたのかもわからない瞼を開く。片方だけしか光を映さない目に、通路に点る明かりが差し込む。そして、視界がかろうじて焦点を結んだ時、目の前にあったのは、見慣れた顔だった。
「あ、ネグロさん……。僕、気絶してたか……」
果たして、自分はどのくらい気絶していたのだろう。
その間に、あの青年は――どこに行ったのだろう?
そこまで思考が及んだところで、飛び起きる。床で寝ている場合ではないのだ。じっとこちらを覗きこんでいたネグロに向かってまくし立てる。
「そうだ、さっき、そこから、ツィールさんによく似た顔の人が出てきて。武器を持ってて、ミアさんと僕のことを襲おうとして。それで、ミアさんは助けを呼びに行ったと思うんだけど、僕が足止めできなかったから……、どこに行ったんだろう、他の人が危険な目に遭ってるかもしれない、早く探さないと」
そこまでを言ったところで、ふと、気付く。
ネグロが、こちらの言葉に何の反応も示さないことに。息を殺して、じっと、こちらを凝視したまま、身じろぎもしないことに。
「ネグロ、さん?」
首を傾げてみせると、ネグロはそこでやっと我に返ったのか、激しく瞬きをして、それから唸るような声で言った。
「……、いや、悪い。大丈夫だ」
「よかった。それで」
「わかってる。ミアがもうルインに伝えて、情報は貰ってる――聞こえないか?」
ネグロが通路に取り付けられているスピーカーを指差したことで、目を覚ました時からずっとがんがん鳴り響き続けていたのだろう警報が、初めて意識される。思わず「あ」と声を漏らして、それから喉の奥に詰まっていた息を吐き出す。
「無事だったのか……よかった……」
気絶している間に事態が更に悪化している可能性を危惧していただけに、ネグロの言葉には救われた気持ちになる。ミアが無事逃げられた。それだけの時間は稼ぐことができたようだ。
けれど、これで終わりではない。それは、ネグロの顔が未だ緊張に満ちていることからも明らかだ。
「ツィール達がまだわからん。搬入口付近にはいる筈だが」
……ツィール。赤い髪の青年。レイルと同じく記憶を持たない、もしくは時々失った記憶の断片を感じることがあるレイルと異なり「元からない」可能性もある、青年。
あの青年は、ツィールによく似ていた。ミアが一目では見分けられなかったくらいに。それが単なる偶然などではありえないことくらいは、わかる。
『この顔を知っているのか?』
そう言った青年は、酷く、冷たい目をしていた。
間違いなく、この幽霊船に用があるとすれば、その一員であるツィールに対して、だ。
「……そうか。行こう、ネグロさん」
まだ、少しばかり意識に靄がかかっているような感覚はあるが、構ってはいられない。ここから搬入口までどれだけかかるだろう。そんなことを考えながら、床を蹴る。横で、ネグロもほとんど同時に走り出した気配を感じる。
果たして、あの青年に敵わなかった自分が向かったところで、何ができるだろう。頭の中に浮かぶ冷たい思考を、あえて見ないことにする。今は、動かずにはいられない、という自分の感覚を、信じることにする。
ただ、今も絶えず鳴り響く警報を意識するならば、ミアをこの場から逃がし、ミアがルインのいる管制室に辿り着くだけの時間は経過していたと見ていい。ネグロがレイルの元にやってきたことを考えると、もう少し加算すべきか。
目が覚めたのが遅すぎるのではないか? つい、そんな不安がよぎって。
「ネグロさん、僕、どれくらい気絶してたか、わかる?」
ほとんど無意識の問いかけだった。ネグロが一部始終を見ていたわけでもないのだから、「どれくらい」について答えるのが難しいのだと気付いたのは口に出してからだった。
だが、ネグロは。
「……気絶なんて、してねえよ」
レイルの想定しない言葉を、投げ返してきた。
足こそ止めないままではあったが、レイルは思わず横のネグロを見やる。ネグロは前を見たまま、レイルとは視線を合わせようとはせず、ただ、ただ、何かを堪えるような横顔で。
唇を、開く。
「間違いなく、死んでた」
その言葉の意味を飲み込むには、数拍の時間を要した。
死。
命が絶えること。生命活動が停止すること。そんな辞書的な意味を反芻してみる、けれど。
「死んで、た?」
唇から零れ落ちる言葉と共に、わずかに脳裏をよぎる、鈍い音。何かが折れるような、感触。
あの時、まさか、自分は――。
しかし、それならば今こうして走っている自分は何だ? 死んでいるのだとすれば、この体を動かしているものは何だ? まだわずかに意識にかかる靄が、それ以上を考えることを許してくれない。
どうにせよ、自分のことよりも先に、解決しなければならないことが目の前に転がっている以上。
今は、走り続けるしかないのだ。
【Scene:0011 意識が落ちて】
思い返してみれば、今の、スリーピング・レイルとしての記憶が始まった時から、不思議とそういう「自覚」があった。
その認識がどこから来たものかは、未だによくわからない。ただ、何となくそういうものなのだ、と自然と思っていた。
自分は、グレムリンに属するものなのだと。言ってしまえば、自分はグレムリンを操るための部品のひとつ。そんな心持ちで戦場に立っていたし、これからもきっとそれは変わらない。操縦棺にいれば頭の中の声に苛まれなくて済む、とわかってからは、その認識は更に深まったと思う。
その一方で、グレムリンを降りている間の自分について、考えることがある。
操縦棺にいる間のクリアな意識は失われ、意識の片隅を遠いざわめきに支配されて、満足に生活を送ることすらままならない。失われた記憶とぼんやりと霞む思考を抱えて、それでも何となく人らしい日々を送る、自分について。
本当は、ずっと操縦棺の中に籠りきりの方が、よっぽど「スリーピング・レイル」としては上出来なのかもしれない。そんなことを考えもする、けれど。
レイル、という声を意識する。
視線を向けられる。声をかけられる。手を引かれる。
グレムリン越しではない、生身の自分に与えられるそれらを、切り捨てることのできない自分がいる。
その良し悪しを、己が判ずることはできない。
ただ、切り捨てることができないなら、それはもう、かけがえのないものであって。失いたくないものであって。つまりは、この手で守るべきものなのだ。
それが、『継ぎ接ぎ幽霊船』と、その乗組員に対するレイルの認識。
だから、スリーピング・レイルに必要とされるのは、グレムリンを操る能力だけだとしても。
レイルは、今ばかりはグレムリンの部品としてではなく、他でもない『継ぎ接ぎ幽霊船』の乗組員の一人として、侵入者である赤い髪の青年と向かい合っている。
青年は相当の手練れのようで、レイルが仕掛けてもその手を逃れ続けている。こちらも今のところ青年の武器に触れることなく捌いてはいるが、果たしてそれもいつまで続けられるか。自然と体が動くとはいえ、思考を介さない動きはいつか必ず見破られる。
首をもたげかけた弱気を飲み込む。もちろん、この場で侵入者を取り押さえることができればその方がいいのだろうけれど、何も、必ずしも相手を圧倒しなくてもよいのだと思い直す。ミアが侵入者のことを報せて、ルインたちに気付いてもらうだけの時間を稼げれば、まあ、ぎりぎり及第点といったところか。
深呼吸を一つ。逸る心を落ち着けて。
『この顔を知っているのか?』
そう問いかけてきた青年に向かって、言葉を投げかける。
「その顔を、知っているのかって、聞いた、よね」
青年は応えないまま、冷たい目でこちらを見据えている。武器を握る手は相変わらずマントの下。攻撃の出が見えないのはどうにもやりづらい。次はどこから繰り出されるだろう、と、相手の観察を止めないまま、言葉を続ける。
「君は、ツィールさんと同じ顔をしてる、けど、違う。君は一体、誰?」
問いかけへの答えは、踏み込みざまに繰り出される一撃だった。だが、こちらの読みが当たったことで、ぎりぎりのところで武器の狙いを逸らし、手首を掴み取ることに成功する。今度こそ、このまま青年の体を床に縫い留めてしまおうと力を込めようとした、その時だった。
青年の空いていた左手が、レイルの手首を握りしめる。
しまった、と思う間もなく、腕を捻り上げられると同時に視界から青年の姿が消える。次の瞬間、背後から与えられた衝撃で、床に膝をつく。脳裏に激しい警鐘が響くが、ここまで動きを封じられてしまっては、成すすべもない。
伸びてきた手がこちらの顎を掴む感触。
背筋に走る、悪寒。
それきり、
――希望も未来も自らの手で絶って。
――今や、その傷跡だけがお前を物語る。
いつの間に、意識を手放していたのだろう。
レイルは、いつから閉じていたのかもわからない瞼を開く。片方だけしか光を映さない目に、通路に点る明かりが差し込む。そして、視界がかろうじて焦点を結んだ時、目の前にあったのは、見慣れた顔だった。
「あ、ネグロさん……。僕、気絶してたか……」
果たして、自分はどのくらい気絶していたのだろう。
その間に、あの青年は――どこに行ったのだろう?
そこまで思考が及んだところで、飛び起きる。床で寝ている場合ではないのだ。じっとこちらを覗きこんでいたネグロに向かってまくし立てる。
「そうだ、さっき、そこから、ツィールさんによく似た顔の人が出てきて。武器を持ってて、ミアさんと僕のことを襲おうとして。それで、ミアさんは助けを呼びに行ったと思うんだけど、僕が足止めできなかったから……、どこに行ったんだろう、他の人が危険な目に遭ってるかもしれない、早く探さないと」
そこまでを言ったところで、ふと、気付く。
ネグロが、こちらの言葉に何の反応も示さないことに。息を殺して、じっと、こちらを凝視したまま、身じろぎもしないことに。
「ネグロ、さん?」
首を傾げてみせると、ネグロはそこでやっと我に返ったのか、激しく瞬きをして、それから唸るような声で言った。
「……、いや、悪い。大丈夫だ」
「よかった。それで」
「わかってる。ミアがもうルインに伝えて、情報は貰ってる――聞こえないか?」
ネグロが通路に取り付けられているスピーカーを指差したことで、目を覚ました時からずっとがんがん鳴り響き続けていたのだろう警報が、初めて意識される。思わず「あ」と声を漏らして、それから喉の奥に詰まっていた息を吐き出す。
「無事だったのか……よかった……」
気絶している間に事態が更に悪化している可能性を危惧していただけに、ネグロの言葉には救われた気持ちになる。ミアが無事逃げられた。それだけの時間は稼ぐことができたようだ。
けれど、これで終わりではない。それは、ネグロの顔が未だ緊張に満ちていることからも明らかだ。
「ツィール達がまだわからん。搬入口付近にはいる筈だが」
……ツィール。赤い髪の青年。レイルと同じく記憶を持たない、もしくは時々失った記憶の断片を感じることがあるレイルと異なり「元からない」可能性もある、青年。
あの青年は、ツィールによく似ていた。ミアが一目では見分けられなかったくらいに。それが単なる偶然などではありえないことくらいは、わかる。
『この顔を知っているのか?』
そう言った青年は、酷く、冷たい目をしていた。
間違いなく、この幽霊船に用があるとすれば、その一員であるツィールに対して、だ。
「……そうか。行こう、ネグロさん」
まだ、少しばかり意識に靄がかかっているような感覚はあるが、構ってはいられない。ここから搬入口までどれだけかかるだろう。そんなことを考えながら、床を蹴る。横で、ネグロもほとんど同時に走り出した気配を感じる。
果たして、あの青年に敵わなかった自分が向かったところで、何ができるだろう。頭の中に浮かぶ冷たい思考を、あえて見ないことにする。今は、動かずにはいられない、という自分の感覚を、信じることにする。
ただ、今も絶えず鳴り響く警報を意識するならば、ミアをこの場から逃がし、ミアがルインのいる管制室に辿り着くだけの時間は経過していたと見ていい。ネグロがレイルの元にやってきたことを考えると、もう少し加算すべきか。
目が覚めたのが遅すぎるのではないか? つい、そんな不安がよぎって。
「ネグロさん、僕、どれくらい気絶してたか、わかる?」
ほとんど無意識の問いかけだった。ネグロが一部始終を見ていたわけでもないのだから、「どれくらい」について答えるのが難しいのだと気付いたのは口に出してからだった。
だが、ネグロは。
「……気絶なんて、してねえよ」
レイルの想定しない言葉を、投げ返してきた。
足こそ止めないままではあったが、レイルは思わず横のネグロを見やる。ネグロは前を見たまま、レイルとは視線を合わせようとはせず、ただ、ただ、何かを堪えるような横顔で。
唇を、開く。
「間違いなく、死んでた」
その言葉の意味を飲み込むには、数拍の時間を要した。
死。
命が絶えること。生命活動が停止すること。そんな辞書的な意味を反芻してみる、けれど。
「死んで、た?」
唇から零れ落ちる言葉と共に、わずかに脳裏をよぎる、鈍い音。何かが折れるような、感触。
あの時、まさか、自分は――。
しかし、それならば今こうして走っている自分は何だ? 死んでいるのだとすれば、この体を動かしているものは何だ? まだわずかに意識にかかる靄が、それ以上を考えることを許してくれない。
どうにせよ、自分のことよりも先に、解決しなければならないことが目の前に転がっている以上。
今は、走り続けるしかないのだ。
【Scene:0011 意識が落ちて】
◆10回更新の日記ログ
『希望も未来も自らの手で絶って。今や、その傷跡だけがお前を物語る』
* * *
そもそも、この言葉はいつ、誰から聞いたものだっただろうか。
スリーピング・レイルは、操縦棺の座席にもたれかかりながら、ぼんやりと思う。
ふとしたときに、頭の中に浮かぶ、声。いつも一方的に響き続けている幻聴とはまた違う、こちらに語り掛けるような、女の声。その声を「思い出す」たびに、どこか、胸を締め付けられるような気持ちになる。
「希望も、未来も、自らの手で絶った」
そう呟いてみながら、両の手を伸ばしてみる。視界の先で、ふたつの手が開き、閉ざされる。何の変哲もない、ただ武骨なだけの両手。
けれど、この手が何かを絶ったのだと、声は言う。希望だとか、未来だとか、そういう風に呼ばれる、大切なものを。
もちろん、レイルには覚えがない。
覚えがないのに、その言葉を疑えないでいる。
天井に向けて伸ばした腕を降ろし、そのまま、己の喉へと持っていく。巻いたマフラーの下、喉に刻み込まれた痕跡。それこそ『スリーピング・レイル』という言葉以外に唯一、己の過去の一端を示していると思われる、もの。
――今や、その傷跡だけがお前を物語る。
この傷跡の存在を知るミアはあえて言及を避けるけれど。これは明らかに「首を吊った」、ないし「首を絞めた」痕跡だ。
かつての自分には、そうなるだけの理由があった。それが、自分からすすんで行ったものか、他者に強いられたものかは、わからないけれど。
「僕は……、何を、したんだろう」
ぽつり、呟いたところで、操縦棺の外から聞こえてくる声をスピーカーが拾う。
ミアの声。……レイルを、操縦棺の外へと誘う、声。
そうだ、どれだけ過去について思いを馳せたところで、起こってしまった出来事は変わらず、今レイルがここにいるという事実が変わるわけでもない。
ひとつ、息をついて。レイルは緩んだマフラーを巻きなおし、操縦棺を開く。
【Scene:0010 遠い日の声】
* * *
そもそも、この言葉はいつ、誰から聞いたものだっただろうか。
スリーピング・レイルは、操縦棺の座席にもたれかかりながら、ぼんやりと思う。
ふとしたときに、頭の中に浮かぶ、声。いつも一方的に響き続けている幻聴とはまた違う、こちらに語り掛けるような、女の声。その声を「思い出す」たびに、どこか、胸を締め付けられるような気持ちになる。
「希望も、未来も、自らの手で絶った」
そう呟いてみながら、両の手を伸ばしてみる。視界の先で、ふたつの手が開き、閉ざされる。何の変哲もない、ただ武骨なだけの両手。
けれど、この手が何かを絶ったのだと、声は言う。希望だとか、未来だとか、そういう風に呼ばれる、大切なものを。
もちろん、レイルには覚えがない。
覚えがないのに、その言葉を疑えないでいる。
天井に向けて伸ばした腕を降ろし、そのまま、己の喉へと持っていく。巻いたマフラーの下、喉に刻み込まれた痕跡。それこそ『スリーピング・レイル』という言葉以外に唯一、己の過去の一端を示していると思われる、もの。
――今や、その傷跡だけがお前を物語る。
この傷跡の存在を知るミアはあえて言及を避けるけれど。これは明らかに「首を吊った」、ないし「首を絞めた」痕跡だ。
かつての自分には、そうなるだけの理由があった。それが、自分からすすんで行ったものか、他者に強いられたものかは、わからないけれど。
「僕は……、何を、したんだろう」
ぽつり、呟いたところで、操縦棺の外から聞こえてくる声をスピーカーが拾う。
ミアの声。……レイルを、操縦棺の外へと誘う、声。
そうだ、どれだけ過去について思いを馳せたところで、起こってしまった出来事は変わらず、今レイルがここにいるという事実が変わるわけでもない。
ひとつ、息をついて。レイルは緩んだマフラーを巻きなおし、操縦棺を開く。
【Scene:0010 遠い日の声】
◆9回更新の日記ログ
『希望も未来も自らの手で絶って。今や、その傷跡だけがお前を物語る』
* * *
スリーピング・レイルにとって、グレムリン『スリーピング・レイル』の操縦棺は他のどのような場所よりも安らぎをもたらす空間であった。
ほとんど常に頭の中に響いている無数の声も、操縦棺に入っている間はぴたりと収まる。一日の中でも貴重な静寂をもたらすこの空間に居付くのも、当然の帰結というものだった。
だから、今日もレイルは操縦棺の操縦席の上で丸まっている。ミアには嫌な顔をされる――きっと、「人並みに」部屋の寝台で眠ってほしいのだろう、ということは想像がつく――けれど、これは頭の中の声が消えてくれない限り、どうしようもない。
ただ、静かになったらなったで、明確な焦点を結ばない思考が浮かんでは、消える。
結局、これだけの期間、傭兵として戦い続けてきたけれど、自分のことについては何一つわからないままだ。『スリーピング・レイル』という言葉とエンブレムだけが自分を定義するものであり、手元にあったそれらについて少しずつ調べていないわけでもなかったけれど、そもそも伝手も何も無い状態では、調査はろくに進まなかった。
「……スリーピング・レイル、か」
そう名乗り、呼ばれるようになり、今はもう、「自分の名前」として認識できるようになってきた。ただ、これが元から自分のものであったかというと、きっとそんなことはないのだとも、思う。
眠る鳥のエンブレム、眠る鳥を示す文字列。
記憶が始まったときから、不思議と動かせたグレムリン。
その一方で、致命的に自分の中から欠け落ちている虚空領域の常識。
足りない知識を飲み込むたびに、頭の中にちらつく違和感。
首にべったりと残された、紐状の痕跡。
そして、少しでも意識を緩めると、頭の中に響き渡る、自分の知らない声。
今になっても、わかることのない「自分自身のこと」。
とはいえ、それらの事柄については、知らなくても生きてはいける。今までそうしてきたように、そういうものだと思って、頭の隅においやって、戦場に赴いていればいい。理由はわからないけれど、自分には戦う力があって、だから戦っている。それだけでも十分といえば十分だ。自分が戦場に向かうことによって、結果的に誰かを助けられるというなら、尚更、余計なことなんて考えなくていいのだとも、思う。
ただ――。
そこまで考えたところで、操縦棺の内部に外からの音声が入り込んでくる。
『レイル、いる?』
ミアの声だ。レイルは外に向けて「いるよ」と答えて、操縦棺を開ける。すると、『スリーピング・レイル』の足元にちょこんとミアが立っていた。その手には、二つのカップが握られている。
「邪魔した?」
「ううん、ぼうっとしてただけ。何かな」
「最近、ほとんどの時間、操縦棺に籠ってるでしょ。ちょっと、心配になって見に来たんだよ」
食事のときには必ず食堂に顔を出すようにしているし、幽霊船の乗組員たちとのやり取りを意識して避けているわけではない。ただ、ミアの言う通り、以前より操縦棺にいる時間が増えているのは事実だった。
「操縦棺、入ってもいい?」
レイルが頷くと、ミアが手を伸ばして、レイルの手に二つのカップを手渡す。カップの中身はあたたかなバイオコーヒー。状態が良いとはいえない水に、誤魔化すための味をつけただけのもの。今となっては毎日口にしているものだが、当初はどこまでも「初めてのもの」だったことを、今も時折思い出す。
そして、ミアはぴょんと操縦棺に飛び乗ってくる。そして、レイルの手から自分のカップを受け取ると、操縦棺の狭い床に座りこんで、操縦棺の中を見渡す。通常の操縦棺よりはやや広いとはいえ、低い天井と圧迫感のある壁面は、慣れない人間にとってはあまり気持ちのよいものではないだろう。ミアも、軽く眉を顰めていう。
「レイルは、息苦しくないの? ずっとこんな場所にいて」
「少し、息苦しいくらいの方が、居心地がいいんだ」
言いながら、自分は操縦席に座りなおす。
これは、頭の中に声が聞こえるかどうかとはまた別で、狭い空間にいた方が、心が落ち着くのだった。どうも、広い空間に置かれていると、そこが自分のいていい場所ではないような気がするのだ。ミアの芳しくない反応を見る限り、それが一般的な感覚でないことは間違いなさそうだが。
「居心地よくても、もうちょっと、外に出た方がいいと思うよ。それとも……、やっぱり、頭の中の声がうるさい?」
「覚醒してるときは、そうでもないんだ。聞こえるけど、ずっと遠く感じる」
「でも、聞こえてるんだ……」
レイルは頷いて、コーヒーを一口。お世辞にも美味いとはいえないが、それでも喉を潤せるのはありがたかった。
「ずっと聞こえてると、逆に気にならないから、心配しないで」
「心配しないでって言われても、説得力ないよ。頭の中に声が聞こえるってこと自体が、普通じゃないんだから。誰かに、診てもらった方がいいんじゃないかな」
その言葉には、曖昧な表情を浮かべざるを得ない。
異常なのは承知の上だが、診てもらうにしたって、誰に? こんな症状を提示されても、医者も困ってしまうのではないだろうか。そもそも、信頼できる医者を探すのだって、大変そうだ。
ミアもそれをわかっていないわけではないようで、「難しいとは思うけどさ」と付け加えて、コーヒーをすする。
「……ねえ、もしも、もしもの話、だけどさ」
「ん?」
「未識別機動体との戦いが、終わったとしたら。レイルは、何をするんだろうね」
戦いが、終わったとしたら――?
自分の手を見る。記憶が始まったときから、グレムリンを操ることだけができた、手。正確には手はあくまでひとつのインタフェースに過ぎず、この体とそれを統括する思念がグレムリンを動かしている、のだと思っているが。
もし、グレムリンで戦う必要がなくなったとしたら。自分は、一体何をしているのだろう。
「何、を……?」
記憶がなくても何も困りはしない。自分にまつわる何ひとつがわかっていなくても何も困りはしない。それは、目の前に戦いがあるからだ。自分にできることが、できる場所があるからだ。
けれど、それがなくなった日のことを、考えたことがなかったのだと、気付く。
戦いをなくすために、戦っているはずなのに。
もしもの景色を想像する。戦いがなくなった世界。この力が必要でなくなった、世界。
「僕は……、そこにいて、いいのかな」
ぽつり。ほとんど意識せず、言葉が零れ落ちた。ミアの目が見開かれる。
「何、言ってるの?」
「戦いがなくなる。それは、僕だって望んでることだけど。……そうなったら、僕は、もう、必要ないのかなって」
「どうしてそうなっちゃうかなあ! 戦いが終わるってことは、レイルももう、戦わなくていいってことなんだよ。好きなことをしていいんだよ。レイルの好きなことは何? やりたいことは何? 今までみんなと過ごしてきて……、何か……、ない、の?」
始めは激しかったミアの語調が、萎んでいく。表情をくしゃりと歪めて、レイルをじっと見つめている。
ああ、また、こういう顔をさせてしまった。
レイルは今日も自分の失態を悟る。いつだってそう、レイルの言動はどうもミアを不安にさせてしまうらしい。
けれど、「好きなことをしていい」と言われても、本当に何も浮かばなかったのだ。好きなこと、やりたいこと。……想像も、つかない。
「ごめん。今はまだ、何も思いつかない。でも、僕は、戦いが終わった世界にいてもいいのか」
「いちゃダメなんて、誰も言ってないじゃん……」
「そう、だな。どうして、いてはいけないなんて、思ったんだろう?」
「あたしが聞きたいよ!」
それはそうだ。レイルも自分で自分に呆れてしまう。
ぷう、と頬を膨らませたミアが、レイルを見上げる。
「レイルは、もうちょっと、戦い以外にも興味を持って。これからも、生きててくれるんでしょう? この戦いを生き抜いていけるなら……、もしかしたら、戦いが終わる日にだって、立ち会えるかもしれないじゃない」
――その時に、一緒に喜べないなんて、寂しいよ。
ミアの言葉に、レイルは何も言えなくなる。
気の利いたことを言えればよかったのかもしれないが、あいにく、レイルの頭の中にはその手の言葉はまるで浮かばなかった。
代わりに、浮かび上がってくるのは、何故だろう、ミアがいる温かな光差す世界を、一歩離れた酷く冷たい場所から見つめているヴィジョンばかりだった。
もちろん、そんなこと、ミアに言えるはずもなかったけれど。
【Scene:0009 もしものはなし】
* * *
スリーピング・レイルにとって、グレムリン『スリーピング・レイル』の操縦棺は他のどのような場所よりも安らぎをもたらす空間であった。
ほとんど常に頭の中に響いている無数の声も、操縦棺に入っている間はぴたりと収まる。一日の中でも貴重な静寂をもたらすこの空間に居付くのも、当然の帰結というものだった。
だから、今日もレイルは操縦棺の操縦席の上で丸まっている。ミアには嫌な顔をされる――きっと、「人並みに」部屋の寝台で眠ってほしいのだろう、ということは想像がつく――けれど、これは頭の中の声が消えてくれない限り、どうしようもない。
ただ、静かになったらなったで、明確な焦点を結ばない思考が浮かんでは、消える。
結局、これだけの期間、傭兵として戦い続けてきたけれど、自分のことについては何一つわからないままだ。『スリーピング・レイル』という言葉とエンブレムだけが自分を定義するものであり、手元にあったそれらについて少しずつ調べていないわけでもなかったけれど、そもそも伝手も何も無い状態では、調査はろくに進まなかった。
「……スリーピング・レイル、か」
そう名乗り、呼ばれるようになり、今はもう、「自分の名前」として認識できるようになってきた。ただ、これが元から自分のものであったかというと、きっとそんなことはないのだとも、思う。
眠る鳥のエンブレム、眠る鳥を示す文字列。
記憶が始まったときから、不思議と動かせたグレムリン。
その一方で、致命的に自分の中から欠け落ちている虚空領域の常識。
足りない知識を飲み込むたびに、頭の中にちらつく違和感。
首にべったりと残された、紐状の痕跡。
そして、少しでも意識を緩めると、頭の中に響き渡る、自分の知らない声。
今になっても、わかることのない「自分自身のこと」。
とはいえ、それらの事柄については、知らなくても生きてはいける。今までそうしてきたように、そういうものだと思って、頭の隅においやって、戦場に赴いていればいい。理由はわからないけれど、自分には戦う力があって、だから戦っている。それだけでも十分といえば十分だ。自分が戦場に向かうことによって、結果的に誰かを助けられるというなら、尚更、余計なことなんて考えなくていいのだとも、思う。
ただ――。
そこまで考えたところで、操縦棺の内部に外からの音声が入り込んでくる。
『レイル、いる?』
ミアの声だ。レイルは外に向けて「いるよ」と答えて、操縦棺を開ける。すると、『スリーピング・レイル』の足元にちょこんとミアが立っていた。その手には、二つのカップが握られている。
「邪魔した?」
「ううん、ぼうっとしてただけ。何かな」
「最近、ほとんどの時間、操縦棺に籠ってるでしょ。ちょっと、心配になって見に来たんだよ」
食事のときには必ず食堂に顔を出すようにしているし、幽霊船の乗組員たちとのやり取りを意識して避けているわけではない。ただ、ミアの言う通り、以前より操縦棺にいる時間が増えているのは事実だった。
「操縦棺、入ってもいい?」
レイルが頷くと、ミアが手を伸ばして、レイルの手に二つのカップを手渡す。カップの中身はあたたかなバイオコーヒー。状態が良いとはいえない水に、誤魔化すための味をつけただけのもの。今となっては毎日口にしているものだが、当初はどこまでも「初めてのもの」だったことを、今も時折思い出す。
そして、ミアはぴょんと操縦棺に飛び乗ってくる。そして、レイルの手から自分のカップを受け取ると、操縦棺の狭い床に座りこんで、操縦棺の中を見渡す。通常の操縦棺よりはやや広いとはいえ、低い天井と圧迫感のある壁面は、慣れない人間にとってはあまり気持ちのよいものではないだろう。ミアも、軽く眉を顰めていう。
「レイルは、息苦しくないの? ずっとこんな場所にいて」
「少し、息苦しいくらいの方が、居心地がいいんだ」
言いながら、自分は操縦席に座りなおす。
これは、頭の中に声が聞こえるかどうかとはまた別で、狭い空間にいた方が、心が落ち着くのだった。どうも、広い空間に置かれていると、そこが自分のいていい場所ではないような気がするのだ。ミアの芳しくない反応を見る限り、それが一般的な感覚でないことは間違いなさそうだが。
「居心地よくても、もうちょっと、外に出た方がいいと思うよ。それとも……、やっぱり、頭の中の声がうるさい?」
「覚醒してるときは、そうでもないんだ。聞こえるけど、ずっと遠く感じる」
「でも、聞こえてるんだ……」
レイルは頷いて、コーヒーを一口。お世辞にも美味いとはいえないが、それでも喉を潤せるのはありがたかった。
「ずっと聞こえてると、逆に気にならないから、心配しないで」
「心配しないでって言われても、説得力ないよ。頭の中に声が聞こえるってこと自体が、普通じゃないんだから。誰かに、診てもらった方がいいんじゃないかな」
その言葉には、曖昧な表情を浮かべざるを得ない。
異常なのは承知の上だが、診てもらうにしたって、誰に? こんな症状を提示されても、医者も困ってしまうのではないだろうか。そもそも、信頼できる医者を探すのだって、大変そうだ。
ミアもそれをわかっていないわけではないようで、「難しいとは思うけどさ」と付け加えて、コーヒーをすする。
「……ねえ、もしも、もしもの話、だけどさ」
「ん?」
「未識別機動体との戦いが、終わったとしたら。レイルは、何をするんだろうね」
戦いが、終わったとしたら――?
自分の手を見る。記憶が始まったときから、グレムリンを操ることだけができた、手。正確には手はあくまでひとつのインタフェースに過ぎず、この体とそれを統括する思念がグレムリンを動かしている、のだと思っているが。
もし、グレムリンで戦う必要がなくなったとしたら。自分は、一体何をしているのだろう。
「何、を……?」
記憶がなくても何も困りはしない。自分にまつわる何ひとつがわかっていなくても何も困りはしない。それは、目の前に戦いがあるからだ。自分にできることが、できる場所があるからだ。
けれど、それがなくなった日のことを、考えたことがなかったのだと、気付く。
戦いをなくすために、戦っているはずなのに。
もしもの景色を想像する。戦いがなくなった世界。この力が必要でなくなった、世界。
「僕は……、そこにいて、いいのかな」
ぽつり。ほとんど意識せず、言葉が零れ落ちた。ミアの目が見開かれる。
「何、言ってるの?」
「戦いがなくなる。それは、僕だって望んでることだけど。……そうなったら、僕は、もう、必要ないのかなって」
「どうしてそうなっちゃうかなあ! 戦いが終わるってことは、レイルももう、戦わなくていいってことなんだよ。好きなことをしていいんだよ。レイルの好きなことは何? やりたいことは何? 今までみんなと過ごしてきて……、何か……、ない、の?」
始めは激しかったミアの語調が、萎んでいく。表情をくしゃりと歪めて、レイルをじっと見つめている。
ああ、また、こういう顔をさせてしまった。
レイルは今日も自分の失態を悟る。いつだってそう、レイルの言動はどうもミアを不安にさせてしまうらしい。
けれど、「好きなことをしていい」と言われても、本当に何も浮かばなかったのだ。好きなこと、やりたいこと。……想像も、つかない。
「ごめん。今はまだ、何も思いつかない。でも、僕は、戦いが終わった世界にいてもいいのか」
「いちゃダメなんて、誰も言ってないじゃん……」
「そう、だな。どうして、いてはいけないなんて、思ったんだろう?」
「あたしが聞きたいよ!」
それはそうだ。レイルも自分で自分に呆れてしまう。
ぷう、と頬を膨らませたミアが、レイルを見上げる。
「レイルは、もうちょっと、戦い以外にも興味を持って。これからも、生きててくれるんでしょう? この戦いを生き抜いていけるなら……、もしかしたら、戦いが終わる日にだって、立ち会えるかもしれないじゃない」
――その時に、一緒に喜べないなんて、寂しいよ。
ミアの言葉に、レイルは何も言えなくなる。
気の利いたことを言えればよかったのかもしれないが、あいにく、レイルの頭の中にはその手の言葉はまるで浮かばなかった。
代わりに、浮かび上がってくるのは、何故だろう、ミアがいる温かな光差す世界を、一歩離れた酷く冷たい場所から見つめているヴィジョンばかりだった。
もちろん、そんなこと、ミアに言えるはずもなかったけれど。
【Scene:0009 もしものはなし】
◆8回更新の日記ログ
『お前は祝福も希望も顧みやしなかった。故にこそ、今や、その傷跡だけがお前を物語る』
* * *
スリーピング・レイルが、巨大未識別に挑むと言い出した。
今までの戦いが容易かったというつもりはない。その上で、これから待つ戦いがそれとは比べ物にならないくらい厳しいものであることは、間違いなかった。
ミアは、グレムリン『スリーピング・レイル』の操縦棺から降りてきたレイルに駆け寄る。
「どうだった?」
レイルは取得されたデータを元に、シミュレーターと向き合っていた。新たなアセンブルを試し、そのたびにシミュレーター上の敵機と交戦して。ここしばらくは、食事や休息の時間以外はずっとそうして過ごしているようだった。ただ、その結果が思わしくないらしいのは、レイルの表情と、
「全然ダメだな。僕の腕じゃ、九分から十分持たせられればいい方だ」
という言葉で、明らかだった。
その言葉に、ミアはぞくりとする。『スリーピング・レイル』の戦い方は、率先して敵機の前に飛び出していき、相手の攻撃を引き付けるという、極めて危険なスタイルだ。それでも、今までの戦いでは耐えきれていた、が。今回ばかりはそうもいかないということなのか。それは、つまり――。
ミアの脳裏に浮かぶのは、戦場に赴いたきり戻ってこなかった、誰かさんの後ろ姿。その、やけに広く感じられた背中が、今目の前にいるレイルの姿に重なる。
けれど、レイルはそんなミアの思いなど知らず、淡々と続けるのだ。
「足止めの役にも立たないのは、ネグロさんに、申し訳ないな」
ああ、この人は。
こんな時にも、他人のことを最初に考えるのか。そう思った時には、胸の内に湧きあがった言葉は、唇から零れ落ちていた。
「……っ、ネグロさんのことよりも、まず、自分のことを考えてよ!」
「え?」
これは、本当にミアの言いたいことをわかっていない「え?」だ。ミアはレイルの妙な鈍さに腹立たしさすら覚えながら、言葉を続ける。
「今はシミュレーターだからいいけど、ダメだってことは、実戦なら、死ぬかもしれないってことじゃない!」
もちろん、グレムリンに緊急脱出の手続きが無いわけではない。それでも、グレムリンを破壊されたテイマーが、戦場に取り残されて助かるという保証はない。
レイルは、ぱちりと、ミアに見えている側の目を瞬いて。それから、いたって穏やかな声で言う。
「死ぬ、気は、ないよ」
「説得力がない! 今までだって、レイルが『そうしたい』って言うから、言う通りにアセンブルしてたけど、いつも思うんだよ」
――レイルは、死ぬのが怖くないのかって。
そうだ、レイルの戦い方は、死を恐れぬ者のそれに限りなく近い。実際の戦場を見ているわけではないミアでも、戦場から戻ってきた『スリーピング・レイル』の装甲に深々と刻まれた傷跡を見れば、嫌でもそのように考えずにはいられないのだ。
ミアの言葉にレイルは何を思ったのか、巻いたマフラーの上から、喉の辺りに触れた。今はマフラーに隠れていて見えないが、そこには紐のようなものが巻き付いた痕跡がある。レイル自身ですらいつついたものなのか知らない、ただ、明らかに「首を絞めた」としか思えない痕。
落ち着きなく指先を動かしてマフラーを弄りながら、レイルはぽつぽつと言葉を落とす。
「死ぬのが怖くないか、って言われたら、よく、わからないな」
「わからないって何? 自分のことじゃない」
「でも、僕が死んだとして、何かを感じるのは僕じゃない、から」
死の向こう側には何もない。
それが、レイルの主張だということをミアは知っている。虚空領域に満ちている、「失われたはずの機体が現れる」事象だって、あくまで世界に巻き起こっている「バグ」であって、本質的に「死が覆った」わけではない。死は死であり、断絶であり、それ以上でも以下でもない。レイルはそう、言うのだ。
ミアはその主張に対して、強く異議を唱えられないまま、その一方でどこか反発を抱いている。もちろん、死んだ者の声を聞くことなんてできないのだから、レイルの言葉が正しいかどうかなんてわかるはずはないのだけれども。
ただ、そう、レイルにはそのつもりはないのだろうが、ミアの中にある小さな期待――それが夢想に過ぎないとミア自身わかっていたとしても、だ――をも否定されているような気持ちになる、のだ。
ミアの脳裏には、今もなお、死者の背中が焼き付いていて離れないままでいるから。
そんなことを思っていると、ぽつり、レイルの言葉が落とされる。
「そう、だから、怖いのは僕が死ぬことよりも、多分、僕が死ぬことで誰かに被害が出る可能性、なのだと思っている」
「……え?」
「僕が死んだら、この船を守る人が、ひとり、いなくなるってことだろう。ネグロさんやツィールさんがいてくれれば、なんとかできるかもしれないけど。それでも、心配なのは本当。ミアさんのことだって、守れなくなってしまう。それは、嫌だ」
だから、死ぬ気はない、と。レイルは言うのだ。真っ直ぐに、どこまでも真っ直ぐに。
ミアはその言葉に何とも言えない気持ちになる。死ぬ気が無い、というレイルの言葉は本当なのだろう。誰かに被害が出たり、守れなくなったりするのが嫌なのだという言葉も。けれど、それは……。
「レイルは、いつだって、人のことばっかりだね」
「……そうかな」
「そうだよ。レイルが、自分ひとりのために何かをしようとしてること、多分、見たことない」
レイルがグレムリンに乗るのは、誰かを守るためであり、誰かの力になるためだ。普段から体を鍛えている理由も、深い理由はないけれど、これが少しでも役に立つなら嬉しいからだ、と以前に聞いたことがある。
レイルにとって物事を選択する基準は「人の役に立つかどうか」で、自分自身のために何かを望んでいるところを、ミアは、知らない。
「でも、誰かが嬉しければ、僕も、嬉しいし。それに、僕一人だけが嬉しいことって、よく、わからないな」
「そっか……」
レイルの言葉は、ミアの予想通りの回答ではあったけれど、改めて言葉にして聞かされると、どうしても、もやもやとした気持ちになる。レイルの何が悪いというわけでもない、とは思うのだけれども、どうしてももやもやを振り切ることができない。
だから、それ以上に何を言っていいかわからなくて、ミアはつい、唇を尖らせてしまう。レイルは困ったように眉尻を下げて、白い髭で覆われた顎を撫ぜてみせる。
「何だか、いつも、ミアさんにそんな顔をさせてしまうな。ごめん」
「謝られても困っちゃうよ。悪い……、ってわけじゃない、と思うし」
でも、納得ができない。それだけ。
多分、レイルもそれは承知の上で、謝らずにはいられなかったのだろう。ミアの求めるような答えを持たない自分に負い目を感じている、そんな顔をしている。
お互い様だ、とミアは思う。自分だって、これから戦いに赴こうとしているレイルに、そんな顔をさせたいわけではないのだ。本当に、レイルは優しすぎるのだ、と思わずにはいられない。そう、つい『どうすればミアが喜んでくれるのか』に想像を及ばせてしまう程度には、優しいひと。
ミアは深呼吸ひとつ、背を丸めてしょぼくれた顔をするレイルの背中をどんと叩く。「わ」と声をあげるレイルを見上げて、腰に手を当てる。
「もう、しっかりしてよ。死ぬ気はないし、あたしたちのこと、助けてくれるんでしょ? なら、お互いにやれることは全部やってみよ! ぎりぎりまで、足掻かないと」
「……うん。そうだな」
レイルも、ミアの言葉に顔を上げる。その時、レイルが携えている通信端末が音を立てて鳴った。レイルは通信端末を耳に当て、二、三言言葉を交わした後に通信を切る仕草をした。
「誰から?」
「ネグロさん。『スリーピング・レイル』のアセンブルについて、相談したいことがあって、ここに来るって。ミアさんも、一緒にいてくれると、嬉しい」
「もちろん」
ここしばらくでレイルも随分知識をつけてきたし、兵装について一人で考えることも増えてきたが、『スリーピング・レイル』に手を加える時には必ずミアの同席を求める。多分、レイルの中でミアはあくまで『スリーピング・レイル』の整備士ということなのだろう。
それは素直に嬉しく思うし、その一方で少しだけ不安に思う。
いつか、レイルが自分を必要としなくなる日が来るのかもしれない、と。
いつか、レイルにとって自分は「守るべきもの」というだけの存在になってしまうのではないか、と。
それは嫌だな、と思いながら、ミアはレイルを見上げる。
レイルは、これから大きな戦いが待っているとも思えない、酷く凪いだ顔でそこに立っていて。そこに、何らかの感情を読み取ることは、ミアにはできなかった。
【Scene:0008 戦いの前に】
* * *
スリーピング・レイルが、巨大未識別に挑むと言い出した。
今までの戦いが容易かったというつもりはない。その上で、これから待つ戦いがそれとは比べ物にならないくらい厳しいものであることは、間違いなかった。
ミアは、グレムリン『スリーピング・レイル』の操縦棺から降りてきたレイルに駆け寄る。
「どうだった?」
レイルは取得されたデータを元に、シミュレーターと向き合っていた。新たなアセンブルを試し、そのたびにシミュレーター上の敵機と交戦して。ここしばらくは、食事や休息の時間以外はずっとそうして過ごしているようだった。ただ、その結果が思わしくないらしいのは、レイルの表情と、
「全然ダメだな。僕の腕じゃ、九分から十分持たせられればいい方だ」
という言葉で、明らかだった。
その言葉に、ミアはぞくりとする。『スリーピング・レイル』の戦い方は、率先して敵機の前に飛び出していき、相手の攻撃を引き付けるという、極めて危険なスタイルだ。それでも、今までの戦いでは耐えきれていた、が。今回ばかりはそうもいかないということなのか。それは、つまり――。
ミアの脳裏に浮かぶのは、戦場に赴いたきり戻ってこなかった、誰かさんの後ろ姿。その、やけに広く感じられた背中が、今目の前にいるレイルの姿に重なる。
けれど、レイルはそんなミアの思いなど知らず、淡々と続けるのだ。
「足止めの役にも立たないのは、ネグロさんに、申し訳ないな」
ああ、この人は。
こんな時にも、他人のことを最初に考えるのか。そう思った時には、胸の内に湧きあがった言葉は、唇から零れ落ちていた。
「……っ、ネグロさんのことよりも、まず、自分のことを考えてよ!」
「え?」
これは、本当にミアの言いたいことをわかっていない「え?」だ。ミアはレイルの妙な鈍さに腹立たしさすら覚えながら、言葉を続ける。
「今はシミュレーターだからいいけど、ダメだってことは、実戦なら、死ぬかもしれないってことじゃない!」
もちろん、グレムリンに緊急脱出の手続きが無いわけではない。それでも、グレムリンを破壊されたテイマーが、戦場に取り残されて助かるという保証はない。
レイルは、ぱちりと、ミアに見えている側の目を瞬いて。それから、いたって穏やかな声で言う。
「死ぬ、気は、ないよ」
「説得力がない! 今までだって、レイルが『そうしたい』って言うから、言う通りにアセンブルしてたけど、いつも思うんだよ」
――レイルは、死ぬのが怖くないのかって。
そうだ、レイルの戦い方は、死を恐れぬ者のそれに限りなく近い。実際の戦場を見ているわけではないミアでも、戦場から戻ってきた『スリーピング・レイル』の装甲に深々と刻まれた傷跡を見れば、嫌でもそのように考えずにはいられないのだ。
ミアの言葉にレイルは何を思ったのか、巻いたマフラーの上から、喉の辺りに触れた。今はマフラーに隠れていて見えないが、そこには紐のようなものが巻き付いた痕跡がある。レイル自身ですらいつついたものなのか知らない、ただ、明らかに「首を絞めた」としか思えない痕。
落ち着きなく指先を動かしてマフラーを弄りながら、レイルはぽつぽつと言葉を落とす。
「死ぬのが怖くないか、って言われたら、よく、わからないな」
「わからないって何? 自分のことじゃない」
「でも、僕が死んだとして、何かを感じるのは僕じゃない、から」
死の向こう側には何もない。
それが、レイルの主張だということをミアは知っている。虚空領域に満ちている、「失われたはずの機体が現れる」事象だって、あくまで世界に巻き起こっている「バグ」であって、本質的に「死が覆った」わけではない。死は死であり、断絶であり、それ以上でも以下でもない。レイルはそう、言うのだ。
ミアはその主張に対して、強く異議を唱えられないまま、その一方でどこか反発を抱いている。もちろん、死んだ者の声を聞くことなんてできないのだから、レイルの言葉が正しいかどうかなんてわかるはずはないのだけれども。
ただ、そう、レイルにはそのつもりはないのだろうが、ミアの中にある小さな期待――それが夢想に過ぎないとミア自身わかっていたとしても、だ――をも否定されているような気持ちになる、のだ。
ミアの脳裏には、今もなお、死者の背中が焼き付いていて離れないままでいるから。
そんなことを思っていると、ぽつり、レイルの言葉が落とされる。
「そう、だから、怖いのは僕が死ぬことよりも、多分、僕が死ぬことで誰かに被害が出る可能性、なのだと思っている」
「……え?」
「僕が死んだら、この船を守る人が、ひとり、いなくなるってことだろう。ネグロさんやツィールさんがいてくれれば、なんとかできるかもしれないけど。それでも、心配なのは本当。ミアさんのことだって、守れなくなってしまう。それは、嫌だ」
だから、死ぬ気はない、と。レイルは言うのだ。真っ直ぐに、どこまでも真っ直ぐに。
ミアはその言葉に何とも言えない気持ちになる。死ぬ気が無い、というレイルの言葉は本当なのだろう。誰かに被害が出たり、守れなくなったりするのが嫌なのだという言葉も。けれど、それは……。
「レイルは、いつだって、人のことばっかりだね」
「……そうかな」
「そうだよ。レイルが、自分ひとりのために何かをしようとしてること、多分、見たことない」
レイルがグレムリンに乗るのは、誰かを守るためであり、誰かの力になるためだ。普段から体を鍛えている理由も、深い理由はないけれど、これが少しでも役に立つなら嬉しいからだ、と以前に聞いたことがある。
レイルにとって物事を選択する基準は「人の役に立つかどうか」で、自分自身のために何かを望んでいるところを、ミアは、知らない。
「でも、誰かが嬉しければ、僕も、嬉しいし。それに、僕一人だけが嬉しいことって、よく、わからないな」
「そっか……」
レイルの言葉は、ミアの予想通りの回答ではあったけれど、改めて言葉にして聞かされると、どうしても、もやもやとした気持ちになる。レイルの何が悪いというわけでもない、とは思うのだけれども、どうしてももやもやを振り切ることができない。
だから、それ以上に何を言っていいかわからなくて、ミアはつい、唇を尖らせてしまう。レイルは困ったように眉尻を下げて、白い髭で覆われた顎を撫ぜてみせる。
「何だか、いつも、ミアさんにそんな顔をさせてしまうな。ごめん」
「謝られても困っちゃうよ。悪い……、ってわけじゃない、と思うし」
でも、納得ができない。それだけ。
多分、レイルもそれは承知の上で、謝らずにはいられなかったのだろう。ミアの求めるような答えを持たない自分に負い目を感じている、そんな顔をしている。
お互い様だ、とミアは思う。自分だって、これから戦いに赴こうとしているレイルに、そんな顔をさせたいわけではないのだ。本当に、レイルは優しすぎるのだ、と思わずにはいられない。そう、つい『どうすればミアが喜んでくれるのか』に想像を及ばせてしまう程度には、優しいひと。
ミアは深呼吸ひとつ、背を丸めてしょぼくれた顔をするレイルの背中をどんと叩く。「わ」と声をあげるレイルを見上げて、腰に手を当てる。
「もう、しっかりしてよ。死ぬ気はないし、あたしたちのこと、助けてくれるんでしょ? なら、お互いにやれることは全部やってみよ! ぎりぎりまで、足掻かないと」
「……うん。そうだな」
レイルも、ミアの言葉に顔を上げる。その時、レイルが携えている通信端末が音を立てて鳴った。レイルは通信端末を耳に当て、二、三言言葉を交わした後に通信を切る仕草をした。
「誰から?」
「ネグロさん。『スリーピング・レイル』のアセンブルについて、相談したいことがあって、ここに来るって。ミアさんも、一緒にいてくれると、嬉しい」
「もちろん」
ここしばらくでレイルも随分知識をつけてきたし、兵装について一人で考えることも増えてきたが、『スリーピング・レイル』に手を加える時には必ずミアの同席を求める。多分、レイルの中でミアはあくまで『スリーピング・レイル』の整備士ということなのだろう。
それは素直に嬉しく思うし、その一方で少しだけ不安に思う。
いつか、レイルが自分を必要としなくなる日が来るのかもしれない、と。
いつか、レイルにとって自分は「守るべきもの」というだけの存在になってしまうのではないか、と。
それは嫌だな、と思いながら、ミアはレイルを見上げる。
レイルは、これから大きな戦いが待っているとも思えない、酷く凪いだ顔でそこに立っていて。そこに、何らかの感情を読み取ることは、ミアにはできなかった。
【Scene:0008 戦いの前に】
◆7回更新の日記ログ
『希望も未来も自らの手で絶って。今や、その傷跡だけがお前を物語る』
* * *
スリーピング・レイルは、グレムリン『スリーピング・レイル』の座席に膝を抱えて座っていた。
シミュレーターを用いた訓練を一通りこなして、それが昨日より少しだけよい成績を収めていることを確かめて。そして、ぼんやりと、グレイヴネットから流れてくる情報に目と耳を傾けていた。
もっぱら話題に上がっているのは、巨大未識別と呼ばれる存在のこと。レイルはそれが一体どのようなものであるのか、想像できないままでいた。想像はできないけれど、グレイヴネットを飛び交う話を聞く限り、脅威であることは間違いないはずだ。ひたひたと迫る戦いの気配に、レイルは胸の内がざわつくのを感じていた。
そうでなくとも、未識別機動体というものについて考えると、いてもたってもいられない気分になる。暴走中の空データ。喪われたはずのものが今もなお、世界に再生され続けているということ。それが、レイルにはどうにも、居心地が悪くて仕方なかったのだった。
操縦棺の中にいる時だけは「声」が聞こえないから、目を閉じて、流れてくる情報からも己を切り離して思索の海に沈んでいく。失われてしまった記憶は、今もなお満たされることの欠落のままそこにある。
けれど、少しずつ。……ほんの少しずつ、ではあるけれど。欠け落ちたその場所に、何かが積み上がろうとしている。それは、「目を覚ました」時――己をスリーピング・レイルと定義した時から今に至るまでに積み重ねてきた記憶だ。
まだ、たやすく数えられてしまう程度のそれらを、ひとつずつ、ひとつずつ、頭の中で確かめながら、レイルは、目を開けると指を通信装置に伸ばし、チャンネルを、僚機に向けたそれに合わせる。
僚機のネグロが幽霊船に帰ってこなかった日から、それなりの時間が過ぎていた。僚機宛の通信はことごとく遮断され、行方を知ることもできない。幽霊船の艦長代理であるルインはさほど気にした風ではなくて、同じ幽霊船のテイマーであるツィールも、ことさら心配はしていないようだった。
当然だ。ネグロにはネグロの意志がある。偶然「僚機」となった程度の存在である自分が思い悩むようなことはない。仮にネグロが幽霊船を去るという選択をしたところで、自分に止める権利などありはしないのだ。
頭では理解している。理解しながらも、レイルは通信回線を開く。
耳障りなノイズの後には、通信が遮断されていることを示す無機質な合成音声が聞こえてくる――と、思われた。今までがそうであったように。
だが、今日は違った。ノイズが晴れて、モニターに浮かび上がる文字列が、ネグロの乗機『カズアーリオス』への通信の成功を示したのだ。
「ネグロさん」
レイルの声に、返事はなかった。だが、通信が切れることもない。故に、ネグロが聞いていると信じて、言葉を続ける。
「今、どこにいる? ネグロさんなら、ひとりでも、大丈夫かもしれないけど。それでも」
それでも。
レイルの脳裏によぎるのは、今までネグロがレイルに見せてきた横顔だ。レイルのことをあからさまに邪険にしながらも、僚機でいることはやめなかった、共に戦場に立っていたその人のありさまを、ひとつ、ひとつ、思い返しながら。
「僕は、心配している」
率直な思いを、伝える。
本当は、もっと色々と言いたいことがあるはずだった。ミアもネグロのことを心配していることを伝えたかったし、幽霊船を離れた理由を詳しく問いただしたいとも思った。けれど、まず、聞いておきたかったのは。
「ネグロさんは、無事で、いる?」
その一言、だけだった。
言葉を切れば、重たい沈黙が流れる。
操縦棺の中は静かで――それこそ、普段からレイルを苛んでいる「声」だって聞こえないのだから、本当に静かで、息が詰まりそうになる。どうすれば届くだろう。どうすれば。焦燥にも似た感覚に囚われたその時。
「……人の心配なんかしてる場合か?」
声が。聞こえた。
それは確かにネグロの声で、レイルは思わず身を乗り出す。そして、声は、レイルが返事をするよりも先にこう続けるのだ。
「俺に拘るのは何だ? 俺の心配だとか、守りたいだとか……そういう相手は、他にもっといるだろ」
レイルは、喉まで出かかっていた言葉を飲み込む。
拘る。なるほど、ネグロからはそう見えていたのか、と、自分自身を振り返ってみる。自分にとって、ネグロを心配して、守りたいと望むのは当たり前のことだった、けれど。ネグロの側に立ってみれば、不思議に思われても仕方ないかもしれない、と思い直す。
レイルだって、「自分のこと」について、何も語っていなかったのだから。
だから、レイルは言葉をひとつずつ拾い上げる。
「単純、かもしれないけど。でも、ネグロさんは、僕を見つけてくれたから」
ただでさえがらんとした、頭の中の空虚から、かろうじて拾い上げられるものを、ひとつずつ、ひとつずつ。
「僕は何も知らない。覚えてない。気付いたら、戦う力だけが手の中に、あって」
目が覚めたその時から。レイルを駆り立てていたのは「力があるから戦わなければならない」という思い、ただひとつだったのだと、思い返す。
だが、それは――。
「本当は、心細くて仕方ない」
レイル自身の「思い」とは、また別なのだ。
「だって、何もわからないんだ。わからないまま、ただ、ただ、目の前のものを守るために、がむしゃらに戦うことしかできずにいる」
わからないと思いながらも、これ以上失うのは怖いから。そして、自分には何かを守る力があるから、戦っている。闇雲に。本当に守りたいものが何なのかも、わからないまま。
わからないままでは、あるけれど。
「……でも、ネグロさんは、僕に言葉をかけてくれる。僕を、見てくれる。一緒に戦ってくれる。それは、『何もわからない』という、僕の不安を払ってくれる」
そう、レイルにとって、ネグロとはそういう存在だ。
こちらを睨み、時に背を向け、向ける言葉が悪態であっても、ネグロは確かにレイルを僚機として扱っていた。誰かと共に戦うということを通して、レイルは自分の立ち位置を認識する。ネグロが背中合わせに立っているから、レイルは自分を見失わずにいられる。
「だから、僕はネグロさんに報いたいと思っている。それは、おかしいこと、だろうか」
「……買い被りすぎだ。俺はお前から……いや、何もかもから目を背けてきた。戦闘は、生きる為に効率がよけりゃ、なんでもよかった。それだけだ」
通信機越しのネグロの声は、酷く掠れていた。
ネグロの思いを、レイルは知らない。彼を突き動かしているのが、何もかもを燃やし尽くさんばかりの怒りであったということくらい。ただ、今、聞こえてくる声の響きは、いつになく脆さを孕んでいるように聞こえた。
今はまだ、その理由はわからない。わからないまま、それでも、思いを伝える。
「それだけ、でも、いい。それだけでも、僕は、ネグロさんに、救われている」
ネグロは黙った。微かに空気を揺らす、ノイズ。
けれど、それはあくまで一瞬のことで、一拍の後にネグロが唸るような声で言う。
「……死ぬつもりはない、ってのは、変わらないのか。相手が、どんな相手でも」
その問いに対しては、すぐに答えることができた。
「死んでしまったら、何も守れないから。……死ぬつもりは、ない」
レイルの戦い方は率先して己を危険に晒すことで人を守るというもの。命知らずのように見えるかもしれないが、レイルは「死ぬつもりはない」のだ。己の命にどれだけの価値があるかなど知ったことではないが、その命ひとつで守れるものが増えるなら、それを失うわけには、いかないと思いながら戦場に立っている。
そして、それは、誰が相手でも変わらない。
変わらない、のだ。
通信機の向こうで、ネグロは深く息をついた。そして、先ほどよりも幾分かはっきりとした声で、語りだす。
「巨大未識別の話は、聞いてるな」
レイルは「ああ」と頷く。グレイヴネットを通じて伝わってくる、戦いの気配。放置すれば何もかもを蹂躙するであろう、新たな脅威。
「本当なら、一人でやるつもりだった……あのデカブツを放ってはおけねえ」
無茶だ、と言いかけて、口を噤む。仮に自分が一人でいて、巨大未識別が迫っていると聞かされたとしたら。きっと、迷うことなく『スリーピング・レイル』を駆っていただろうから。
そして、一人で無茶なものが、果たして二人になったところでどれだけ変わるというのか。それは、レイルよりネグロの方がよっぽど承知しているはずだ。
「ただでは済まない可能性がある。それでも……」
それでも。
「勝手な事を言ってるのはわかってる。手を貸してくれ」
ネグロは、真っ直ぐに、言葉を投げかけてくるのだ。
ならば、レイルの答えは一つだ。
「もちろん」
今ここで、ネグロに報いなくてどうするというのか。
「僕は死なない。ネグロさんも死なせない。そのつもりで戦うと、約束する」
レイルの返答に、ネグロはすぐには言葉を返してこなかった。ただ、数拍の間をおいて。レイルに向けてというよりかは、己自身に語り掛けるような響きで。
「俺も、本当は……守りたかった……んだろうな」
そう、呟いたのだった。
【Scene:0007 対話】
* * *
スリーピング・レイルは、グレムリン『スリーピング・レイル』の座席に膝を抱えて座っていた。
シミュレーターを用いた訓練を一通りこなして、それが昨日より少しだけよい成績を収めていることを確かめて。そして、ぼんやりと、グレイヴネットから流れてくる情報に目と耳を傾けていた。
もっぱら話題に上がっているのは、巨大未識別と呼ばれる存在のこと。レイルはそれが一体どのようなものであるのか、想像できないままでいた。想像はできないけれど、グレイヴネットを飛び交う話を聞く限り、脅威であることは間違いないはずだ。ひたひたと迫る戦いの気配に、レイルは胸の内がざわつくのを感じていた。
そうでなくとも、未識別機動体というものについて考えると、いてもたってもいられない気分になる。暴走中の空データ。喪われたはずのものが今もなお、世界に再生され続けているということ。それが、レイルにはどうにも、居心地が悪くて仕方なかったのだった。
操縦棺の中にいる時だけは「声」が聞こえないから、目を閉じて、流れてくる情報からも己を切り離して思索の海に沈んでいく。失われてしまった記憶は、今もなお満たされることの欠落のままそこにある。
けれど、少しずつ。……ほんの少しずつ、ではあるけれど。欠け落ちたその場所に、何かが積み上がろうとしている。それは、「目を覚ました」時――己をスリーピング・レイルと定義した時から今に至るまでに積み重ねてきた記憶だ。
まだ、たやすく数えられてしまう程度のそれらを、ひとつずつ、ひとつずつ、頭の中で確かめながら、レイルは、目を開けると指を通信装置に伸ばし、チャンネルを、僚機に向けたそれに合わせる。
僚機のネグロが幽霊船に帰ってこなかった日から、それなりの時間が過ぎていた。僚機宛の通信はことごとく遮断され、行方を知ることもできない。幽霊船の艦長代理であるルインはさほど気にした風ではなくて、同じ幽霊船のテイマーであるツィールも、ことさら心配はしていないようだった。
当然だ。ネグロにはネグロの意志がある。偶然「僚機」となった程度の存在である自分が思い悩むようなことはない。仮にネグロが幽霊船を去るという選択をしたところで、自分に止める権利などありはしないのだ。
頭では理解している。理解しながらも、レイルは通信回線を開く。
耳障りなノイズの後には、通信が遮断されていることを示す無機質な合成音声が聞こえてくる――と、思われた。今までがそうであったように。
だが、今日は違った。ノイズが晴れて、モニターに浮かび上がる文字列が、ネグロの乗機『カズアーリオス』への通信の成功を示したのだ。
「ネグロさん」
レイルの声に、返事はなかった。だが、通信が切れることもない。故に、ネグロが聞いていると信じて、言葉を続ける。
「今、どこにいる? ネグロさんなら、ひとりでも、大丈夫かもしれないけど。それでも」
それでも。
レイルの脳裏によぎるのは、今までネグロがレイルに見せてきた横顔だ。レイルのことをあからさまに邪険にしながらも、僚機でいることはやめなかった、共に戦場に立っていたその人のありさまを、ひとつ、ひとつ、思い返しながら。
「僕は、心配している」
率直な思いを、伝える。
本当は、もっと色々と言いたいことがあるはずだった。ミアもネグロのことを心配していることを伝えたかったし、幽霊船を離れた理由を詳しく問いただしたいとも思った。けれど、まず、聞いておきたかったのは。
「ネグロさんは、無事で、いる?」
その一言、だけだった。
言葉を切れば、重たい沈黙が流れる。
操縦棺の中は静かで――それこそ、普段からレイルを苛んでいる「声」だって聞こえないのだから、本当に静かで、息が詰まりそうになる。どうすれば届くだろう。どうすれば。焦燥にも似た感覚に囚われたその時。
「……人の心配なんかしてる場合か?」
声が。聞こえた。
それは確かにネグロの声で、レイルは思わず身を乗り出す。そして、声は、レイルが返事をするよりも先にこう続けるのだ。
「俺に拘るのは何だ? 俺の心配だとか、守りたいだとか……そういう相手は、他にもっといるだろ」
レイルは、喉まで出かかっていた言葉を飲み込む。
拘る。なるほど、ネグロからはそう見えていたのか、と、自分自身を振り返ってみる。自分にとって、ネグロを心配して、守りたいと望むのは当たり前のことだった、けれど。ネグロの側に立ってみれば、不思議に思われても仕方ないかもしれない、と思い直す。
レイルだって、「自分のこと」について、何も語っていなかったのだから。
だから、レイルは言葉をひとつずつ拾い上げる。
「単純、かもしれないけど。でも、ネグロさんは、僕を見つけてくれたから」
ただでさえがらんとした、頭の中の空虚から、かろうじて拾い上げられるものを、ひとつずつ、ひとつずつ。
「僕は何も知らない。覚えてない。気付いたら、戦う力だけが手の中に、あって」
目が覚めたその時から。レイルを駆り立てていたのは「力があるから戦わなければならない」という思い、ただひとつだったのだと、思い返す。
だが、それは――。
「本当は、心細くて仕方ない」
レイル自身の「思い」とは、また別なのだ。
「だって、何もわからないんだ。わからないまま、ただ、ただ、目の前のものを守るために、がむしゃらに戦うことしかできずにいる」
わからないと思いながらも、これ以上失うのは怖いから。そして、自分には何かを守る力があるから、戦っている。闇雲に。本当に守りたいものが何なのかも、わからないまま。
わからないままでは、あるけれど。
「……でも、ネグロさんは、僕に言葉をかけてくれる。僕を、見てくれる。一緒に戦ってくれる。それは、『何もわからない』という、僕の不安を払ってくれる」
そう、レイルにとって、ネグロとはそういう存在だ。
こちらを睨み、時に背を向け、向ける言葉が悪態であっても、ネグロは確かにレイルを僚機として扱っていた。誰かと共に戦うということを通して、レイルは自分の立ち位置を認識する。ネグロが背中合わせに立っているから、レイルは自分を見失わずにいられる。
「だから、僕はネグロさんに報いたいと思っている。それは、おかしいこと、だろうか」
「……買い被りすぎだ。俺はお前から……いや、何もかもから目を背けてきた。戦闘は、生きる為に効率がよけりゃ、なんでもよかった。それだけだ」
通信機越しのネグロの声は、酷く掠れていた。
ネグロの思いを、レイルは知らない。彼を突き動かしているのが、何もかもを燃やし尽くさんばかりの怒りであったということくらい。ただ、今、聞こえてくる声の響きは、いつになく脆さを孕んでいるように聞こえた。
今はまだ、その理由はわからない。わからないまま、それでも、思いを伝える。
「それだけ、でも、いい。それだけでも、僕は、ネグロさんに、救われている」
ネグロは黙った。微かに空気を揺らす、ノイズ。
けれど、それはあくまで一瞬のことで、一拍の後にネグロが唸るような声で言う。
「……死ぬつもりはない、ってのは、変わらないのか。相手が、どんな相手でも」
その問いに対しては、すぐに答えることができた。
「死んでしまったら、何も守れないから。……死ぬつもりは、ない」
レイルの戦い方は率先して己を危険に晒すことで人を守るというもの。命知らずのように見えるかもしれないが、レイルは「死ぬつもりはない」のだ。己の命にどれだけの価値があるかなど知ったことではないが、その命ひとつで守れるものが増えるなら、それを失うわけには、いかないと思いながら戦場に立っている。
そして、それは、誰が相手でも変わらない。
変わらない、のだ。
通信機の向こうで、ネグロは深く息をついた。そして、先ほどよりも幾分かはっきりとした声で、語りだす。
「巨大未識別の話は、聞いてるな」
レイルは「ああ」と頷く。グレイヴネットを通じて伝わってくる、戦いの気配。放置すれば何もかもを蹂躙するであろう、新たな脅威。
「本当なら、一人でやるつもりだった……あのデカブツを放ってはおけねえ」
無茶だ、と言いかけて、口を噤む。仮に自分が一人でいて、巨大未識別が迫っていると聞かされたとしたら。きっと、迷うことなく『スリーピング・レイル』を駆っていただろうから。
そして、一人で無茶なものが、果たして二人になったところでどれだけ変わるというのか。それは、レイルよりネグロの方がよっぽど承知しているはずだ。
「ただでは済まない可能性がある。それでも……」
それでも。
「勝手な事を言ってるのはわかってる。手を貸してくれ」
ネグロは、真っ直ぐに、言葉を投げかけてくるのだ。
ならば、レイルの答えは一つだ。
「もちろん」
今ここで、ネグロに報いなくてどうするというのか。
「僕は死なない。ネグロさんも死なせない。そのつもりで戦うと、約束する」
レイルの返答に、ネグロはすぐには言葉を返してこなかった。ただ、数拍の間をおいて。レイルに向けてというよりかは、己自身に語り掛けるような響きで。
「俺も、本当は……守りたかった……んだろうな」
そう、呟いたのだった。
【Scene:0007 対話】
◆6回更新の日記ログ
『希望も未来も自らの手で絶って。今や、その傷跡だけがお前を物語る』
* * *
――レイルが、起きてこない。
それは珍しいことだった。基本的にスリーピング・レイルは、ミアよりも大体先に起きていて、隣の部屋で筋力トレーニングに励んでいる。肉体の強度はグレムリンの操縦にはほとんど関係しないはずだが、それを指摘するとレイルは恥ずかしそうに答えたものだった。
『鍛えてないと、落ち着かなくて』
何故そこで恥じらったのか、ミアにはさっぱりわからない。
ともあれ、今日だっていつもの通りだと思っていたのだ。
しかし、隣の部屋の扉をノックしても、レイルからの返事はなく。ノブを捻ってみればあっけなく扉が開き……、レイルの姿はどこにも見当たらなかった。
「……レイル?」
ミアの胸の中に、にわかに不安が広がる。
レイルが何も言わずにいなくなる、などということはありえない。その程度にはスリーピング・レイルという男のことを信用している。
ただ、その一方で、レイルと過ごす日が増えるにつれ、どこか不安に思うことも増えていたのだ。
レイル本人は気づいていないのかもしれないが、グレムリンに乗っていないときのレイルは、極めてぼんやりしていて、時折人の話をまともに聞いていないことがある。立ったまま意識を飛ばしていることすらある。その兆候は、日が経過するにつれ加速しているように思えていたのだった。
だから、朦朧とした意識のまま、幽霊船の奥底に迷い込んでしまいでもしたのではないかと。そんな可能性すら、脳裏によぎる。この船は、不思議なことにいつも同じ形をしているとは限らない。一応、艦長代理のルインがある程度構造は把握しているようだが、それでも「全て」ではないというから、そのような場所に迷い込んだら探し出せるかもわからないのだ。
――探さなきゃ。
ミアは慌ててレイルの部屋を飛び出す。しかし、探すにしてもどこを探せばいいのか、さっぱり見当がつかないため、まずは「レイルが行きそうな場所」に足を運んでみることにする。
具体的には、グレムリン『スリーピング・レイル』が待つ、格納庫だ。
* * *
格納庫に足を踏み入れると、すぐに違和感に気づく。
いつもならば奥の方で羽を休めているはずの『スリーピング・レイル』が、手前に動かされている。レイルが一人で整備しているのか、と思ったが、そういうわけではなさそうで、周囲に人の気配はない。
ミアは『スリーピング・レイル』の前まで歩み寄ると、声をかける。
「おはよう、『スリーピング・レイル』」
ミアの声に反応して、『スリーピング・レイル』に取り付けられたライトが淡く点滅する。どうも、『スリーピング・レイル』は直接の操作だけでなく、音声での入力にも対応しているらしい。そして、何故か、乗り手のレイルだけでなく、ミアの声にも反応する。整備の時に楽でいい、と思っているが、どうしてそのような仕様になっているのかはミアにもわからないままである。
ともあれ、『スリーピング・レイル』が反応を示したということは、特に機体には異常がないようでほっとする。そのまま、ミアは自然と質問を投げかけていた。
「レイルがどこにいるか、わかる?」
言ってしまってから、少し笑ってしまう。相手はグレムリンだ、あくまで命令に従うだけで、こちらの質問に答えるなどという機能は搭載されてはいないだろう。ましてや、乗り手であるレイルがどこにいるのか、なんて――。
しかし、『スリーピング・レイル』はミアの声に応えるように、わずかに軋むような音を立てて動き出す。驚きに目を見開くミアの前にひざまずくような姿勢になり、ミアの目の前まで操縦棺が下りてくる。
やがて、空気の抜けるような音と共に、操縦棺が開かれる。
「レイル……」
一般的なグレムリンよりも少し広めに設計された操縦棺。その座席の上に、レイルがいた。倒した座席に横たわり、膝を抱えて。どうやら、眠っている、ようだった。
ミアは操縦棺に乗り込むと、レイルの顔を覗き込む。ミアの接近にも気づかないほどの、深い眠り。そういえば、今までも短い時間意識を失っていることはあったが、「眠っている」レイルを見るのはこれが初めてであると、気づく。
ミアは、小声でレイルの名を呼びながら、レイルの首元に手を伸ばす。フィルタースーツを着ている時以外は常に首に巻いているマフラーが、緩んでいるのがわかったからだ。
マフラーの下には、傷跡がある。べったりと肌の上に張り付いた痕跡は、紐状の何かが強く喉に食い込んだことを示すもの。
初めてミアがその傷を目にしたとき、レイルは「いつ、ついたものかはわからない」、と言っていた。少なくとも、記憶を失うよりは前についた傷であるらしい。ただ、傷の形から考えても、よい記憶と結びついているとは到底思えなくて、レイルもミアもそれ以上の言及をやめて、マフラーの下に隠すことで話題にすることを避けていた。そんな傷跡だ。
マフラーを被せて、傷跡が見えなくなる。それで、少しだけほっとする。その時、触れられたことに気づいたのか、レイルがわずかに身じろぎして、うっすらと目を開けた。虚ろな茶色の目が、しばしミアの顔の辺りを眺めて。
「あ……、おはよう、ミアさん」
低い声が、レイルの薄い唇から漏れる。その、いたって呑気な調子にミアは「おはよう、ねぼすけさん」と深々溜息をつく。朝から心配して損をした気分だった。
レイルはゆるゆると上体を起こし、首元に巻いたマフラーを整える。
「寝過ごしてしまった、かな」
「別に、遅いってわけじゃないけど。でも、部屋にいなくて心配したんだからね」
ぷく、と頬を膨らませるミアに対し、レイルは「ごめんなさい」と肩を縮めてみせる。
「どうして、こんなところで寝てたの?」
言いながら、ミアは改めて操縦棺を見渡す。いくら他のグレムリンより余裕のある作りとはいえ、酷く狭く、息苦しさを感じさせる空間。戦闘に赴くならともかく、なんでもないときにいるような場所ではない……、と、ミアは思わずにはいられない。
だが、レイルはぼさぼさの白髪に指を通しながら、ぽつぽつと言うのだ。
「ここなら、静かだから」
「……静か?」
「今まで、眠れなかったんだ、ずっと」
起きている間、どこか朦朧としている様子だったのは、満足に眠れていなかったからなのか。ミアは納得すると同時に、もう一度頬を膨らませずにはいられない。
「なんで言ってくれなかったの」
「言ったら、ミアさんは心配するかなって……」
「言わなかったらもっと不安になるの! 最近ずっとふらふらしてて、どうしたんだろうって思ってたんだから!」
「そっか。そうだな。ごめんなさい」
レイルが心底申し訳なさそうな面持ちで頭を下げるものだから、ミアは背中がくすぐったくなるような気持ちになる。これではどっちが大人なのかさっぱりわからない。
「だけど、もう、大丈夫。ここなら眠れるって、わかったから。ミアさんにも、これ以上心配かけずに済む」
ぽんぽんと、レイルの無骨な手が座席を叩く。薄闇の中、計器がうっすらと淡い光を放つ、操縦棺。ミアは、露骨に苦い顔になりながらレイルを見やる。
「ずっと、操縦棺で寝るつもり?」
「……? うん、そうだけど」
どうしてそんなことを聞くのだろう、とばかりのレイルの態度に、頭が痛くなる。
「きちんとベッドで寝た方がいいと思うんだけど」
「そうかもしれないけど、ここじゃないと、声が、うるさくて」
「……声?」
先ほども「静か」と言っていた。それは、幽霊船の揺られる音が部屋まで響いている……、という程度の話かと思っていただけに、「声」という単語には眉根を寄せずにはいられない。
「声って、何?」
「ミアさんは、笑わない?」
「言わないとわかんないよ」
それもそうか、とレイルはわずかに口の端を歪めて、それから言った。
「目を閉じると、声が聞こえるんだ。色んな、声。男の人の声もするし、女の人の声もする。誰も彼もが好き勝手に喋っていて、僕はそれを聞いていることしかできない。ほとんどはよく聞こえなくて、ただ『声がする』って思うんだけど、時々はっきりと聞こえることも、あって」
「レイル……?」
「グレムリンの話、とか。この海域で誰それが死んだ、とか。負傷者を数え上げる声、とか。あと、そう、悲鳴が聞こえて、痛くて苦しくて助けてって、死にたくないって、でも僕は誰も助けられなくて」
「レイル!」
ミアはレイルの肩を掴んで強く揺さぶる。それでレイルは我に返ったかのように、ぱちりと髪に隠れていない側の目を瞬かせる。それから、強張っていた表情を緩めて、言った。
「……そんな声が、聞こえるんだ」
「うん、わかった。わかったよ」
わかった? そんなのは嘘だ。ミアは唇を噛む。辛そうなレイルを見ていられなかっただけだ。ただ、常日頃からレイルがミアには理解できない何らかの現象に悩まされていることだけは、伝わった。
「その声が、操縦棺にいるときだけは、静かになる、から」
ゆっくりと眠れるのだ、と。レイルはうっすらと目を細めてみせる。
「だから、心配しないで、ミアさん」
「それは」
――どう考えても、無理だなあ……。
言葉にならないミアの戸惑いを正しく受け止めたのだろう、レイルも困ったように首を傾げたのであった。
【Scene:0006 目を閉じれば、声】
* * *
――レイルが、起きてこない。
それは珍しいことだった。基本的にスリーピング・レイルは、ミアよりも大体先に起きていて、隣の部屋で筋力トレーニングに励んでいる。肉体の強度はグレムリンの操縦にはほとんど関係しないはずだが、それを指摘するとレイルは恥ずかしそうに答えたものだった。
『鍛えてないと、落ち着かなくて』
何故そこで恥じらったのか、ミアにはさっぱりわからない。
ともあれ、今日だっていつもの通りだと思っていたのだ。
しかし、隣の部屋の扉をノックしても、レイルからの返事はなく。ノブを捻ってみればあっけなく扉が開き……、レイルの姿はどこにも見当たらなかった。
「……レイル?」
ミアの胸の中に、にわかに不安が広がる。
レイルが何も言わずにいなくなる、などということはありえない。その程度にはスリーピング・レイルという男のことを信用している。
ただ、その一方で、レイルと過ごす日が増えるにつれ、どこか不安に思うことも増えていたのだ。
レイル本人は気づいていないのかもしれないが、グレムリンに乗っていないときのレイルは、極めてぼんやりしていて、時折人の話をまともに聞いていないことがある。立ったまま意識を飛ばしていることすらある。その兆候は、日が経過するにつれ加速しているように思えていたのだった。
だから、朦朧とした意識のまま、幽霊船の奥底に迷い込んでしまいでもしたのではないかと。そんな可能性すら、脳裏によぎる。この船は、不思議なことにいつも同じ形をしているとは限らない。一応、艦長代理のルインがある程度構造は把握しているようだが、それでも「全て」ではないというから、そのような場所に迷い込んだら探し出せるかもわからないのだ。
――探さなきゃ。
ミアは慌ててレイルの部屋を飛び出す。しかし、探すにしてもどこを探せばいいのか、さっぱり見当がつかないため、まずは「レイルが行きそうな場所」に足を運んでみることにする。
具体的には、グレムリン『スリーピング・レイル』が待つ、格納庫だ。
* * *
格納庫に足を踏み入れると、すぐに違和感に気づく。
いつもならば奥の方で羽を休めているはずの『スリーピング・レイル』が、手前に動かされている。レイルが一人で整備しているのか、と思ったが、そういうわけではなさそうで、周囲に人の気配はない。
ミアは『スリーピング・レイル』の前まで歩み寄ると、声をかける。
「おはよう、『スリーピング・レイル』」
ミアの声に反応して、『スリーピング・レイル』に取り付けられたライトが淡く点滅する。どうも、『スリーピング・レイル』は直接の操作だけでなく、音声での入力にも対応しているらしい。そして、何故か、乗り手のレイルだけでなく、ミアの声にも反応する。整備の時に楽でいい、と思っているが、どうしてそのような仕様になっているのかはミアにもわからないままである。
ともあれ、『スリーピング・レイル』が反応を示したということは、特に機体には異常がないようでほっとする。そのまま、ミアは自然と質問を投げかけていた。
「レイルがどこにいるか、わかる?」
言ってしまってから、少し笑ってしまう。相手はグレムリンだ、あくまで命令に従うだけで、こちらの質問に答えるなどという機能は搭載されてはいないだろう。ましてや、乗り手であるレイルがどこにいるのか、なんて――。
しかし、『スリーピング・レイル』はミアの声に応えるように、わずかに軋むような音を立てて動き出す。驚きに目を見開くミアの前にひざまずくような姿勢になり、ミアの目の前まで操縦棺が下りてくる。
やがて、空気の抜けるような音と共に、操縦棺が開かれる。
「レイル……」
一般的なグレムリンよりも少し広めに設計された操縦棺。その座席の上に、レイルがいた。倒した座席に横たわり、膝を抱えて。どうやら、眠っている、ようだった。
ミアは操縦棺に乗り込むと、レイルの顔を覗き込む。ミアの接近にも気づかないほどの、深い眠り。そういえば、今までも短い時間意識を失っていることはあったが、「眠っている」レイルを見るのはこれが初めてであると、気づく。
ミアは、小声でレイルの名を呼びながら、レイルの首元に手を伸ばす。フィルタースーツを着ている時以外は常に首に巻いているマフラーが、緩んでいるのがわかったからだ。
マフラーの下には、傷跡がある。べったりと肌の上に張り付いた痕跡は、紐状の何かが強く喉に食い込んだことを示すもの。
初めてミアがその傷を目にしたとき、レイルは「いつ、ついたものかはわからない」、と言っていた。少なくとも、記憶を失うよりは前についた傷であるらしい。ただ、傷の形から考えても、よい記憶と結びついているとは到底思えなくて、レイルもミアもそれ以上の言及をやめて、マフラーの下に隠すことで話題にすることを避けていた。そんな傷跡だ。
マフラーを被せて、傷跡が見えなくなる。それで、少しだけほっとする。その時、触れられたことに気づいたのか、レイルがわずかに身じろぎして、うっすらと目を開けた。虚ろな茶色の目が、しばしミアの顔の辺りを眺めて。
「あ……、おはよう、ミアさん」
低い声が、レイルの薄い唇から漏れる。その、いたって呑気な調子にミアは「おはよう、ねぼすけさん」と深々溜息をつく。朝から心配して損をした気分だった。
レイルはゆるゆると上体を起こし、首元に巻いたマフラーを整える。
「寝過ごしてしまった、かな」
「別に、遅いってわけじゃないけど。でも、部屋にいなくて心配したんだからね」
ぷく、と頬を膨らませるミアに対し、レイルは「ごめんなさい」と肩を縮めてみせる。
「どうして、こんなところで寝てたの?」
言いながら、ミアは改めて操縦棺を見渡す。いくら他のグレムリンより余裕のある作りとはいえ、酷く狭く、息苦しさを感じさせる空間。戦闘に赴くならともかく、なんでもないときにいるような場所ではない……、と、ミアは思わずにはいられない。
だが、レイルはぼさぼさの白髪に指を通しながら、ぽつぽつと言うのだ。
「ここなら、静かだから」
「……静か?」
「今まで、眠れなかったんだ、ずっと」
起きている間、どこか朦朧としている様子だったのは、満足に眠れていなかったからなのか。ミアは納得すると同時に、もう一度頬を膨らませずにはいられない。
「なんで言ってくれなかったの」
「言ったら、ミアさんは心配するかなって……」
「言わなかったらもっと不安になるの! 最近ずっとふらふらしてて、どうしたんだろうって思ってたんだから!」
「そっか。そうだな。ごめんなさい」
レイルが心底申し訳なさそうな面持ちで頭を下げるものだから、ミアは背中がくすぐったくなるような気持ちになる。これではどっちが大人なのかさっぱりわからない。
「だけど、もう、大丈夫。ここなら眠れるって、わかったから。ミアさんにも、これ以上心配かけずに済む」
ぽんぽんと、レイルの無骨な手が座席を叩く。薄闇の中、計器がうっすらと淡い光を放つ、操縦棺。ミアは、露骨に苦い顔になりながらレイルを見やる。
「ずっと、操縦棺で寝るつもり?」
「……? うん、そうだけど」
どうしてそんなことを聞くのだろう、とばかりのレイルの態度に、頭が痛くなる。
「きちんとベッドで寝た方がいいと思うんだけど」
「そうかもしれないけど、ここじゃないと、声が、うるさくて」
「……声?」
先ほども「静か」と言っていた。それは、幽霊船の揺られる音が部屋まで響いている……、という程度の話かと思っていただけに、「声」という単語には眉根を寄せずにはいられない。
「声って、何?」
「ミアさんは、笑わない?」
「言わないとわかんないよ」
それもそうか、とレイルはわずかに口の端を歪めて、それから言った。
「目を閉じると、声が聞こえるんだ。色んな、声。男の人の声もするし、女の人の声もする。誰も彼もが好き勝手に喋っていて、僕はそれを聞いていることしかできない。ほとんどはよく聞こえなくて、ただ『声がする』って思うんだけど、時々はっきりと聞こえることも、あって」
「レイル……?」
「グレムリンの話、とか。この海域で誰それが死んだ、とか。負傷者を数え上げる声、とか。あと、そう、悲鳴が聞こえて、痛くて苦しくて助けてって、死にたくないって、でも僕は誰も助けられなくて」
「レイル!」
ミアはレイルの肩を掴んで強く揺さぶる。それでレイルは我に返ったかのように、ぱちりと髪に隠れていない側の目を瞬かせる。それから、強張っていた表情を緩めて、言った。
「……そんな声が、聞こえるんだ」
「うん、わかった。わかったよ」
わかった? そんなのは嘘だ。ミアは唇を噛む。辛そうなレイルを見ていられなかっただけだ。ただ、常日頃からレイルがミアには理解できない何らかの現象に悩まされていることだけは、伝わった。
「その声が、操縦棺にいるときだけは、静かになる、から」
ゆっくりと眠れるのだ、と。レイルはうっすらと目を細めてみせる。
「だから、心配しないで、ミアさん」
「それは」
――どう考えても、無理だなあ……。
言葉にならないミアの戸惑いを正しく受け止めたのだろう、レイルも困ったように首を傾げたのであった。
【Scene:0006 目を閉じれば、声】
◆5回更新の日記ログ
『希望も未来も自らの手で絶って。今や、その傷跡だけがお前を物語る』
* * *
――眠れない。
スリーピング・レイルは、その名に反して眠れぬ夜を過ごしていた。
廃工場で「目覚めた」とき。それがレイルの最初の記憶になるが、それ以来まともに眠れた日はなかった。体が限界を訴えて「落ちる」ことはあるけれど、まとまった睡眠を取るということができずにいた。
とはいえ、そんなことをミアやルインたちにわざわざ伝える気にもなれなくて、レイルは今日も寝台の上でぼんやりと暗い天井を眺めていた。瞼を閉じてみても、ざわざわとした心地がして上手く眠れない。頭の中に、いくつもの声が浮かんでは沈み、レイルが眠るのを許してくれないのだ。
だから、こうして夜をやり過ごすことしかできずにいた、のだが。
レイルは寝台の上に体を起こすと、懐中電灯を持って部屋を出た。どうせ眠れないのだから、今夜は適当に歩いてみようと思ったのだ。そうしたところで眠れるわけではなかったけれど。それでも、少しは気分が変わるのではないか、と思ったのだった。
他の乗員の眠りを妨げないように、足音を殺して歩いていく。幽霊船の夜は、船のあちこちに張り巡らされた管を通る空気やら何やらの音で、意外とにぎやかだ。これも、夜、船の中を歩いてみなければわからないことではあった。
日々眠れぬ夜を過ごしているからだろう、足取りは重く、片目だけの視界もどこか曖昧だ。こんな毎日を続けていたら、早晩どこかが壊れてしまうだろうな、とレイルは内心苦笑する。人間の体に「壊れる」という言葉はふさわしくないかもしれないが、何となく、自分にはその言葉がしっくり来る、ような気がした。
今宵、レイルの足は、自然とグレムリンの格納庫に向かっていた。
いっそ、グレムリンで夜の海を駆けたら気分が晴れるだろうか?
実際にそんなことを考えたわけでもないはずなのだが、引き寄せられるように、レイルは船を深く深く下りていく。
やがて、グレムリンたちが眠る場所にたどり着こう、としていたその時、行く手に明かりがついていることに気づく。
――誰か、いるのか?
疑問符を浮かべながら、ちいさな明かりに照らされた通路を歩いていき、格納庫の扉をそっと開ける。
すると、ライトに照らされた二足歩行のグレムリンの姿がまず目に飛び込んできた。引き出されているのは僚機である『カズアーリオス』だ、と判断するのと同時に、その足元に立っていた人物と目が合った。
「ネグロ、さん」
こんばんは、と挨拶するも、ネグロは一瞬こちらを睨めつけた後に露骨に視線を逸らす。相手をする気がない、という意思表示だ。
そもそも、僚機という関係性を結んではいるが、本当にそれは戦場に在るときだけの関係性で。今の今に至るまで、レイルはネグロと打ち解けることができないままでいる。それどころか、日々溝を深めているようなありさまだ。
『何のつもりだ。訳知り顔で言いやがって。お前が俺の何を知ってるってんだ』
『テメェの死ぬ理由に他人を使うのは勝手だが俺を巻き込むじゃねえよ。俺は死ぬつもりはない。たとえこの世が地獄だとしてもな』
『逃げねえっていうならせいぜい働くんだな。どうせ、戦場以外じゃ何も出来ねえんだからよ』
なるほど、言われていることはもっともなのかもしれない。レイルは妙に納得してしまったものだった。納得はしたが、それで自分の行動や思考を改められるかというと、また別の話だ。
戦いを嗜好しているわけではないのだが、その一方で自分に「戦わない」という選択肢があるとは思えないでいる。目の前に危機に瀕しているものや場所があって、戦う力があるならばそれらを守るために戦うべきだ――そう、レイルは考えずにはいられないのだった。
ミアからも「ただでさえ危険な戦い方をしてるんだから、無茶しないでよ」と散々言われているが、必要とあらば無茶をするだろうな、と他人事のように思っている。これではネグロから「死ぬ理由に他人を使う」と言われても反論できるはずもない。
そんな詮無きことを考えながら、レイルは『カズアーリオス』に歩み寄る。どうやら、『カズアーリオス』は整備中であったらしく、ところどころに足場がかけられ、パーツのいくつかが取り外されている。
ネグロには整備の心得があるようで、ここ最近はミアがことあるごとにネグロについて回る姿が見られるようになった。ミアにとって、ネグロの側で整備の様子を見ていることは、よい刺激なのだそうだ。
レイルには、グレムリンの仕組みはよくわかっていない。やっと最低限のアセンブルはこなせるようになったが、細かな調整はミアに任せきりだ。だからネグロの腕をレイルが推し量ることはできない、けれど。
「こんな時間まで、整備をしていたんだ」
これが、ネグロにとっての大事な「手続き」なのだろう、とは思う。
ネグロはこちらを見もしなければ整備の手を止めもしなかった。が、レイルが次の言葉を放つよりも先に、不意にレイルの意識の中に声が入り込んできた。
「……何だ、鬱陶しい」
それがネグロの声だと気付いたのは、一拍遅れてからだった。レイルは「ごめんなさい」と反射的に謝ってしまってから、ネグロの背を改めて見やる。
そういえば、声をかけても罵倒されないのは初めてだと気付く。だから、いつも言おうとして言えていなかったことを、言っておくことにした。
「いつも、ミアさんに、色々教えてくれてありがとう。僕も、とても、助かってる。それと」
それと。……常々、どこか噛み合わない言葉を交わしながら、ずっと思っていたこと。
「質問が、あるんだ」
ネグロはレイルには背を向けたまま作業を続けている。果たしてこの言葉も聞こえているかもわからない、が、レイルはそのまま言葉を続ける。
「ネグロさんは、本当は、テイマーじゃなくて、整備士だって、ミアさんから、聞いた」
すると、微かに、舌打ちの音が聞こえた。果たしてそれが、どのような感情から放たれたものなのか、レイルにはわからない。わからない、けれど。
「その時から、ずっと、気にかかっていたんだ。……ネグロさんは、どうして、グレムリンに乗って、戦いに身を投じているんだ?」
ネグロは答えない。だが、作業の手は既に止まっていた。
「ネグロさんは『お前が俺の何を知ってる』って言った。確かに、僕は何も知らない、けど。……ネグロさんが、戦いを好んでいるようには、どうしても、見えない」
――だって、いつだって、辛そうだ。
レイルは内心でそう付け加える。戦闘に赴く時、そして戦闘中に通信から漏れ聞こえるネグロの声に耳を傾ければ、それが、尋常な感情から出ているものではないことくらいは、レイルだって気付いている。
「だから、僕は、ネグロさんが戦う理由を、知りたい」
そこまでを語り終えたところで、ゆっくりと、ネグロがこちらを振り向いた。睨むように目を細め、眉を寄せてみせる。それでも、ネグロが真っ直ぐにこちらを見た、というそれだけでも、レイルにとっては十分であった。
「……知らないから知ろうって言うのか、殊勝な事だな」
ネグロの、低く唸るような声が、静かな格納庫に響く。
「――知りたきゃ教えてやる。生きる為に戦うんだ」
「生きる、為に」
レイルはネグロの言葉を鸚鵡返しにする。生きる為。この虚空領域は、ただ生きているだけでも難しい世界だ。生きるにも力が要るということはレイルにもわかる。必ずしも「戦う力」である必要はないかもしれないが、何らかの力が。
ただ、ネグロにとって、その力は――。
「俺は、俺の身体が動く限り、この世界を破壊しやがった全てを……俺がブチ壊してやるんだ……!」
あまりにも激しく燃え盛る「怒り」だった。
苛烈な感情に歪んだ表情で吐き捨てられた言葉に、レイルは何かに撃たれたような感覚に陥る。体を震わせ、ぎり、と歯を鳴らしたネグロは、再びレイルに背を向ける。
「……終わりだ。これ以上は何もねえ」
それきり、ネグロは口を噤んだ。何も無い、という言葉通りに。
レイルは、しばし、その場に立ち尽くす。整備を再開するのかと思われたネグロは、けれど、動こうとしない。音一つ聞こえない沈黙がそこにあった。
その重苦しい静寂を破ったのは、レイルの方だった。
「それが、ネグロさんにとって『生きる』ということなのか」
生きる為に、必要なこと。
「それだけ、ネグロさんの『世界』は、大切なものだったんだな」
レイルはかつての世界を知らない。それがネグロから見た世界であるなら、尚更。
だからこそ、思うのだ。
「僕はネグロさんと、もっと、一緒に居たい」
それは、言葉を交わしているうちに、レイルの中に生まれた望みだった。
「僕には無いものを、ネグロさんが持っていると思うから。僕には無いものを、守れたらいいと思うから」
――それは、例えば、『生きる』という意志だとか。
それがどのような形でも、今のレイルには得難いものであったから。
「終わりだって言ったのは、聞こえなかったのか?」
背を向いたままのネグロの声は、僅かに震えているように聞こえた。レイルはそこに含まれた感情を読み取ることはできない。ただ、これ以上話をする気はないという意志表示であることは、伝わった。
レイルはネグロの背に向けて、軽く頭を下げる。
「……おやすみ、ネグロさん」
【Scene:0005 眠れぬ夜】
* * *
――眠れない。
スリーピング・レイルは、その名に反して眠れぬ夜を過ごしていた。
廃工場で「目覚めた」とき。それがレイルの最初の記憶になるが、それ以来まともに眠れた日はなかった。体が限界を訴えて「落ちる」ことはあるけれど、まとまった睡眠を取るということができずにいた。
とはいえ、そんなことをミアやルインたちにわざわざ伝える気にもなれなくて、レイルは今日も寝台の上でぼんやりと暗い天井を眺めていた。瞼を閉じてみても、ざわざわとした心地がして上手く眠れない。頭の中に、いくつもの声が浮かんでは沈み、レイルが眠るのを許してくれないのだ。
だから、こうして夜をやり過ごすことしかできずにいた、のだが。
レイルは寝台の上に体を起こすと、懐中電灯を持って部屋を出た。どうせ眠れないのだから、今夜は適当に歩いてみようと思ったのだ。そうしたところで眠れるわけではなかったけれど。それでも、少しは気分が変わるのではないか、と思ったのだった。
他の乗員の眠りを妨げないように、足音を殺して歩いていく。幽霊船の夜は、船のあちこちに張り巡らされた管を通る空気やら何やらの音で、意外とにぎやかだ。これも、夜、船の中を歩いてみなければわからないことではあった。
日々眠れぬ夜を過ごしているからだろう、足取りは重く、片目だけの視界もどこか曖昧だ。こんな毎日を続けていたら、早晩どこかが壊れてしまうだろうな、とレイルは内心苦笑する。人間の体に「壊れる」という言葉はふさわしくないかもしれないが、何となく、自分にはその言葉がしっくり来る、ような気がした。
今宵、レイルの足は、自然とグレムリンの格納庫に向かっていた。
いっそ、グレムリンで夜の海を駆けたら気分が晴れるだろうか?
実際にそんなことを考えたわけでもないはずなのだが、引き寄せられるように、レイルは船を深く深く下りていく。
やがて、グレムリンたちが眠る場所にたどり着こう、としていたその時、行く手に明かりがついていることに気づく。
――誰か、いるのか?
疑問符を浮かべながら、ちいさな明かりに照らされた通路を歩いていき、格納庫の扉をそっと開ける。
すると、ライトに照らされた二足歩行のグレムリンの姿がまず目に飛び込んできた。引き出されているのは僚機である『カズアーリオス』だ、と判断するのと同時に、その足元に立っていた人物と目が合った。
「ネグロ、さん」
こんばんは、と挨拶するも、ネグロは一瞬こちらを睨めつけた後に露骨に視線を逸らす。相手をする気がない、という意思表示だ。
そもそも、僚機という関係性を結んではいるが、本当にそれは戦場に在るときだけの関係性で。今の今に至るまで、レイルはネグロと打ち解けることができないままでいる。それどころか、日々溝を深めているようなありさまだ。
『何のつもりだ。訳知り顔で言いやがって。お前が俺の何を知ってるってんだ』
『テメェの死ぬ理由に他人を使うのは勝手だが俺を巻き込むじゃねえよ。俺は死ぬつもりはない。たとえこの世が地獄だとしてもな』
『逃げねえっていうならせいぜい働くんだな。どうせ、戦場以外じゃ何も出来ねえんだからよ』
なるほど、言われていることはもっともなのかもしれない。レイルは妙に納得してしまったものだった。納得はしたが、それで自分の行動や思考を改められるかというと、また別の話だ。
戦いを嗜好しているわけではないのだが、その一方で自分に「戦わない」という選択肢があるとは思えないでいる。目の前に危機に瀕しているものや場所があって、戦う力があるならばそれらを守るために戦うべきだ――そう、レイルは考えずにはいられないのだった。
ミアからも「ただでさえ危険な戦い方をしてるんだから、無茶しないでよ」と散々言われているが、必要とあらば無茶をするだろうな、と他人事のように思っている。これではネグロから「死ぬ理由に他人を使う」と言われても反論できるはずもない。
そんな詮無きことを考えながら、レイルは『カズアーリオス』に歩み寄る。どうやら、『カズアーリオス』は整備中であったらしく、ところどころに足場がかけられ、パーツのいくつかが取り外されている。
ネグロには整備の心得があるようで、ここ最近はミアがことあるごとにネグロについて回る姿が見られるようになった。ミアにとって、ネグロの側で整備の様子を見ていることは、よい刺激なのだそうだ。
レイルには、グレムリンの仕組みはよくわかっていない。やっと最低限のアセンブルはこなせるようになったが、細かな調整はミアに任せきりだ。だからネグロの腕をレイルが推し量ることはできない、けれど。
「こんな時間まで、整備をしていたんだ」
これが、ネグロにとっての大事な「手続き」なのだろう、とは思う。
ネグロはこちらを見もしなければ整備の手を止めもしなかった。が、レイルが次の言葉を放つよりも先に、不意にレイルの意識の中に声が入り込んできた。
「……何だ、鬱陶しい」
それがネグロの声だと気付いたのは、一拍遅れてからだった。レイルは「ごめんなさい」と反射的に謝ってしまってから、ネグロの背を改めて見やる。
そういえば、声をかけても罵倒されないのは初めてだと気付く。だから、いつも言おうとして言えていなかったことを、言っておくことにした。
「いつも、ミアさんに、色々教えてくれてありがとう。僕も、とても、助かってる。それと」
それと。……常々、どこか噛み合わない言葉を交わしながら、ずっと思っていたこと。
「質問が、あるんだ」
ネグロはレイルには背を向けたまま作業を続けている。果たしてこの言葉も聞こえているかもわからない、が、レイルはそのまま言葉を続ける。
「ネグロさんは、本当は、テイマーじゃなくて、整備士だって、ミアさんから、聞いた」
すると、微かに、舌打ちの音が聞こえた。果たしてそれが、どのような感情から放たれたものなのか、レイルにはわからない。わからない、けれど。
「その時から、ずっと、気にかかっていたんだ。……ネグロさんは、どうして、グレムリンに乗って、戦いに身を投じているんだ?」
ネグロは答えない。だが、作業の手は既に止まっていた。
「ネグロさんは『お前が俺の何を知ってる』って言った。確かに、僕は何も知らない、けど。……ネグロさんが、戦いを好んでいるようには、どうしても、見えない」
――だって、いつだって、辛そうだ。
レイルは内心でそう付け加える。戦闘に赴く時、そして戦闘中に通信から漏れ聞こえるネグロの声に耳を傾ければ、それが、尋常な感情から出ているものではないことくらいは、レイルだって気付いている。
「だから、僕は、ネグロさんが戦う理由を、知りたい」
そこまでを語り終えたところで、ゆっくりと、ネグロがこちらを振り向いた。睨むように目を細め、眉を寄せてみせる。それでも、ネグロが真っ直ぐにこちらを見た、というそれだけでも、レイルにとっては十分であった。
「……知らないから知ろうって言うのか、殊勝な事だな」
ネグロの、低く唸るような声が、静かな格納庫に響く。
「――知りたきゃ教えてやる。生きる為に戦うんだ」
「生きる、為に」
レイルはネグロの言葉を鸚鵡返しにする。生きる為。この虚空領域は、ただ生きているだけでも難しい世界だ。生きるにも力が要るということはレイルにもわかる。必ずしも「戦う力」である必要はないかもしれないが、何らかの力が。
ただ、ネグロにとって、その力は――。
「俺は、俺の身体が動く限り、この世界を破壊しやがった全てを……俺がブチ壊してやるんだ……!」
あまりにも激しく燃え盛る「怒り」だった。
苛烈な感情に歪んだ表情で吐き捨てられた言葉に、レイルは何かに撃たれたような感覚に陥る。体を震わせ、ぎり、と歯を鳴らしたネグロは、再びレイルに背を向ける。
「……終わりだ。これ以上は何もねえ」
それきり、ネグロは口を噤んだ。何も無い、という言葉通りに。
レイルは、しばし、その場に立ち尽くす。整備を再開するのかと思われたネグロは、けれど、動こうとしない。音一つ聞こえない沈黙がそこにあった。
その重苦しい静寂を破ったのは、レイルの方だった。
「それが、ネグロさんにとって『生きる』ということなのか」
生きる為に、必要なこと。
「それだけ、ネグロさんの『世界』は、大切なものだったんだな」
レイルはかつての世界を知らない。それがネグロから見た世界であるなら、尚更。
だからこそ、思うのだ。
「僕はネグロさんと、もっと、一緒に居たい」
それは、言葉を交わしているうちに、レイルの中に生まれた望みだった。
「僕には無いものを、ネグロさんが持っていると思うから。僕には無いものを、守れたらいいと思うから」
――それは、例えば、『生きる』という意志だとか。
それがどのような形でも、今のレイルには得難いものであったから。
「終わりだって言ったのは、聞こえなかったのか?」
背を向いたままのネグロの声は、僅かに震えているように聞こえた。レイルはそこに含まれた感情を読み取ることはできない。ただ、これ以上話をする気はないという意志表示であることは、伝わった。
レイルはネグロの背に向けて、軽く頭を下げる。
「……おやすみ、ネグロさん」
【Scene:0005 眠れぬ夜】
◆4回更新の日記ログ
『希望も未来も自らの手で絶って。今や、その傷跡だけがお前を物語る』
* * *
――グレイヴネット。
グレムリンテイマーたちの間に開かれている情報網。それが一体誰によってもたらされているものなのか、スリーピング・レイルは知らない。
ともあれ、グレイヴネットがもたらす情報は、グレムリン『スリーピング・レイル』を通してレイルの意識にも届く。
だから、その言葉を聞いたのも、操縦棺でシミュレーターを動かし、戦闘訓練をしていた時のことだった。
『知らないのか? 死んだはずの傭兵を見た、って噂だよ』
虚空領域に生きる、傭兵たちの間の噂話。ただし、単なる「噂話」というだけではなく、死んだはずの傭兵が搭乗していた機体が実際に撮影されているともいう。
しかし、レイルはその言葉を素直に信じることができずにいた。
レイルにとって、身の回りのものはほとんど「知らないもの」であり、知らない以上は教わった通りに飲みこむのが最も手っ取り早い。そういう事情もあり、今まで周りから教わったことを疑うことはほとんどなかった。
そんなレイルが、珍しく、頭から疑ってかかったのが、この噂話だった。
訓練の手を止め、グレイヴネットから流れてくる情報に意識を傾けてみて。その噂が傭兵たちの間に既にある程度広まっているものであることを確かめてみても。レイルはどうしても「死んだはずの者が確認される」という現象を信じることができずにいた。
自分でも奇妙な話だとは思う。レイルには記憶がない。ここで生きるための最低限の常識も抜け落ちている部分の方が多いのだから、「そういうものなのかもしれない」と思った方がよっぽど自然だ。
なのに、頭の中に生まれる激しい反発が、信じることを許してくれない。
死。戦火の中にあれば意識せずにはいられないもの。特に、レイルは敵陣の只中に飛び込んで矢面に立つ戦い方をするのだから、常に意識の片隅にちらつく言葉である。
死。……レイルは己の喉を撫ぜながら、その言葉に思いを馳せる。
例えば、戦場で自分が殺されたとして。すると、海の底に沈んでいったはずの『スリーピング・レイル』が、目撃されることになるのだろうか? 戦場で死んだはずのスリーピング・レイルという人物が、なおも存在し続けることになるのだろうか?
「……それは」
操縦棺の中で、膝を抱えて。
「なんか、嫌、だな」
唇から零れ落ちた声は、いやに、低く響いた。
* * *
食事の時間は、普段めいめいの過ごし方をしている『継ぎ接ぎ幽霊船』の乗組員が集う時間でもある。
食堂で働いているのは主にミアと、今や幽霊船にすっかり組み込まれている居住船、『ニーキャスチェン』でやってきたエリエス。グレムリンテイマーでないこの二人は、いつも幽霊船の中を駆け回って、日々の生活に必要な諸々をこなしている。この二人がいなければ、きっと幽霊船での生活は今よりも数段貧しいものであっただろう、スリーピング・レイルはそんな風に思う。
今日もミアとエリエスが、トレイの上に食料を盛り付けていく。
「今日のご飯は何かな?」
「コーンミールとバイオベーコン、それにドロもつけちゃうぞ!」
なお、こんなやり取りをしてはいるが、メニューはいつもほとんど同じだ。化学的に合成されたものであるらしいそれらをレイルは記憶していなかったが、こうして何度も食卓に出てくれば流石に「そういうもの」だと理解する。
全員分の食事が揃う頃には、乗組員もぞろぞろと食堂に集まってくる。普段はほとんど幽霊船の奥深くに引きこもり、グレムリンの整備をしている僚機のネグロも、この時間だけは顔を出す。……いつも、どこか不本意そうな顔をしてはいるけれど。
「いただきます!」
ミアの声を合図に、食事が始まる。
皆がいっせいに食べ始めるのを横目に、レイルも、コーンミールを口に運ぶ。
この味にも随分慣れたと思う。美味しいかと問われれば首を傾げてしまうが、これ以外の食べ物を知らないので、評価のしようがない、と言う方が正しいはずだ。
はず、というのは、頭のどこかでもっと、ずっと美味しいものを知っているような気がしているからだ。結局、それがどんなものであるのかは思い出せないままなのだが。
そして、食事の時間はお互いの情報交換の時間でもある。赤髪の青年――『ニーキャスチェン』と共にやってきた、グレムリン『ザイルテンツァー』の乗り手であるツィールが、スプーンを片手に「そういえば」と声を上げる。
「さっきニュースで聞いたんですが、今、ヒルコ・トリフネで『にわとりさま』のお祭りが行われているそうですよ。何でも、食用の鶏肉の神様だとか」
にわとりが何なのかは何故か覚えている。コケコッコーと鳴く、とさかのある鳥だ。肉も卵も食用になる……、というレイルの知識は間違っていないようで、ツィールの言葉に続けられたエリエスの解説によれば、このご時勢ではそれこそ祝い事の席で出るような高級食材なのだそうだ。
なるほどなあ、と思っていると、話を振った張本人であるツィールも、レイルと全く同じ反応をしていた。
ツィールも、レイルと同じく過去の記憶を持たないのだという。「とにかく何でもかんでも頭から信じちゃうから危なっかしくて仕方ないよ」とはエリエスの談。そんなエリエスにミアが心からの同情の視線を向けていたことは記憶に新しい。どうやら、ミアから見たら自分も相当危なっかしく見えているようだ。
そのミアが、紫の目でこちらを見上げてくる。
「レイルは何か、気になったニュースとか、ある?」
「気になった、ニュース……」
ミアの言葉を鸚鵡返しにしながら、レイルは思考を手繰っていく。
その時、視界の端で、誰よりも早く食事を終えたネグロが立ち上がったのが見えた。ネグロはいつもこの場の会話に参加しようとはせず、最低限の食事だけ終えるとすぐに食堂から姿を消してしまう。
早々に食堂を立ち去ろうとするネグロを意識の片隅に捉えながら、ふと、頭によぎったのは、先ほどグレイヴネットに流れていた「噂話」。
「ニュースと、言うべきかは、わからないけれど」
ぽつ、ぽつ、と。ほとんど意識もしないままに、唇が言葉を紡いでいく。
「死んだはずの傭兵を見た、って噂話を、聞いた。ずっと昔に死んだ傭兵の機体が撮影された、とか……」
一瞬。
時間が止まったような、錯覚にとらわれた。
実際には全くそんなことはないはずだ。ただ、立ち去ろうとしていたネグロが刹那足を止めたから――そう見えたのだと、一拍遅れて気づいた。とはいえ、次の瞬間には、その姿は扉の向こうに消えてしまったけれど。
レイルは、気を取り直して意識をミアの方に戻し、それから、息を呑んだ。
ミアが、ただでさえ大きな目を見開いて、レイルを凝視していたから。
「ねえ」
小さな唇が、いつになく強い声を放つ。その紫色の瞳に宿っている感情がただならぬものであることくらいは、流石に察することができた。
「その話、詳しく、聞かせて!」
「詳しくと言っても。僕が、聞いたのは、それだけだ」
ごめん、と。別に悪くもないはずなのに、つい謝罪の言葉が口をついて出る。その言葉を聞いて、ミアも我に返ったのかもしれない。目をぱちりと一つ瞬きして、口をへの字にする。
「……こっちこそ、ごめん。そうだよね、レイルに聞いても仕方ないよね」
ミアはレイルから視線を逸らし、ぱっと笑顔になったかと思うと、「ご飯、食べちゃお?」といやに明るい声で言う。
けれど、レイルは胸の奥がざわざわとする心地がしてたまらなかった。
――死んだはずの傭兵を見た。
脳裏に繰り返されるそのフレーズにも、その言葉に対して強く食いついてくるミアにも。グレムリンの操縦棺の中で感じた激しい反発が再び首をもたげてくる。だから、自然と、唇から零れ落ちる言葉も、
「何もかも、何もかも、ただの、噂話だ」
どこか、吐き捨てるような響きを帯びていた。
「レイル?」
「僕は、信じない。死は、死だ。それ以上でも以下でもなく、覆せるものでも、ない」
死とは、そういうものでなければ、ならない。
そうでなければ、僕は、――?
走り始めていた思考が急停止する。頭の中に浮かびかけた言葉が霧散する。大切な何かを忘れてしまっているという、確信。
一体自分は、何を忘れてしまっているのだろう?
そんな風に思っていると、ミアが「そっか」と言葉を落とす。
「そうだよね。死んだ人が戻ってくるなんて、そんな都合のいいこと、あるわけない」
そう言ってレイルを見上げるミアは、微笑んでいた。
「ミアさん」
「でもね」
つい、と。ミアの視線が逸らされる。食卓を囲む誰とも視線を合わせずに、虚空を見据えて。
「信じたくなることだって、あるの。……あるんだよ」
ミアの横顔は笑っているのに、その声がわずか湿った響きを帯びていたから、それ以上何も言えなくなる。
何も、「信じたくなることだってある」と言うミアを否定したかったわけではない。ただ、自分の中に生まれた激しい反発をミアにぶつけてしまったのだと気づいて、いたたまれない気持ちになる。
――ミア。
ぽつり、頭の中に浮かんで消える、少女を呼ぶ声。
けれど、今はもう一度ミアに呼びかける気にはなれなくて。
レイルは、トレイに残っていたコーンミールを一息に飲み下す。
【Scene:0004 グレイヴネットの噂話】
* * *
――グレイヴネット。
グレムリンテイマーたちの間に開かれている情報網。それが一体誰によってもたらされているものなのか、スリーピング・レイルは知らない。
ともあれ、グレイヴネットがもたらす情報は、グレムリン『スリーピング・レイル』を通してレイルの意識にも届く。
だから、その言葉を聞いたのも、操縦棺でシミュレーターを動かし、戦闘訓練をしていた時のことだった。
『知らないのか? 死んだはずの傭兵を見た、って噂だよ』
虚空領域に生きる、傭兵たちの間の噂話。ただし、単なる「噂話」というだけではなく、死んだはずの傭兵が搭乗していた機体が実際に撮影されているともいう。
しかし、レイルはその言葉を素直に信じることができずにいた。
レイルにとって、身の回りのものはほとんど「知らないもの」であり、知らない以上は教わった通りに飲みこむのが最も手っ取り早い。そういう事情もあり、今まで周りから教わったことを疑うことはほとんどなかった。
そんなレイルが、珍しく、頭から疑ってかかったのが、この噂話だった。
訓練の手を止め、グレイヴネットから流れてくる情報に意識を傾けてみて。その噂が傭兵たちの間に既にある程度広まっているものであることを確かめてみても。レイルはどうしても「死んだはずの者が確認される」という現象を信じることができずにいた。
自分でも奇妙な話だとは思う。レイルには記憶がない。ここで生きるための最低限の常識も抜け落ちている部分の方が多いのだから、「そういうものなのかもしれない」と思った方がよっぽど自然だ。
なのに、頭の中に生まれる激しい反発が、信じることを許してくれない。
死。戦火の中にあれば意識せずにはいられないもの。特に、レイルは敵陣の只中に飛び込んで矢面に立つ戦い方をするのだから、常に意識の片隅にちらつく言葉である。
死。……レイルは己の喉を撫ぜながら、その言葉に思いを馳せる。
例えば、戦場で自分が殺されたとして。すると、海の底に沈んでいったはずの『スリーピング・レイル』が、目撃されることになるのだろうか? 戦場で死んだはずのスリーピング・レイルという人物が、なおも存在し続けることになるのだろうか?
「……それは」
操縦棺の中で、膝を抱えて。
「なんか、嫌、だな」
唇から零れ落ちた声は、いやに、低く響いた。
* * *
食事の時間は、普段めいめいの過ごし方をしている『継ぎ接ぎ幽霊船』の乗組員が集う時間でもある。
食堂で働いているのは主にミアと、今や幽霊船にすっかり組み込まれている居住船、『ニーキャスチェン』でやってきたエリエス。グレムリンテイマーでないこの二人は、いつも幽霊船の中を駆け回って、日々の生活に必要な諸々をこなしている。この二人がいなければ、きっと幽霊船での生活は今よりも数段貧しいものであっただろう、スリーピング・レイルはそんな風に思う。
今日もミアとエリエスが、トレイの上に食料を盛り付けていく。
「今日のご飯は何かな?」
「コーンミールとバイオベーコン、それにドロもつけちゃうぞ!」
なお、こんなやり取りをしてはいるが、メニューはいつもほとんど同じだ。化学的に合成されたものであるらしいそれらをレイルは記憶していなかったが、こうして何度も食卓に出てくれば流石に「そういうもの」だと理解する。
全員分の食事が揃う頃には、乗組員もぞろぞろと食堂に集まってくる。普段はほとんど幽霊船の奥深くに引きこもり、グレムリンの整備をしている僚機のネグロも、この時間だけは顔を出す。……いつも、どこか不本意そうな顔をしてはいるけれど。
「いただきます!」
ミアの声を合図に、食事が始まる。
皆がいっせいに食べ始めるのを横目に、レイルも、コーンミールを口に運ぶ。
この味にも随分慣れたと思う。美味しいかと問われれば首を傾げてしまうが、これ以外の食べ物を知らないので、評価のしようがない、と言う方が正しいはずだ。
はず、というのは、頭のどこかでもっと、ずっと美味しいものを知っているような気がしているからだ。結局、それがどんなものであるのかは思い出せないままなのだが。
そして、食事の時間はお互いの情報交換の時間でもある。赤髪の青年――『ニーキャスチェン』と共にやってきた、グレムリン『ザイルテンツァー』の乗り手であるツィールが、スプーンを片手に「そういえば」と声を上げる。
「さっきニュースで聞いたんですが、今、ヒルコ・トリフネで『にわとりさま』のお祭りが行われているそうですよ。何でも、食用の鶏肉の神様だとか」
にわとりが何なのかは何故か覚えている。コケコッコーと鳴く、とさかのある鳥だ。肉も卵も食用になる……、というレイルの知識は間違っていないようで、ツィールの言葉に続けられたエリエスの解説によれば、このご時勢ではそれこそ祝い事の席で出るような高級食材なのだそうだ。
なるほどなあ、と思っていると、話を振った張本人であるツィールも、レイルと全く同じ反応をしていた。
ツィールも、レイルと同じく過去の記憶を持たないのだという。「とにかく何でもかんでも頭から信じちゃうから危なっかしくて仕方ないよ」とはエリエスの談。そんなエリエスにミアが心からの同情の視線を向けていたことは記憶に新しい。どうやら、ミアから見たら自分も相当危なっかしく見えているようだ。
そのミアが、紫の目でこちらを見上げてくる。
「レイルは何か、気になったニュースとか、ある?」
「気になった、ニュース……」
ミアの言葉を鸚鵡返しにしながら、レイルは思考を手繰っていく。
その時、視界の端で、誰よりも早く食事を終えたネグロが立ち上がったのが見えた。ネグロはいつもこの場の会話に参加しようとはせず、最低限の食事だけ終えるとすぐに食堂から姿を消してしまう。
早々に食堂を立ち去ろうとするネグロを意識の片隅に捉えながら、ふと、頭によぎったのは、先ほどグレイヴネットに流れていた「噂話」。
「ニュースと、言うべきかは、わからないけれど」
ぽつ、ぽつ、と。ほとんど意識もしないままに、唇が言葉を紡いでいく。
「死んだはずの傭兵を見た、って噂話を、聞いた。ずっと昔に死んだ傭兵の機体が撮影された、とか……」
一瞬。
時間が止まったような、錯覚にとらわれた。
実際には全くそんなことはないはずだ。ただ、立ち去ろうとしていたネグロが刹那足を止めたから――そう見えたのだと、一拍遅れて気づいた。とはいえ、次の瞬間には、その姿は扉の向こうに消えてしまったけれど。
レイルは、気を取り直して意識をミアの方に戻し、それから、息を呑んだ。
ミアが、ただでさえ大きな目を見開いて、レイルを凝視していたから。
「ねえ」
小さな唇が、いつになく強い声を放つ。その紫色の瞳に宿っている感情がただならぬものであることくらいは、流石に察することができた。
「その話、詳しく、聞かせて!」
「詳しくと言っても。僕が、聞いたのは、それだけだ」
ごめん、と。別に悪くもないはずなのに、つい謝罪の言葉が口をついて出る。その言葉を聞いて、ミアも我に返ったのかもしれない。目をぱちりと一つ瞬きして、口をへの字にする。
「……こっちこそ、ごめん。そうだよね、レイルに聞いても仕方ないよね」
ミアはレイルから視線を逸らし、ぱっと笑顔になったかと思うと、「ご飯、食べちゃお?」といやに明るい声で言う。
けれど、レイルは胸の奥がざわざわとする心地がしてたまらなかった。
――死んだはずの傭兵を見た。
脳裏に繰り返されるそのフレーズにも、その言葉に対して強く食いついてくるミアにも。グレムリンの操縦棺の中で感じた激しい反発が再び首をもたげてくる。だから、自然と、唇から零れ落ちる言葉も、
「何もかも、何もかも、ただの、噂話だ」
どこか、吐き捨てるような響きを帯びていた。
「レイル?」
「僕は、信じない。死は、死だ。それ以上でも以下でもなく、覆せるものでも、ない」
死とは、そういうものでなければ、ならない。
そうでなければ、僕は、――?
走り始めていた思考が急停止する。頭の中に浮かびかけた言葉が霧散する。大切な何かを忘れてしまっているという、確信。
一体自分は、何を忘れてしまっているのだろう?
そんな風に思っていると、ミアが「そっか」と言葉を落とす。
「そうだよね。死んだ人が戻ってくるなんて、そんな都合のいいこと、あるわけない」
そう言ってレイルを見上げるミアは、微笑んでいた。
「ミアさん」
「でもね」
つい、と。ミアの視線が逸らされる。食卓を囲む誰とも視線を合わせずに、虚空を見据えて。
「信じたくなることだって、あるの。……あるんだよ」
ミアの横顔は笑っているのに、その声がわずか湿った響きを帯びていたから、それ以上何も言えなくなる。
何も、「信じたくなることだってある」と言うミアを否定したかったわけではない。ただ、自分の中に生まれた激しい反発をミアにぶつけてしまったのだと気づいて、いたたまれない気持ちになる。
――ミア。
ぽつり、頭の中に浮かんで消える、少女を呼ぶ声。
けれど、今はもう一度ミアに呼びかける気にはなれなくて。
レイルは、トレイに残っていたコーンミールを一息に飲み下す。
【Scene:0004 グレイヴネットの噂話】
◆3回更新の日記ログ
『希望も未来も自らの手で絶って。今や、その傷跡だけがお前を物語る』
* * *
海に浮かぶその船に名前はなく、単に「継ぎ接ぎ幽霊船」と呼ばれていた。
呼び名の通り、戦艦や客船、時には航空機までをも継ぎ接ぎしてできている奇妙奇天烈な船。その上、ミアが見る限り、その一部にはタワーでは見慣れない技術も使われているようで、異世界からの漂流物すらも取り込んでいるのかもしれなかった。
グレムリン『スリーピング・レイル』が拾った通信を頼りにやってきてみれば、そこには一人の男がいて――ルイン、と名乗った「艦長代理」であるその男は、確かに『スリーピング・レイル』を受け入れ、『スリーピング・レイル』の持つ戦闘力を対価に、その乗り手たちの衣食住を保証してくれるらしい。
ありがたいことだ、と思う。その場ではほとんど何も考えずに飛び出してきてしまっただけに、これからどう生活していくのか、という点はミアの心配事のひとつであったから。
――そして、この男が、人並みの心配をしているのか、判断がつかなかったから。
ミアはちらりと、傍らの男を見上げる。
スリーピング・レイル。
名前にもなっていない名前を自分の呼び名として受け入れている男は、立ち尽くしたまま、分厚く薄汚れた窓硝子越しの外界をぼんやりと見つめている。
幽霊船に着いて、ルインから一通りの説明を受けて。自由に行動して構わない、と言われてから、レイルはずっとそうしている。ぼさぼさの白髪の間から覗く横顔を窺ってみても、何を考えているのかさっぱりわからない。
「何してんの?」
レイルはそこで初めてミアの存在に気づいたかのように、かろうじて髪に覆われていない側の、濃い茶色の目をぱちりと瞬いてこちらを見る。
「外は、晴れないのか、と思って」
「?」
ミアは、レイルが何を言ったのか理解できなかった。レイルも流石に察したのか、少しばかり困ったような顔をしながら、白い髭に縁取られた唇をもごもごと動かす。
「空が、……見えない、から」
――空。
ミアにとっての「空」とは、この、赤錆びた粉塵に覆われた暗い空だ。それ以外の空を、ミアは記憶していない。
ただ、知識として「知らない」わけではない。
かつて、七月戦役における重粒子粉塵兵器の濫用を経て、虚空領域全体が粉塵に覆われるより前。空は、明るい青色をしていたのだと。工場の大人たちから聞いたことがある。彼らの中には、青い空を己の目で見て知っているという者もいた。
レイルは、見た目だけで言えばミアの親くらいの年齢に見える。彼くらいの年齢ならば、青い空を知っていてもおかしくない――けれど。
「思い出したの?」
「いや、何も。ただ、空は……、こんな色じゃなかった、と思う」
ここまでの道中にも言葉を交わしてみてわかったのだが、どうもレイルの記憶障害は相当に深刻なものであるらしい。グレムリンで戦うことはできても、その理由はわからない。それだけならともかく、最低限の常識まですっぽりと抜け落ちてしまっているのだ。その常識のなさといえば、放っておけば粉塵の只中に防護服なしで歩き出していってしまうレベル。
これでは、小さな子供とほとんど変わらない。人の話を素直に聞いて従う姿勢があるだけマシではあるが、それでも、レイルの言動はどこかミアを不安にさせる。目を離したらどうなってしまうかわからない、という不安。
首をもたげてくる不安を払拭すべく、ミアは意識して胸を張り、声を明るくする。
「記憶が無いのは仕方ないんだし、さ。知らないことは、覚えてけばいいんだから。ただ、何か思い出したなら教えてね」
レイルはこくりと頷いて、やっと窓とその向こうに広がる「空」から意識を離したようだった。ミアはそんなレイルが羽織っているコートの袖を引く。
「ねえ、少し探検してみない? これからしばらくこの船で暮らすんだから、何があるのかは知っておかないと」
それから、……レイルのことも、知っておきたいと、思う。
何もかもを忘れてしまっているこの男が、一体何を思ってこの場に立っているのか。何故グレムリンを駆って戦おうとするのか。ミアには、まだ、わからないままだったから。
* * *
ミアに手を引かれながら、スリーピング・レイルは一歩一歩、幽霊船の中を歩いていく。いくつもの船が継ぎ接ぎになったこの船は、少し歩くたびに風景を変え、飽きることがない。
「見て、レイル! ちょっと埃っぽいけど、いい部屋だよ」
ミアが一つの部屋を覗き込んで歓声を上げる。ミアの背中越しに見てみれば、確かに小さいながらも整った部屋だ。窓がふさがれている代わりに、おしゃれなデザインのランプが天井から吊り下げられており、寝台をはじめとした設備もかなりよいものであるように、見えた。
「あたし、この部屋使わせてもらおうかな。レイルも、この辺りの部屋を使えば?」
レイルは頷くことも首を横に振ることもしなかったが、ミアの意識はレイルよりも部屋に向けられていて、それには気づかなかったらしい。部屋の中に入って、くるくると辺りを見渡す。
「うん、換気もできてるみたいだし、ちょっと掃除すれば大丈夫そう! あとでルインさんに掃除用具借りてこよう」
ルイン。この船の主。何故か「代理」らしいけれど、一体誰の代理なのか、レイルは知らない。重要なのは、グレムリンの武力の対価に、ルインがレイルたちに宿りを提供してくれるということ。記憶を失って右も左もわからず、行くあてもなかったレイルの救い主であるということ。それだけだ。
本当はもう少しルインについても色々と知りたいとは思うのだけれど、今はまずこの状況を飲み込むことが先だと思っている。レイルにとって、自分の周囲にあるものは何もかも目新しくて、全てが「知らないもの」であったから、ただ立っているだけでも目が回るような心地がする。
そんなレイルに気づいているのかいないのか、ミアはくるりと振り向いて、ぱっちりとした紫色の瞳でレイルを見上げる。
「あ、そうそう、着るものも用意してもらわないとだね。レイルだってその服、着たきりにするわけにもいかないでしょ」
服。コートの下にまとっている、体にぴったりと沿う防護服を見下ろす。操縦服も兼ねるらしいこれは、自分が「最初に」意識を取り戻していたときに着ていたもの。あまりにも体に合っているため窮屈さは感じないが、これを普段着にするのは流石のレイルも何かが違うな、と思う。その程度の感覚は「覚えて」いるらしい。
レイルの頭から爪先までをじっくりと眺め回した末に、ミアはわずかに眉間に皺を寄せて言う。
「あと、その髪と髭もどうにかならない? むさくるしいと思うんだけど」
「そう、かな」
「レイルは鬱陶しくないの? この前髪なんて、顔半分くらい隠れちゃってるし――」
伸ばされたミアの小さな手が、レイルの伸びきった前髪に触れて――その瞬間、ミアの表情が、目を見開いたまま固まった。どうしたのだろう、と思っていると、戸惑いを含んだ声が投げかけられる。
「こっちの目……、どうしたの?」
「目?」
「見えてないの?」
「……ああ」
意識をしていなかった、ということに気づかされる。自分で、左目の前に手を持っていく、けれど。その手が視界に入ることはない。
「そうだな。見えて、ない、みたいだ」
「みたい、じゃなくて。自分のことでしょ」
ほら、と、ミアの指が部屋の壁にかかった鏡に向けられる。レイルはそこを覗き込むことで、初めて「自分の顔」をはっきりと認識する。
冴えない顔つきの、中年の男。白い肌のミアと比べると幾分色の濃い肌、ぼさついた白い髪に、口の周りと顎に生えた無精髭。そんな自分を見つめ返す、少し目尻の垂れた茶色の目。その一方で髪に覆われていた片目は完全に白濁しており、使い物にならなくなっていることが、わかる。
これが、自分の顔なのか。
思いながら、手で顎を撫ぜてみる。目の前の男もまた、髭の生えた顎を撫ぜる。当然だ、これは鏡なのだから。レイルだって「鏡」は覚えている。
なのに、胸のどこかにちぐはぐな思いが生まれる。なるほど、と納得する一方で、まるで――赤の他人の顔を見ているような気持ちも、芽生えるのだ。
「僕は、こんな顔を、して、いたんだな」
「そう、これがレイルの顔。もう、忘れないでよね」
忘れたくて忘れているわけではない、と鏡の中の自分が唇を尖らせる。
「それじゃ、掃除しよ! 行こう、レイル!」
ミアがレイルに背を向ける。揺れる青緑の髪、小さな背中。その背中が、さらに小さくなったような錯覚を覚えて。
――ミア!
刹那、鈍い痛みと共に頭の中に閃く、声。
「――ミア」
思わず、唇を開いていた。けれど、頭の中に閃いた声と、唇から零れ落ちた声は、まるで別の響きをしていた。
「ん? どうしたの、レイル?」
ミアが振り向いて、目が合って。その瞬間、頭に響いていた痛みは霧散して、声もまた聞こえなくなる。レイルは何故不意にミアの名前を呼んだのか、自分でもよくわからなくなり、口をぱくぱくさせて。
「よ、呼んでみた、だけ?」
「何それ」
呆れた声と共にミアは部屋を出て行き、レイルも慌ててその後を追う。
幽霊船の通路に、今は二人分の足音が、響く。
【Scene:0003 継ぎ接ぎ幽霊船】
* * *
海に浮かぶその船に名前はなく、単に「継ぎ接ぎ幽霊船」と呼ばれていた。
呼び名の通り、戦艦や客船、時には航空機までをも継ぎ接ぎしてできている奇妙奇天烈な船。その上、ミアが見る限り、その一部にはタワーでは見慣れない技術も使われているようで、異世界からの漂流物すらも取り込んでいるのかもしれなかった。
グレムリン『スリーピング・レイル』が拾った通信を頼りにやってきてみれば、そこには一人の男がいて――ルイン、と名乗った「艦長代理」であるその男は、確かに『スリーピング・レイル』を受け入れ、『スリーピング・レイル』の持つ戦闘力を対価に、その乗り手たちの衣食住を保証してくれるらしい。
ありがたいことだ、と思う。その場ではほとんど何も考えずに飛び出してきてしまっただけに、これからどう生活していくのか、という点はミアの心配事のひとつであったから。
――そして、この男が、人並みの心配をしているのか、判断がつかなかったから。
ミアはちらりと、傍らの男を見上げる。
スリーピング・レイル。
名前にもなっていない名前を自分の呼び名として受け入れている男は、立ち尽くしたまま、分厚く薄汚れた窓硝子越しの外界をぼんやりと見つめている。
幽霊船に着いて、ルインから一通りの説明を受けて。自由に行動して構わない、と言われてから、レイルはずっとそうしている。ぼさぼさの白髪の間から覗く横顔を窺ってみても、何を考えているのかさっぱりわからない。
「何してんの?」
レイルはそこで初めてミアの存在に気づいたかのように、かろうじて髪に覆われていない側の、濃い茶色の目をぱちりと瞬いてこちらを見る。
「外は、晴れないのか、と思って」
「?」
ミアは、レイルが何を言ったのか理解できなかった。レイルも流石に察したのか、少しばかり困ったような顔をしながら、白い髭に縁取られた唇をもごもごと動かす。
「空が、……見えない、から」
――空。
ミアにとっての「空」とは、この、赤錆びた粉塵に覆われた暗い空だ。それ以外の空を、ミアは記憶していない。
ただ、知識として「知らない」わけではない。
かつて、七月戦役における重粒子粉塵兵器の濫用を経て、虚空領域全体が粉塵に覆われるより前。空は、明るい青色をしていたのだと。工場の大人たちから聞いたことがある。彼らの中には、青い空を己の目で見て知っているという者もいた。
レイルは、見た目だけで言えばミアの親くらいの年齢に見える。彼くらいの年齢ならば、青い空を知っていてもおかしくない――けれど。
「思い出したの?」
「いや、何も。ただ、空は……、こんな色じゃなかった、と思う」
ここまでの道中にも言葉を交わしてみてわかったのだが、どうもレイルの記憶障害は相当に深刻なものであるらしい。グレムリンで戦うことはできても、その理由はわからない。それだけならともかく、最低限の常識まですっぽりと抜け落ちてしまっているのだ。その常識のなさといえば、放っておけば粉塵の只中に防護服なしで歩き出していってしまうレベル。
これでは、小さな子供とほとんど変わらない。人の話を素直に聞いて従う姿勢があるだけマシではあるが、それでも、レイルの言動はどこかミアを不安にさせる。目を離したらどうなってしまうかわからない、という不安。
首をもたげてくる不安を払拭すべく、ミアは意識して胸を張り、声を明るくする。
「記憶が無いのは仕方ないんだし、さ。知らないことは、覚えてけばいいんだから。ただ、何か思い出したなら教えてね」
レイルはこくりと頷いて、やっと窓とその向こうに広がる「空」から意識を離したようだった。ミアはそんなレイルが羽織っているコートの袖を引く。
「ねえ、少し探検してみない? これからしばらくこの船で暮らすんだから、何があるのかは知っておかないと」
それから、……レイルのことも、知っておきたいと、思う。
何もかもを忘れてしまっているこの男が、一体何を思ってこの場に立っているのか。何故グレムリンを駆って戦おうとするのか。ミアには、まだ、わからないままだったから。
* * *
ミアに手を引かれながら、スリーピング・レイルは一歩一歩、幽霊船の中を歩いていく。いくつもの船が継ぎ接ぎになったこの船は、少し歩くたびに風景を変え、飽きることがない。
「見て、レイル! ちょっと埃っぽいけど、いい部屋だよ」
ミアが一つの部屋を覗き込んで歓声を上げる。ミアの背中越しに見てみれば、確かに小さいながらも整った部屋だ。窓がふさがれている代わりに、おしゃれなデザインのランプが天井から吊り下げられており、寝台をはじめとした設備もかなりよいものであるように、見えた。
「あたし、この部屋使わせてもらおうかな。レイルも、この辺りの部屋を使えば?」
レイルは頷くことも首を横に振ることもしなかったが、ミアの意識はレイルよりも部屋に向けられていて、それには気づかなかったらしい。部屋の中に入って、くるくると辺りを見渡す。
「うん、換気もできてるみたいだし、ちょっと掃除すれば大丈夫そう! あとでルインさんに掃除用具借りてこよう」
ルイン。この船の主。何故か「代理」らしいけれど、一体誰の代理なのか、レイルは知らない。重要なのは、グレムリンの武力の対価に、ルインがレイルたちに宿りを提供してくれるということ。記憶を失って右も左もわからず、行くあてもなかったレイルの救い主であるということ。それだけだ。
本当はもう少しルインについても色々と知りたいとは思うのだけれど、今はまずこの状況を飲み込むことが先だと思っている。レイルにとって、自分の周囲にあるものは何もかも目新しくて、全てが「知らないもの」であったから、ただ立っているだけでも目が回るような心地がする。
そんなレイルに気づいているのかいないのか、ミアはくるりと振り向いて、ぱっちりとした紫色の瞳でレイルを見上げる。
「あ、そうそう、着るものも用意してもらわないとだね。レイルだってその服、着たきりにするわけにもいかないでしょ」
服。コートの下にまとっている、体にぴったりと沿う防護服を見下ろす。操縦服も兼ねるらしいこれは、自分が「最初に」意識を取り戻していたときに着ていたもの。あまりにも体に合っているため窮屈さは感じないが、これを普段着にするのは流石のレイルも何かが違うな、と思う。その程度の感覚は「覚えて」いるらしい。
レイルの頭から爪先までをじっくりと眺め回した末に、ミアはわずかに眉間に皺を寄せて言う。
「あと、その髪と髭もどうにかならない? むさくるしいと思うんだけど」
「そう、かな」
「レイルは鬱陶しくないの? この前髪なんて、顔半分くらい隠れちゃってるし――」
伸ばされたミアの小さな手が、レイルの伸びきった前髪に触れて――その瞬間、ミアの表情が、目を見開いたまま固まった。どうしたのだろう、と思っていると、戸惑いを含んだ声が投げかけられる。
「こっちの目……、どうしたの?」
「目?」
「見えてないの?」
「……ああ」
意識をしていなかった、ということに気づかされる。自分で、左目の前に手を持っていく、けれど。その手が視界に入ることはない。
「そうだな。見えて、ない、みたいだ」
「みたい、じゃなくて。自分のことでしょ」
ほら、と、ミアの指が部屋の壁にかかった鏡に向けられる。レイルはそこを覗き込むことで、初めて「自分の顔」をはっきりと認識する。
冴えない顔つきの、中年の男。白い肌のミアと比べると幾分色の濃い肌、ぼさついた白い髪に、口の周りと顎に生えた無精髭。そんな自分を見つめ返す、少し目尻の垂れた茶色の目。その一方で髪に覆われていた片目は完全に白濁しており、使い物にならなくなっていることが、わかる。
これが、自分の顔なのか。
思いながら、手で顎を撫ぜてみる。目の前の男もまた、髭の生えた顎を撫ぜる。当然だ、これは鏡なのだから。レイルだって「鏡」は覚えている。
なのに、胸のどこかにちぐはぐな思いが生まれる。なるほど、と納得する一方で、まるで――赤の他人の顔を見ているような気持ちも、芽生えるのだ。
「僕は、こんな顔を、して、いたんだな」
「そう、これがレイルの顔。もう、忘れないでよね」
忘れたくて忘れているわけではない、と鏡の中の自分が唇を尖らせる。
「それじゃ、掃除しよ! 行こう、レイル!」
ミアがレイルに背を向ける。揺れる青緑の髪、小さな背中。その背中が、さらに小さくなったような錯覚を覚えて。
――ミア!
刹那、鈍い痛みと共に頭の中に閃く、声。
「――ミア」
思わず、唇を開いていた。けれど、頭の中に閃いた声と、唇から零れ落ちた声は、まるで別の響きをしていた。
「ん? どうしたの、レイル?」
ミアが振り向いて、目が合って。その瞬間、頭に響いていた痛みは霧散して、声もまた聞こえなくなる。レイルは何故不意にミアの名前を呼んだのか、自分でもよくわからなくなり、口をぱくぱくさせて。
「よ、呼んでみた、だけ?」
「何それ」
呆れた声と共にミアは部屋を出て行き、レイルも慌ててその後を追う。
幽霊船の通路に、今は二人分の足音が、響く。
【Scene:0003 継ぎ接ぎ幽霊船】
◆2回更新の日記ログ
『希望も未来も自らの手で絶って。今や、その傷跡だけがお前を物語る』
* * *
ずんぐりとした鳥の姿をしたグレムリン『スリーピング・レイル』は、操縦者の意志を汲み、ゆっくりと首をもたげる。
そこに、想像よりもずっと速く、敵機たるシュヴァルベ・ドライが踏み込んできて、単装砲を放つ。
響く鈍い音。装甲で一撃を受けた気配が操縦棺に、そして手に、わずかな痺れとして伝わってくる。
だが、『スリーピング・レイル』の装甲は厚い。軽い一撃であればあえて避けるまでもなく――むしろ、相手が「こちらの間合い」に入った合図と、捉える。
「……それじゃあ」
片方の目で、全視界型ディスプレイに映し出されたシュヴァルベ・ドライを見据えて。
「僕の、番だ」
呟きと共に踏み込み、翼の代わりに取り付けられたパンツァークリンゲでシュヴァルベ・ドライを強く打つ。質力が生み出す激しい衝撃で相手の動きが鈍ったところで、機関砲がその装甲をまだらに撃ち抜いた。
ぐら、と目の前の機体が揺れ、海へと墜ちてゆく。
それを見送りながら、無意識に止めていた呼吸を、ひとつ吐き出して。
シアンの明かりに照らされながら、自分の手を握って、開く。
それが「自分の手」であることが、まだ信じられない。グレムリンを駆る自分が「自分自身」であることが、まだ信じられない。
けれど、これは紛れもなく現実で。
――午前二時、三十一分。
視界の片隅の時計を確かめて、それから、空を見上げる。ディスプレイ越しの空は何を語ることもなく、ただ、ただ、そこに広がっていた。
* * *
静かに――なった。
がんがんと鳴り響いていた放送は止み、男から渡されたコートを肩から羽織ったミアは、その場に座り込んでいた。
果たして、あの男は無事なのだろうか。
そう思った瞬間、轟音がこちらに近づいてきた。
見れば、廃工場にあのグレムリンが戻ってきたのだった。最初にそれが置かれていたところに収まると、操縦棺が開き、白髪の男が床の上に降り立つ。
「大丈夫!?」
ミアは慌てて男に駆け寄るが、男の体に傷はない。男は髪に隠れていない右の目をぱちりと瞬いて、それから、低い声で言った。
「うん。攻めてきた機動体は、墜とした。しばらくは、大丈夫だ」
墜とした。あっさりと言ってのけたが、そう簡単な話ではない。もしそれが簡単なことであれば、未識別機動体に世界が蹂躙されることもなかったはずだ。
けれど、目の前の男と――このグレムリンには、その力がある、ということか。
ミアはぞくりとする。それは目の前にある圧倒的ともいえる「力」への恐怖か、それとも。
「あなた、何者なの? グレムリンはことごとく機能を停止してるはずなのに、どうしてグレムリンを動かせたの?」
ミアの矢継ぎ早の問いかけに対し、男はこくん、と首を傾げて。眉を顰めて、
「僕にも、わからない」
と、のたまうのだ。
ミアは目を丸くして、改めて男を見る。先ほどまで死線で戦っていたとは思えない、茫洋とした表情。つい、ミアは唇を尖らせる。
「わからないって、自分のことでしょ?」
「わからない、んだ。ここがどこなのかも、僕が、誰なのかも」
くしゃ、と髪に指を通して、男は途方に暮れた声音で言う。その場しのぎのごまかしにも見えない調子に、ミアまで途方に暮れてしまう。けれど、沈黙しているわけにもいかないから、何とか言葉を搾り出す。
「記憶喪失、ってこと?」
男は「きおく、そーしつ」とミアの言葉をぼんやり鸚鵡返しにして、それから曖昧に頷いた。
「じゃあ、どうして、グレムリンが動かせるのかもわからないんだ」
「わからない」
と答えた男は、しばらく口を噤んだ後、「でも」とぽつりと付け加えた。
「……僕は、きっと。これで戦うために、いる、んだと思う」
男が見上げる鳥型のグレムリンは何も語らない。ただ、ただ、その場に佇むのみ。ミアは噛み付くように問い返す。
「どうして、何も覚えてないのに、そんなことがわかるのさ」
「わかったわけ、じゃない、けど。戦えるなら、戦わなきゃ」
そう言う男は、もう、途方に暮れてなどいなかった。その目は凛として、ミアをじっと見据えている。
「僕はきっと、戦うことしか、できないけど。それが、誰かを、助けることになるなら」
髭に縁取られた薄い唇を、ほんの少しだけ、歪めて。
「嬉しい、から」
どきり、とした。
この世界は終わろうとしている。誰もが諦めようとしている。ミアだって、正直に言ってしまえば、ただ自分が生きるだけで精一杯だった。
けれど、この男は。戦う力を持った上で、その力を「誰か」のために振るうことを躊躇わないというのか。
馬鹿げている、と笑い飛ばすことだってできたはずだ。いくらグレムリンを操り、未識別機動体を倒す力があったとしても、ただ一人でどうこうすることなど、できやしない。
なのに、ミアの中には熱を帯びた思いが湧き出してくる。かつて見た、遠ざかっていく大きな背中の影のイメージと共に。
その、言葉にならない思いを持て余していると、男が唇を開く。
「行かなくちゃ」
「……え?」
「ここの他にも、敵が、いると思う、から」
男の目はもう、ミアを見てはいなかった。廃工場の外、虚空領域の戦場を見据えている。自分がいるべき場所を……、見つめて、いる。
それに気づいた瞬間に、もう、ミアはいても立ってもいられなくなっていた。
「だから、君は――」
「あたしも、連れてって!」
男の言葉を遮るように。ミアは、声を上げた。
男がもう一度視線をミアに戻す。ミアは唇を引き結び、男を見上げる。男は目に見えてうろたえた様子で、かろうじて一言だけを吐き出した。
「危険だ」
「危険は承知の上。それに、あなた、グレムリンに乗れても、整備はできるの?」
「せい、び?」
男がまた、ぼんやりとした声を上げる。これは絶対にわかっていない声だ。
「グレムリンだって、ただ乗り続けてたら疲労するばかりだし、敵によってはパーツを変える必要だってある。その知識があなたにある?」
男は口をぱくぱくさせるだけで何も言わなかったが、つまり「そんなこと知らない」ということだ。
ミアはわざとらしく溜息をついて、それからにっと歯を見せて笑ってみせる。
「だから、あたしも連れてって。絶対にお役に立つよ、何しろ、整備士なんだから」
本当は「見習い」だけれども。その言葉はぐっと飲み込む。
「けど」
「煮え切らないな! ダメって言っても勝手に乗り込むからね!」
言って、男が制する前に操縦棺を無理やり開く。通常、一人がぎりぎり乗れる程度のスペースしかない操縦棺だが、この機体の操縦棺は思ったよりも広く、男が操縦席に座った上でミアが乗り込むことも十分できそうだ。
身軽に操縦棺に滑り込んだミアに手を伸ばした男は、しかし、すぐに諦めたらしく手を下ろして、ゆっくりと首を振った。
「わかった。一緒に、行こう。それで、教えてほしい。ここのこと、グレムリンのこと、それから……、ええと、君の、ことも」
言って、男もまた、操縦棺に乗り込んでくる。全視界型ディスプレイの放つシアンの光に照らされた男の顔を見上げて、ミアは笑う。
「あたし、ミア。あなたは……、そっか、名前わかんないんだっけ」
「ああ。ただ、一つだけ、わかることがあって」
男の指先が、ミアの肩から垂れ下がるコートの襟元に向けられる。ミアが襟を引っ張ってみると、そこにはずんぐりとした鳥をモチーフとしたエンブレムと、小さな文字列が縫いとめられていた。その文字列を、指でなぞり。
「『スリーピング・レイル』?」
「気づいたら、着てた、から。これが、僕の、唯一の手がかり」
よく見れば、男が着ている防護服にも同じエンブレムが見える。描かれた鳥が妙にこのグレムリンの形に似ているのは偶然か否か。
「スリーピング・レイル……。どう考えても、人の名前じゃなさそうだけど」
「そう、かな?」
「そうなの。でも、あなたが嫌じゃなきゃいいや」
スリーピング・レイル。眠る水鳥。果たして、その名前が「何」に向けられたものなのかは、ミアにももちろんわからないけれど。
「じゃあ、レイル、って呼べばいい?」
そう問いかければ、男――レイルは、眩しそうに目を細めた。もしかすると、笑ったのかもしれなかった。
「うん。よろしく、ミアさん」
ミアさん。
その声の響きに妙にくすぐったいものを感じて、ミアは唇をふにゃふにゃさせる。レイルはそれに気づいているのかいないのか、操縦席に座ると、計器をおぼつかない手つきで弄り始める。
「それで、レイル。これからどこに行くの?」
「さっき、通信を受け取ったから、そこに、行ってみようと思う」
通信で受け取った座標をセットして。
ミアが座席にしがみついたのを確認して、レイルはグレムリンを発進させる。
「そういえば、このグレムリンの名前は? 呼び名がないと不便だと思うけど」
「『スリーピング・レイル』」
「なんでわざわざ同じ名前つけるの?」
「思い、つかなかったから……」
そんな、他愛も無い言葉を交わしながら、グレムリン『スリーピング・レイル』は二人を乗せて虚空領域を行く。
目指すは通信の出所――『継ぎ接ぎ幽霊船(パッチワーク・ゴーストシップ)』。
【Scene:0002 旅立ち】
* * *
ずんぐりとした鳥の姿をしたグレムリン『スリーピング・レイル』は、操縦者の意志を汲み、ゆっくりと首をもたげる。
そこに、想像よりもずっと速く、敵機たるシュヴァルベ・ドライが踏み込んできて、単装砲を放つ。
響く鈍い音。装甲で一撃を受けた気配が操縦棺に、そして手に、わずかな痺れとして伝わってくる。
だが、『スリーピング・レイル』の装甲は厚い。軽い一撃であればあえて避けるまでもなく――むしろ、相手が「こちらの間合い」に入った合図と、捉える。
「……それじゃあ」
片方の目で、全視界型ディスプレイに映し出されたシュヴァルベ・ドライを見据えて。
「僕の、番だ」
呟きと共に踏み込み、翼の代わりに取り付けられたパンツァークリンゲでシュヴァルベ・ドライを強く打つ。質力が生み出す激しい衝撃で相手の動きが鈍ったところで、機関砲がその装甲をまだらに撃ち抜いた。
ぐら、と目の前の機体が揺れ、海へと墜ちてゆく。
それを見送りながら、無意識に止めていた呼吸を、ひとつ吐き出して。
シアンの明かりに照らされながら、自分の手を握って、開く。
それが「自分の手」であることが、まだ信じられない。グレムリンを駆る自分が「自分自身」であることが、まだ信じられない。
けれど、これは紛れもなく現実で。
――午前二時、三十一分。
視界の片隅の時計を確かめて、それから、空を見上げる。ディスプレイ越しの空は何を語ることもなく、ただ、ただ、そこに広がっていた。
* * *
静かに――なった。
がんがんと鳴り響いていた放送は止み、男から渡されたコートを肩から羽織ったミアは、その場に座り込んでいた。
果たして、あの男は無事なのだろうか。
そう思った瞬間、轟音がこちらに近づいてきた。
見れば、廃工場にあのグレムリンが戻ってきたのだった。最初にそれが置かれていたところに収まると、操縦棺が開き、白髪の男が床の上に降り立つ。
「大丈夫!?」
ミアは慌てて男に駆け寄るが、男の体に傷はない。男は髪に隠れていない右の目をぱちりと瞬いて、それから、低い声で言った。
「うん。攻めてきた機動体は、墜とした。しばらくは、大丈夫だ」
墜とした。あっさりと言ってのけたが、そう簡単な話ではない。もしそれが簡単なことであれば、未識別機動体に世界が蹂躙されることもなかったはずだ。
けれど、目の前の男と――このグレムリンには、その力がある、ということか。
ミアはぞくりとする。それは目の前にある圧倒的ともいえる「力」への恐怖か、それとも。
「あなた、何者なの? グレムリンはことごとく機能を停止してるはずなのに、どうしてグレムリンを動かせたの?」
ミアの矢継ぎ早の問いかけに対し、男はこくん、と首を傾げて。眉を顰めて、
「僕にも、わからない」
と、のたまうのだ。
ミアは目を丸くして、改めて男を見る。先ほどまで死線で戦っていたとは思えない、茫洋とした表情。つい、ミアは唇を尖らせる。
「わからないって、自分のことでしょ?」
「わからない、んだ。ここがどこなのかも、僕が、誰なのかも」
くしゃ、と髪に指を通して、男は途方に暮れた声音で言う。その場しのぎのごまかしにも見えない調子に、ミアまで途方に暮れてしまう。けれど、沈黙しているわけにもいかないから、何とか言葉を搾り出す。
「記憶喪失、ってこと?」
男は「きおく、そーしつ」とミアの言葉をぼんやり鸚鵡返しにして、それから曖昧に頷いた。
「じゃあ、どうして、グレムリンが動かせるのかもわからないんだ」
「わからない」
と答えた男は、しばらく口を噤んだ後、「でも」とぽつりと付け加えた。
「……僕は、きっと。これで戦うために、いる、んだと思う」
男が見上げる鳥型のグレムリンは何も語らない。ただ、ただ、その場に佇むのみ。ミアは噛み付くように問い返す。
「どうして、何も覚えてないのに、そんなことがわかるのさ」
「わかったわけ、じゃない、けど。戦えるなら、戦わなきゃ」
そう言う男は、もう、途方に暮れてなどいなかった。その目は凛として、ミアをじっと見据えている。
「僕はきっと、戦うことしか、できないけど。それが、誰かを、助けることになるなら」
髭に縁取られた薄い唇を、ほんの少しだけ、歪めて。
「嬉しい、から」
どきり、とした。
この世界は終わろうとしている。誰もが諦めようとしている。ミアだって、正直に言ってしまえば、ただ自分が生きるだけで精一杯だった。
けれど、この男は。戦う力を持った上で、その力を「誰か」のために振るうことを躊躇わないというのか。
馬鹿げている、と笑い飛ばすことだってできたはずだ。いくらグレムリンを操り、未識別機動体を倒す力があったとしても、ただ一人でどうこうすることなど、できやしない。
なのに、ミアの中には熱を帯びた思いが湧き出してくる。かつて見た、遠ざかっていく大きな背中の影のイメージと共に。
その、言葉にならない思いを持て余していると、男が唇を開く。
「行かなくちゃ」
「……え?」
「ここの他にも、敵が、いると思う、から」
男の目はもう、ミアを見てはいなかった。廃工場の外、虚空領域の戦場を見据えている。自分がいるべき場所を……、見つめて、いる。
それに気づいた瞬間に、もう、ミアはいても立ってもいられなくなっていた。
「だから、君は――」
「あたしも、連れてって!」
男の言葉を遮るように。ミアは、声を上げた。
男がもう一度視線をミアに戻す。ミアは唇を引き結び、男を見上げる。男は目に見えてうろたえた様子で、かろうじて一言だけを吐き出した。
「危険だ」
「危険は承知の上。それに、あなた、グレムリンに乗れても、整備はできるの?」
「せい、び?」
男がまた、ぼんやりとした声を上げる。これは絶対にわかっていない声だ。
「グレムリンだって、ただ乗り続けてたら疲労するばかりだし、敵によってはパーツを変える必要だってある。その知識があなたにある?」
男は口をぱくぱくさせるだけで何も言わなかったが、つまり「そんなこと知らない」ということだ。
ミアはわざとらしく溜息をついて、それからにっと歯を見せて笑ってみせる。
「だから、あたしも連れてって。絶対にお役に立つよ、何しろ、整備士なんだから」
本当は「見習い」だけれども。その言葉はぐっと飲み込む。
「けど」
「煮え切らないな! ダメって言っても勝手に乗り込むからね!」
言って、男が制する前に操縦棺を無理やり開く。通常、一人がぎりぎり乗れる程度のスペースしかない操縦棺だが、この機体の操縦棺は思ったよりも広く、男が操縦席に座った上でミアが乗り込むことも十分できそうだ。
身軽に操縦棺に滑り込んだミアに手を伸ばした男は、しかし、すぐに諦めたらしく手を下ろして、ゆっくりと首を振った。
「わかった。一緒に、行こう。それで、教えてほしい。ここのこと、グレムリンのこと、それから……、ええと、君の、ことも」
言って、男もまた、操縦棺に乗り込んでくる。全視界型ディスプレイの放つシアンの光に照らされた男の顔を見上げて、ミアは笑う。
「あたし、ミア。あなたは……、そっか、名前わかんないんだっけ」
「ああ。ただ、一つだけ、わかることがあって」
男の指先が、ミアの肩から垂れ下がるコートの襟元に向けられる。ミアが襟を引っ張ってみると、そこにはずんぐりとした鳥をモチーフとしたエンブレムと、小さな文字列が縫いとめられていた。その文字列を、指でなぞり。
「『スリーピング・レイル』?」
「気づいたら、着てた、から。これが、僕の、唯一の手がかり」
よく見れば、男が着ている防護服にも同じエンブレムが見える。描かれた鳥が妙にこのグレムリンの形に似ているのは偶然か否か。
「スリーピング・レイル……。どう考えても、人の名前じゃなさそうだけど」
「そう、かな?」
「そうなの。でも、あなたが嫌じゃなきゃいいや」
スリーピング・レイル。眠る水鳥。果たして、その名前が「何」に向けられたものなのかは、ミアにももちろんわからないけれど。
「じゃあ、レイル、って呼べばいい?」
そう問いかければ、男――レイルは、眩しそうに目を細めた。もしかすると、笑ったのかもしれなかった。
「うん。よろしく、ミアさん」
ミアさん。
その声の響きに妙にくすぐったいものを感じて、ミアは唇をふにゃふにゃさせる。レイルはそれに気づいているのかいないのか、操縦席に座ると、計器をおぼつかない手つきで弄り始める。
「それで、レイル。これからどこに行くの?」
「さっき、通信を受け取ったから、そこに、行ってみようと思う」
通信で受け取った座標をセットして。
ミアが座席にしがみついたのを確認して、レイルはグレムリンを発進させる。
「そういえば、このグレムリンの名前は? 呼び名がないと不便だと思うけど」
「『スリーピング・レイル』」
「なんでわざわざ同じ名前つけるの?」
「思い、つかなかったから……」
そんな、他愛も無い言葉を交わしながら、グレムリン『スリーピング・レイル』は二人を乗せて虚空領域を行く。
目指すは通信の出所――『継ぎ接ぎ幽霊船(パッチワーク・ゴーストシップ)』。
【Scene:0002 旅立ち】
NEWS
幕間の物語突然、グレイヴネット上に映像がジャックされて放映される
あちこちの広告やニュース、画像などが次々と塗り替えられていく
それはボロボロの帆船をイメージしたエンブレムだった
あなたは情報を求めて、あるいは他の理由で、あるいは強制的に
グレイヴネットに接続します

「認証に失敗。思念接続が汚染されています。システム再起動。認証を試みます……思念接続を確認。ようこそ、ようそこそ、よ」

「なんだい、電波ジャックかねぇ」

「我々は、世界に語り掛ける。我々は、君たちがジャンク財団と呼ぶものだ」

「!!??」

「私はジャンク財団の代表だ。この場を借りて、世界に宣告する」

「我々は、世界に対し、宣戦を布告する」

「無謀な行為にも思えるだろう。だが、覚えているはずだ」

「かつて、100機の悪鬼が世界を相手に戦い、それを……滅ぼしたことを」

「我々には、それができる。それを、証明しよう」

「我々の力、その一つ」

「信じられないかもしれんが、事実を伝えよう」

「我々は、未識別機動体を、すでに掌握し、制御している」

「馬鹿な! そんなこと、できるはずが……」

「信じたくないのも無理はない。しかし、事実だ。試してみるか?」

「赤の海、ヴァーム島沖合、東だ。未識別機動体を出現させる。そうだな、有名な防空巡洋艦だ」

「ライブカメラがあるだろう。定点観測のだ」

「ひっ、あの船影は……トリカゴ……」

「……ッ!!」

「結構『疲れる』のでな、これ以上はサービスはできないが」

「どうだね? 無限の軍勢、無限の戦力が我々にはある」

「抵抗など馬鹿らしいとは思わないかね?」

「さぁ、武器を捨てろ。投降を歓迎しようではないか」

「ほう……投降か」

「回りくどいことをするんだな」

「俺はてっきり、無限の軍勢で蹂躙するんだと思っていたのだがな」

「その方が楽だろう。痛みもなく、未識別機動体にやらせてな」

「何が言いたい」

「戦いを避けるのは、それにリスクがあるからだ」

「まさか、軍勢を少し動かすだけで、果てしなく『疲れる』んじゃないか?」

「それはお前の願望に過ぎない」

「すぐに現実を思い知ることになるだろう」

「ああ、俺たちはいつだって示してきたな。戦いの中で」

「愚か者に慈悲をかけても無意味であったな。そのまま消えろ」

「通信が切れたか」

「おっさん……ッ!!」

「(^-')☆彡(ウィンクのスタンプ)」

「じゃねぇだろ!! 勝算あんのかよ!!」

「世界を思うがままに操る。そんな輩に……明け渡す世界があるか?」

「腐った世界でも」

「壊れた世界でも」

「どうしようもない世界でも……」

「それぞれの世界を、それぞれが生きている。誰に渡すためのものでもない」

「そうは思わんか?」

「おっさん……ッ!!」

「(^-')☆彡(ウィンクのスタンプ)」

「しかし、こんな時にルキムラとジェトは何を……」
――時は加速し、その道を示す
――留まることはなく、旅立っていく渡り鳥のように
光り輝く要塞
いつまでもアナウンスが鳴り響く

「ピピーッ、ネコを確認。ネコを確認。異常なし、本日も異常なし……」
無機質な館内放送はいつまでも続いていた
◆アセンブル










◆僚機と合言葉
ネグロとバディを結成した!!
次回オークリーフ・レッドメールに協賛し、参戦します

「届けたいものがある。進路を開いてくれ」
移動
北↑へ移動し、タワー近海【漂着の海】へと到達した
ユニオン活動
パッチワーク・ゴーストシップの活動記録
迷子の迷子の幽霊船。継ぎ接ぎだらけの幽霊船。
仮初の船長と集まって来た人達を乗せ、目指すのは粉塵の果て、霧の果て――
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
戦艦をもとに継ぎ接ぎに足された船に乗る人達や、その船と情報交換してくれる人の集まり。
仮初の船長と集まって来た人達を乗せ、目指すのは粉塵の果て、霧の果て――
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
戦艦をもとに継ぎ接ぎに足された船に乗る人達や、その船と情報交換してくれる人の集まり。
メッセージ
ENo.96からのメッセージ>>
チャルミィ
「まあ!もしかして、御髪が傷んでいるのではありまてんこと?
ワテクシ、いいものをもっていますのよ」
\テテーンッ!!/
かわいいおもちゃの櫛だ
チャルミィ
「うふふンッ♪これでワテクシが
とかしてさしあげますわ!」
チャルミィ
「整備士の腕が時にはすべてを左右するものでしわ!
グレムリンじゃありまてんけれど、
ワテクシはアニマロイドですもの!
そういうことは知っておりましてよ」
チャルミィ
「同じ場所へ行ったとき……
そのときはワテクシが背中を守りますわ!!」
チャルミィ
「きっと届いてるはず……そう信じてますわ!
だからほかのアニマロイドを見かけたときには
ワテクシに教えてくださいませ」
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>>Eno.140

「まあ!もしかして、御髪が傷んでいるのではありまてんこと?
ワテクシ、いいものをもっていますのよ」

かわいいおもちゃの櫛だ

「うふふンッ♪これでワテクシが
とかしてさしあげますわ!」

「整備士の腕が時にはすべてを左右するものでしわ!
グレムリンじゃありまてんけれど、
ワテクシはアニマロイドですもの!
そういうことは知っておりましてよ」

「同じ場所へ行ったとき……
そのときはワテクシが背中を守りますわ!!」

「きっと届いてるはず……そう信じてますわ!
だからほかのアニマロイドを見かけたときには
ワテクシに教えてくださいませ」
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>>Eno.140
受信ログ
ENo.140からのメッセージ>>
ハンプバック
「『スリーピング・レイル』、か。
ああ、もちろん。いいだろう」
ハンプバック
「……記憶が無いとは、まったく不憫だね。
そんな状態で、よくグレムリンテイマーをやっているものだよ。
ただのヒューマンなら、搭乗前にまず怖気が先に来ると想定するのだが」
ハンプバック
「そこの、ミアくんだったか。
君はどう思っているのかな。傍らにいる彼の精神性、ってやつをさ」
送信ログ
>>Eno.96
スリーピング・レイル
「ふんわりさん、かぁ……」

軽く、髪を弄る。
癖のある、ぱさついた白髪は、あなたの毛並みには到底及ばないだろうが。
ミア
「そう思ってもらえると嬉しいな。あたしはレイルみたいには戦えないけど、それでも、出来る限り頑張ってるつもりだから」
スリーピング・レイル
「そうだな。僕も、いつか、チャルミィさんと一緒に戦えると、心強いと思うよ」
スリーピング・レイル
「これからも、チャルミィさんが、いっぱい活躍して……、他のアニマロイドと、その持ち主さん? にも、評判が届くといいな」
ミア
「あたしもそう思うし、チャルミィちゃんに協力できたらいいなって思うよ!」
ENo.140からのメッセージ>>

「『スリーピング・レイル』、か。
ああ、もちろん。いいだろう」

「……記憶が無いとは、まったく不憫だね。
そんな状態で、よくグレムリンテイマーをやっているものだよ。
ただのヒューマンなら、搭乗前にまず怖気が先に来ると想定するのだが」

「そこの、ミアくんだったか。
君はどう思っているのかな。傍らにいる彼の精神性、ってやつをさ」
送信ログ
>>Eno.96

「ふんわりさん、かぁ……」

軽く、髪を弄る。
癖のある、ぱさついた白髪は、あなたの毛並みには到底及ばないだろうが。

「そう思ってもらえると嬉しいな。あたしはレイルみたいには戦えないけど、それでも、出来る限り頑張ってるつもりだから」

「そうだな。僕も、いつか、チャルミィさんと一緒に戦えると、心強いと思うよ」

「これからも、チャルミィさんが、いっぱい活躍して……、他のアニマロイドと、その持ち主さん? にも、評判が届くといいな」

「あたしもそう思うし、チャルミィちゃんに協力できたらいいなって思うよ!」
◆10回更新のメッセログ
受信ログ
ENo.96からのメッセージ>>
チャルミィ
「髪もゆるゆるっとしてますもの!
ふんわりさんでぴったりでしわ!」
チャルミィ
「うふふンッ♪
空っぽのグレムリンじゃいけませんものね!
ミアがいないスリーピング・レイルはきっとすぐに
錆びついてしまいますわ」
チャルミィ
「なかなか同じ場所へ行くことがありまてんけど、
きっとすごぉ~い活躍をするんでしょう?
実際に見てみたいでしわ!」
チャルミィ
「ワテクシも日々活躍していますわ!」
チャルミィ
「だからほかのアニマロイドをお持ちの方はもしかしたら
それを見てここにいるよ!って言ってくれるかも
しれないって思っているんですの」
送信ログ
>>Eno.140
スリーピング・レイル
「……ありがとう。
そちらの探しものについて、わかったことがあればすぐ連絡する」
ミア
「無責任なこと言うものじゃないと思うけどな……」
スリーピング・レイル
「代わりに、ひとつ。お願いが、あって」
スリーピング・レイル
「僕と、グレムリンの、名前。『スリーピング・レイル』。
もしもその言葉を僕たち以外の誰かから聞いたら、教えてほしい」
スリーピング・レイル
「変なお願いだと思うけれど。
僕は、この名前とグレムリン以外に何も持っていなくて」
スリーピング・レイル
「だから、『僕』についての手がかりが欲しい。
……お願い、します」
ENo.96からのメッセージ>>

「髪もゆるゆるっとしてますもの!
ふんわりさんでぴったりでしわ!」

「うふふンッ♪
空っぽのグレムリンじゃいけませんものね!
ミアがいないスリーピング・レイルはきっとすぐに
錆びついてしまいますわ」

「なかなか同じ場所へ行くことがありまてんけど、
きっとすごぉ~い活躍をするんでしょう?
実際に見てみたいでしわ!」

「ワテクシも日々活躍していますわ!」

「だからほかのアニマロイドをお持ちの方はもしかしたら
それを見てここにいるよ!って言ってくれるかも
しれないって思っているんですの」
送信ログ
>>Eno.140

「……ありがとう。
そちらの探しものについて、わかったことがあればすぐ連絡する」

「無責任なこと言うものじゃないと思うけどな……」

「代わりに、ひとつ。お願いが、あって」

「僕と、グレムリンの、名前。『スリーピング・レイル』。
もしもその言葉を僕たち以外の誰かから聞いたら、教えてほしい」

「変なお願いだと思うけれど。
僕は、この名前とグレムリン以外に何も持っていなくて」

「だから、『僕』についての手がかりが欲しい。
……お願い、します」
◆9回更新のメッセログ
受信ログ
ENo.140からのメッセージ>>
ハンプバック
「ふむ………」
不意に生じた間。通信先の相手の反応を、ハンプバックは確かに感じ取った。
考え事をしていたのか、通信が僅かに沈黙する。
……その後に紡がれた言葉は、やけに声高だった。
ハンプバック
「ああ、よろしく頼むよ!スリーピング・レイルくん!
協力してもらえるなら、代わりに君達への協力も惜しまないぜ」
送信ログ
>>Eno.96
スリーピング・レイル
「ふんわりさん。ぼんやりさんよりは、いいかな……」
ミア
「そういうところが『ぼんやりさん』なんだと思うよ」
スリーピング・レイル
「操縦棺のないグレムリン。そうかもしれない。
僕一人では、到底、戦い抜くことは難しい、から。
ミアさんがいてくれてこそ、なのは、わかるよ」
ミア
「もうちょっと、一人でも頑張ろうっていう気概はないの?」
スリーピング・レイル
「でも、そうか。アニマロイド、というのは、たくさんいたんだな。
他のアニマロイドも、見てみたいな……」
ミア
「そうだね、チャルミィちゃんみたいな子がいっぱいいるってことだもんね。
でも、みんな、どこにいっちゃったのかな?」
ENo.140からのメッセージ>>

「ふむ………」

考え事をしていたのか、通信が僅かに沈黙する。
……その後に紡がれた言葉は、やけに声高だった。

「ああ、よろしく頼むよ!スリーピング・レイルくん!
協力してもらえるなら、代わりに君達への協力も惜しまないぜ」
送信ログ
>>Eno.96

「ふんわりさん。ぼんやりさんよりは、いいかな……」

「そういうところが『ぼんやりさん』なんだと思うよ」

「操縦棺のないグレムリン。そうかもしれない。
僕一人では、到底、戦い抜くことは難しい、から。
ミアさんがいてくれてこそ、なのは、わかるよ」

「もうちょっと、一人でも頑張ろうっていう気概はないの?」

「でも、そうか。アニマロイド、というのは、たくさんいたんだな。
他のアニマロイドも、見てみたいな……」

「そうだね、チャルミィちゃんみたいな子がいっぱいいるってことだもんね。
でも、みんな、どこにいっちゃったのかな?」
◆8回更新のメッセログ
受信ログ
ENo.96からのメッセージ>>
チャルミィ
「ぼんやりさんがお嫌なら、
ふんわりさん!とかどうですかしら?」
チャルミィ
「うふふンッ♪ミアがいないぼんやりさんなレイルは
操縦棺のないグレムリンみたいなものですわ!」
チャルミィ
「うふふンッ♪
今のはうまく例えたつもりですけれど!」
チャルミィ
「アニマロイドはそれはそれはたくさんいて、
みんな手を引いて歩いていたものですわ」
チャルミィ
「ミアもワテクシのことをほめてくれているのだから、
ほかのアニマロイドのこともきっと気に入るわ!」
チャルミィ
「確かに今はぜんぜん見かけませんけれど……
たっくさんのアニマロイドたちがいましたもの!
きっとどこかに隠れてますのね。
だってほら、コンテナを狙う人とかおりますものね」
送信ログ
>>Eno.140
スリーピング・レイル
「いや、こちらこそ、お力になれず申し訳ない」
スリーピング・レイル
「何か……わかることがあれば、伝えようと思う。『天然身体の子』のこと。彼ら目当ての闇市とか……、“蒐集家”と呼ばれるひとの、こと」
ミア
「…………」
スリーピング・レイル
「ミアさん?」
ミア
「あっ、えーと、何でもないです!
早く、見つかるといいですね!」
スリーピング・レイル
「…………?」
ミア
「(天然身体。そっか、そうやって、探されるようなものなんだよね……。
生まれながらの体をずうっと使ってるあたしも、それに、多分、レイルも)」
ENo.96からのメッセージ>>

「ぼんやりさんがお嫌なら、
ふんわりさん!とかどうですかしら?」

「うふふンッ♪ミアがいないぼんやりさんなレイルは
操縦棺のないグレムリンみたいなものですわ!」

「うふふンッ♪
今のはうまく例えたつもりですけれど!」

「アニマロイドはそれはそれはたくさんいて、
みんな手を引いて歩いていたものですわ」

「ミアもワテクシのことをほめてくれているのだから、
ほかのアニマロイドのこともきっと気に入るわ!」

「確かに今はぜんぜん見かけませんけれど……
たっくさんのアニマロイドたちがいましたもの!
きっとどこかに隠れてますのね。
だってほら、コンテナを狙う人とかおりますものね」
送信ログ
>>Eno.140

「いや、こちらこそ、お力になれず申し訳ない」

「何か……わかることがあれば、伝えようと思う。『天然身体の子』のこと。彼ら目当ての闇市とか……、“蒐集家”と呼ばれるひとの、こと」

「…………」

「ミアさん?」

「あっ、えーと、何でもないです!
早く、見つかるといいですね!」

「…………?」

「(天然身体。そっか、そうやって、探されるようなものなんだよね……。
生まれながらの体をずうっと使ってるあたしも、それに、多分、レイルも)」
◆7回更新のメッセログ
受信ログ
ENo.15からのメッセージ>>
ミア
「レイル。ネグロさんと、連絡ついた?」
スリーピング・レイル
「ああ。それで……、巨大未識別と、戦う、かもしれない」
ミア
「はあ!? それ、一体どういうこと!?」
スリーピング・レイル
「そういうこと、だから。僕はネグロさんと一緒に、戦う、準備を、する。
ミアさんも、手伝ってほしい」
ミア
「だから、一体どういう……!」
スリーピング・レイル
「頼む」
ミア
「……もう。レイルって、いざってとき全然人の話聞かないよね」
スリーピング・レイル
「そうかな」
ミア
「そうなの! もー、全然わかってないって顔するんだもん、やんなっちゃう!」
ENo.140からのメッセージ>>
ハンプバック
「……おっと、存じ上げなかったか。失敬失敬。」
ハンプバック
「知らないなら知らないで問題は無いぜ。
いずれ知ることもあるだろう」
ハンプバック
「まあ、ボクが探し求めている貴重なモノとだけ覚えてくれればいいさ」
ハンプバック
「(彼が天然身体である可能性も考えたが……通信越しでは把握しかねるな)」
送信ログ
>>Eno.96
スリーピング・レイル
「そんなに、僕、ぼんやりしてる、かな……」
ミア
「その発言がすでにぼんやりしてることの証拠だと思うけど?」
スリーピング・レイル
「だけど、そう、ミアさんには、とてもお世話になってる。
しっかりしてるし、整備もきちんとしてくれる。
僕に足らないことを、担ってくれる、大切なひとだ」
ミア
「な……っ! いきなり褒めても、何も出ないんだからね!?」
スリーピング・レイル
「でも……そうか。アニマロイド、というのはたくさんいたんだな。
僕が出会ったのは、チャルミィさんが初めて、だけど……」
ミア
「あたしも、知らないなあ……。
こんなに素敵な子、知ってたらほっとかないもん」
スリーピング・レイル
「ミアさんが言うと、何か説得力あるな」
>>Eno.15
ミア
「レイル。ネグロさんと、連絡ついた?」
スリーピング・レイル
「ああ。それで……、巨大未識別と、戦う、かもしれない」
ミア
「はあ!? それ、一体どういうこと!?」
スリーピング・レイル
「そういうこと、だから。僕はネグロさんと一緒に、戦う、準備を、する。
ミアさんも、手伝ってほしい」
ミア
「だから、一体どういう……!」
スリーピング・レイル
「頼む」
ミア
「……もう。レイルって、いざってとき全然人の話聞かないよね」
スリーピング・レイル
「そうかな」
ミア
「そうなの! もー、全然わかってないって顔するんだもん、やんなっちゃう!」
ENo.15からのメッセージ>>

「レイル。ネグロさんと、連絡ついた?」

「ああ。それで……、巨大未識別と、戦う、かもしれない」

「はあ!? それ、一体どういうこと!?」

「そういうこと、だから。僕はネグロさんと一緒に、戦う、準備を、する。
ミアさんも、手伝ってほしい」

「だから、一体どういう……!」

「頼む」

「……もう。レイルって、いざってとき全然人の話聞かないよね」

「そうかな」

「そうなの! もー、全然わかってないって顔するんだもん、やんなっちゃう!」
ENo.140からのメッセージ>>

「……おっと、存じ上げなかったか。失敬失敬。」

「知らないなら知らないで問題は無いぜ。
いずれ知ることもあるだろう」

「まあ、ボクが探し求めている貴重なモノとだけ覚えてくれればいいさ」

「(彼が天然身体である可能性も考えたが……通信越しでは把握しかねるな)」
送信ログ
>>Eno.96

「そんなに、僕、ぼんやりしてる、かな……」

「その発言がすでにぼんやりしてることの証拠だと思うけど?」

「だけど、そう、ミアさんには、とてもお世話になってる。
しっかりしてるし、整備もきちんとしてくれる。
僕に足らないことを、担ってくれる、大切なひとだ」

「な……っ! いきなり褒めても、何も出ないんだからね!?」

「でも……そうか。アニマロイド、というのはたくさんいたんだな。
僕が出会ったのは、チャルミィさんが初めて、だけど……」

「あたしも、知らないなあ……。
こんなに素敵な子、知ってたらほっとかないもん」

「ミアさんが言うと、何か説得力あるな」
>>Eno.15

「レイル。ネグロさんと、連絡ついた?」

「ああ。それで……、巨大未識別と、戦う、かもしれない」

「はあ!? それ、一体どういうこと!?」

「そういうこと、だから。僕はネグロさんと一緒に、戦う、準備を、する。
ミアさんも、手伝ってほしい」

「だから、一体どういう……!」

「頼む」

「……もう。レイルって、いざってとき全然人の話聞かないよね」

「そうかな」

「そうなの! もー、全然わかってないって顔するんだもん、やんなっちゃう!」
◆6回更新のメッセログ
受信ログ
ENo.15からのメッセージ>>
スリーピング・レイル
「…………………………」
頭に響く声
「……、応答しろ、どうして、こんな……」
頭に響く声
「次のミッションを伝える……、……死を恐れるな……」
頭に響く声
「死ぬときは一緒だよ……、なんてね……」
頭に響く声
「……計画は、次の段階に移行する……」
スリーピング・レイル
「僕の頭で喋ってるのは……誰だ……?」
ENo.96からのメッセージ>>
チャルミィ
「そうですわ。
このままではお二人とも手を振ってしまいますわね」
チャルミィ
「うふふンッ♪
大丈夫ですわ、ミア。
そうだわ!ぼんやりさんの方のレイル、
って呼べば機体と間違いませんわね!」
チャルミィ
「ミアはしっかりしているんですのね。
どんなにいい機体でも整備をしなければ
ガラクタになってしまいましわ」
チャルミィ
「うふふンッ♪ こうやってお話もきて
グレムリンにも乗れるアニマロイドは
きっとワテクシだけですわ!」
チャルミィ
「ああ、でもアニマロイドはたくさん居たんですのよ?
けれど全然見かけませんわね。
ミアとぼんやりさんのレイルも
アニマロイドをご存じないようですし」
送信ログ
>>Eno.140
スリーピング・レイル
「目立ちたがり屋。その発想は、なかったな……」
ミア
「人から見たらそう見えるってこと。
だから『グレムリンと操縦者が同じ名前』なんて普通じゃないんだってば」
スリーピング・レイル
「……戦う理由。確かにそうか。
不躾な質問だったかもしれない」
ミア
「お金は、大切ですよね、何をするにも必要ですもの。
養うもの、があるなら尚更です」
スリーピング・レイル
「それで、ミアさん、『天然身体』って、何?」
ミア
「ごめんなさい、この人、ちょっと常識がなってなくて……」
ミア
「でも、ちょっと、あたしたちは知らない、です。
闇市も、“蒐集家”も。ご協力できなくてすみません……」
スリーピング・レイル
「ミアさん、」
ミア
「レイルはちょっと黙ってて」
>>Eno.15
スリーピング・レイル
「…………………………」
頭に響く声
「……、応答しろ、どうして、こんな……」
頭に響く声
「次のミッションを伝える……、……死を恐れるな……」
頭に響く声
「死ぬときは一緒だよ……、なんてね……」
頭に響く声
「……計画は、次の段階に移行する……」
スリーピング・レイル
「僕の頭で喋ってるのは……誰だ……?」
ENo.15からのメッセージ>>

「…………………………」

「……、応答しろ、どうして、こんな……」

「次のミッションを伝える……、……死を恐れるな……」

「死ぬときは一緒だよ……、なんてね……」

「……計画は、次の段階に移行する……」

「僕の頭で喋ってるのは……誰だ……?」
ENo.96からのメッセージ>>

「そうですわ。
このままではお二人とも手を振ってしまいますわね」

「うふふンッ♪
大丈夫ですわ、ミア。
そうだわ!ぼんやりさんの方のレイル、
って呼べば機体と間違いませんわね!」

「ミアはしっかりしているんですのね。
どんなにいい機体でも整備をしなければ
ガラクタになってしまいましわ」

「うふふンッ♪ こうやってお話もきて
グレムリンにも乗れるアニマロイドは
きっとワテクシだけですわ!」

「ああ、でもアニマロイドはたくさん居たんですのよ?
けれど全然見かけませんわね。
ミアとぼんやりさんのレイルも
アニマロイドをご存じないようですし」
送信ログ
>>Eno.140

「目立ちたがり屋。その発想は、なかったな……」

「人から見たらそう見えるってこと。
だから『グレムリンと操縦者が同じ名前』なんて普通じゃないんだってば」

「……戦う理由。確かにそうか。
不躾な質問だったかもしれない」

「お金は、大切ですよね、何をするにも必要ですもの。
養うもの、があるなら尚更です」

「それで、ミアさん、『天然身体』って、何?」

「ごめんなさい、この人、ちょっと常識がなってなくて……」

「でも、ちょっと、あたしたちは知らない、です。
闇市も、“蒐集家”も。ご協力できなくてすみません……」

「ミアさん、」

「レイルはちょっと黙ってて」
>>Eno.15

「…………………………」

「……、応答しろ、どうして、こんな……」

「次のミッションを伝える……、……死を恐れるな……」

「死ぬときは一緒だよ……、なんてね……」

「……計画は、次の段階に移行する……」

「僕の頭で喋ってるのは……誰だ……?」
◆5回更新のメッセログ
受信ログ
ENo.15からのメッセージ>>
通信
「ミア、無事でよかった」
通信
「俺たちも今のところ何とか無事でやってる。未識別機動体と戦ってる連中のおかげだな」
通信
「それと、わかっているよな。ルーカスはもういない。いないんだ、どこにも」
通信
「どうか、これからも無事でいてくれ。俺たちは、ミアの帰りを待っている」
通信
「ミアと一緒にいるテイマー。スリーピング・レイルといったか」
通信
「どうか、ミアを守ってやってくれ。頼んだぞ」
ミア
「……………………」
スリーピング・レイル
「ミアさん、ルーカスって、誰だ?」
ミア
「あたしの、父さん。翡翠のテイマーだったんだ。死んじゃったけどね」
スリーピング・レイル
「……ルーカス、か……」
ミア
「レイル?」
スリーピング・レイル
「なんでもない。……なんでも、ないよ」
ENo.140からのメッセージ>>
ハンプバック
「スリーピング・レイルに、ミアか。記憶しておこう。
それにしても……グレムリンと同じ名とは面白いな。
意外と目立ちたがり屋かい?通信の限りでは、そうは見えないが」
ハンプバック
「……いいかな、レイル氏。
戦う理由は、あまり安易に尋ねないほうが良い。」
ハンプバック
「例えば、親類が亡くなって後継として乗らざるを得ない場合もある。
未識別機動体が憎くてしょうがなくとも、グレムリンに頼らざるを得ない場合だってある。
人によってはトラウマを誘発する可能性もあるだろう?」
ハンプバック
「まあ、ボクに関してはそんなことは無いのだがね!
ボクの戦う理由はシンプル。『金を稼ぐこと』さ」
ハンプバック
「と言っても、ただ闇雲に稼いでいるわけでもない。
ボクには養わないといけないものがあるのさ。」
ハンプバック
「……ところでヒューマン諸君、
『天然身体の子』について何か知っているかい?
噂程度で構わない。
彼ら目当ての闇市だとか、”蒐集家”について知っているとありがたいんだが」
送信ログ
>>Eno.96
スリーピング・レイル
「……正直、僕とグレムリンが『別』ってことを、よく考えたことがなかった。
呼ばれたら、どっちが手を振るべきなんだろう。わからないな……」
ミア
「ごめんね、チャルミィちゃん。
このひと、ちょっと、頭がぼんやりしてるの」
ミア
「うん、あたしはグレムリン『スリーピング・レイル』の整備を担当してるんだ」
ミア
「まあ、人間のレイルの世話もしてるから、ある意味どっちの整備も担当してるようなもの、かもしれないけど……」
スリーピング・レイル
「チャルミィさんは、あにまろいど……、ロボット、なのか。ひと、みたいだ。
グレムリンにも乗れるんだから、すごいな」
ミア
「ほんとに! すっごく高性能だよ~! その上かわいくてもふもふとか最高~!」
>>Eno.15
通信
「ミア、無事でよかった」
通信
「俺たちも今のところ何とか無事でやってる。未識別機動体と戦ってる連中のおかげだな」
通信
「それと、わかっているよな。ルーカスはもういない。いないんだ、どこにも」
通信
「どうか、これからも無事でいてくれ。俺たちは、ミアの帰りを待っている」
通信
「ミアと一緒にいるテイマー。スリーピング・レイルといったか」
通信
「どうか、ミアを守ってやってくれ。頼んだぞ」
ミア
「……………………」
スリーピング・レイル
「ミアさん、ルーカスって、誰だ?」
ミア
「あたしの、父さん。翡翠のテイマーだったんだ。死んじゃったけどね」
スリーピング・レイル
「……ルーカス、か……」
ミア
「レイル?」
スリーピング・レイル
「なんでもない。……なんでも、ないよ」
>>Eno.51
スリーピング・レイル
「そうだな。ネグロさんの言う通り、だとは思う」
スリーピング・レイル
「僕だって死ぬつもりはないよ。誰かを理由にして、死にたいと願っているわけでもない」
スリーピング・レイル
「でも、『そう見える』と言われたら、否定は、できない」
スリーピング・レイル
「……戦場で、迷惑はかけないように、気を付けるよ」

そして、ある夜の話へ。――【Scene:0005 眠れぬ夜】
ENo.15からのメッセージ>>

「ミア、無事でよかった」

「俺たちも今のところ何とか無事でやってる。未識別機動体と戦ってる連中のおかげだな」

「それと、わかっているよな。ルーカスはもういない。いないんだ、どこにも」

「どうか、これからも無事でいてくれ。俺たちは、ミアの帰りを待っている」

「ミアと一緒にいるテイマー。スリーピング・レイルといったか」

「どうか、ミアを守ってやってくれ。頼んだぞ」

「……………………」

「ミアさん、ルーカスって、誰だ?」

「あたしの、父さん。翡翠のテイマーだったんだ。死んじゃったけどね」

「……ルーカス、か……」

「レイル?」

「なんでもない。……なんでも、ないよ」
ENo.140からのメッセージ>>

「スリーピング・レイルに、ミアか。記憶しておこう。
それにしても……グレムリンと同じ名とは面白いな。
意外と目立ちたがり屋かい?通信の限りでは、そうは見えないが」

「……いいかな、レイル氏。
戦う理由は、あまり安易に尋ねないほうが良い。」

「例えば、親類が亡くなって後継として乗らざるを得ない場合もある。
未識別機動体が憎くてしょうがなくとも、グレムリンに頼らざるを得ない場合だってある。
人によってはトラウマを誘発する可能性もあるだろう?」

「まあ、ボクに関してはそんなことは無いのだがね!
ボクの戦う理由はシンプル。『金を稼ぐこと』さ」

「と言っても、ただ闇雲に稼いでいるわけでもない。
ボクには養わないといけないものがあるのさ。」

「……ところでヒューマン諸君、
『天然身体の子』について何か知っているかい?
噂程度で構わない。
彼ら目当ての闇市だとか、”蒐集家”について知っているとありがたいんだが」
送信ログ
>>Eno.96

「……正直、僕とグレムリンが『別』ってことを、よく考えたことがなかった。
呼ばれたら、どっちが手を振るべきなんだろう。わからないな……」

「ごめんね、チャルミィちゃん。
このひと、ちょっと、頭がぼんやりしてるの」

「うん、あたしはグレムリン『スリーピング・レイル』の整備を担当してるんだ」

「まあ、人間のレイルの世話もしてるから、ある意味どっちの整備も担当してるようなもの、かもしれないけど……」

「チャルミィさんは、あにまろいど……、ロボット、なのか。ひと、みたいだ。
グレムリンにも乗れるんだから、すごいな」

「ほんとに! すっごく高性能だよ~! その上かわいくてもふもふとか最高~!」
>>Eno.15

「ミア、無事でよかった」

「俺たちも今のところ何とか無事でやってる。未識別機動体と戦ってる連中のおかげだな」

「それと、わかっているよな。ルーカスはもういない。いないんだ、どこにも」

「どうか、これからも無事でいてくれ。俺たちは、ミアの帰りを待っている」

「ミアと一緒にいるテイマー。スリーピング・レイルといったか」

「どうか、ミアを守ってやってくれ。頼んだぞ」

「……………………」

「ミアさん、ルーカスって、誰だ?」

「あたしの、父さん。翡翠のテイマーだったんだ。死んじゃったけどね」

「……ルーカス、か……」

「レイル?」

「なんでもない。……なんでも、ないよ」
>>Eno.51

「そうだな。ネグロさんの言う通り、だとは思う」

「僕だって死ぬつもりはないよ。誰かを理由にして、死にたいと願っているわけでもない」

「でも、『そう見える』と言われたら、否定は、できない」

「……戦場で、迷惑はかけないように、気を付けるよ」

そして、ある夜の話へ。――【Scene:0005 眠れぬ夜】
◆4回更新のメッセログ
受信ログ
ENo.15からのメッセージ>>
スリーピング・レイル
「…………」
ミア
「どうしたの、レイル。真剣な顔してコンソール叩いて」
スリーピング・レイル
「少し、……調べ物を、していた」
ミア
「調べ物? 何調べてたの?」
スリーピング・レイル
「『スリーピング・レイル』について」
ミア
「レイルについてって、どゆこと?」
スリーピング・レイル
「僕の、エンブレム。エンブレムに刻まれてた、『スリーピング・レイル』という言葉。……きっと、誰かのもの、なんだよな。記憶を失う前の『僕』かもしれないし、そうじゃないかもしれない」
ミア
「レイル、……気になるんだ、やっぱり」
スリーピング・レイル
「でも、何も、見つからないな。調べ方が悪いのかな」
ミア
「レイル、そういうの下手くそそうだもんね~」
ENo.51からのメッセージ>>
ネグロ
「何のつもりだ。訳知り顔で言いやがって。お前が俺の何を知ってるってんだ」
ネグロ
「テメェの死ぬ理由に他人を使うのは勝手だが俺を巻き込むじゃねえよ。俺は死ぬつもりはない。たとえこの世が地獄だとしてもな」
ネグロ
「逃げねえっていうならせいぜい働くんだな。どうせ、戦場以外じゃ何も出来ねえんだからよ」
ENo.96からのメッセージ>>
チャルミィ
「まあ!機体のお名前も、あなたのお名前も<BR>
スリーピング・レイルとおっしゃるの?
それじゃあ遠くから呼びかけたときに両方とも
手を振ってしまわないかちら?」
チャルミィ
「よろしくですわ!ミア、って呼んでもよろしいかしら?
それに整備士なのね、スリーピング・レイルの整備をしているの?
あ、今のは機体の方のスリーピング・レイルですわ」
チャルミィ
「うふふンッ♪ワテクシはもふもふのアンドロイドですの!
アニマロイドという製品で、超高性能!
そして超高品質もふもふですの」
チャルミィ
「ほら、経年劣化してない。
ふわっふわのモフモフでしょう?うふふンッ♪」
送信ログ
>>Eno.140
スリーピング・レイル
「ふぁーた・めがぷてら……。不思議な響きの名前。あなたも、不思議な姿を、しているように、見える。不思議だ」
スリーピング・レイル
「僕は、スリーピング・レイル。それから、この、グレムリンの名前も同じ」
ミア
「あたしはミアっていいます。グレムリン『スリーピング・レイル』専属の整備士ってところですね!」
スリーピング・レイル
「僕らは、未識別機動体と、戦ってて。戦わなきゃと、思ってて。多分、ハンプバックさん? も、そうなのかな」
スリーピング・レイル
「それとも、グレムリンテイマーにも、色々、いるのかな。僕は、よく、知らないんだ。その……、何も、覚えてなくて」
スリーピング・レイル
「だから。……ハンプバックさんのお話、もう少し、聞かせてもらってもいいだろうか。どうして、戦っているのか、とか」
>>Eno.15
スリーピング・レイル
「…………」
ミア
「どうしたの、レイル。真剣な顔してコンソール叩いて」
スリーピング・レイル
「少し、……調べ物を、していた」
ミア
「調べ物? 何調べてたの?」
スリーピング・レイル
「『スリーピング・レイル』について」
ミア
「レイルについてって、どゆこと?」
スリーピング・レイル
「僕の、エンブレム。エンブレムに刻まれてた、『スリーピング・レイル』という言葉。……きっと、誰かのもの、なんだよな。記憶を失う前の『僕』かもしれないし、そうじゃないかもしれない」
ミア
「レイル、……気になるんだ、やっぱり」
スリーピング・レイル
「でも、何も、見つからないな。調べ方が悪いのかな」
ミア
「レイル、そういうの下手くそそうだもんね~」
ENo.15からのメッセージ>>

「…………」

「どうしたの、レイル。真剣な顔してコンソール叩いて」

「少し、……調べ物を、していた」

「調べ物? 何調べてたの?」

「『スリーピング・レイル』について」

「レイルについてって、どゆこと?」

「僕の、エンブレム。エンブレムに刻まれてた、『スリーピング・レイル』という言葉。……きっと、誰かのもの、なんだよな。記憶を失う前の『僕』かもしれないし、そうじゃないかもしれない」

「レイル、……気になるんだ、やっぱり」

「でも、何も、見つからないな。調べ方が悪いのかな」

「レイル、そういうの下手くそそうだもんね~」
ENo.51からのメッセージ>>

「何のつもりだ。訳知り顔で言いやがって。お前が俺の何を知ってるってんだ」

「テメェの死ぬ理由に他人を使うのは勝手だが俺を巻き込むじゃねえよ。俺は死ぬつもりはない。たとえこの世が地獄だとしてもな」

「逃げねえっていうならせいぜい働くんだな。どうせ、戦場以外じゃ何も出来ねえんだからよ」
ENo.96からのメッセージ>>

「まあ!機体のお名前も、あなたのお名前も<BR>
スリーピング・レイルとおっしゃるの?
それじゃあ遠くから呼びかけたときに両方とも
手を振ってしまわないかちら?」

「よろしくですわ!ミア、って呼んでもよろしいかしら?
それに整備士なのね、スリーピング・レイルの整備をしているの?
あ、今のは機体の方のスリーピング・レイルですわ」

「うふふンッ♪ワテクシはもふもふのアンドロイドですの!
アニマロイドという製品で、超高性能!
そして超高品質もふもふですの」

「ほら、経年劣化してない。
ふわっふわのモフモフでしょう?うふふンッ♪」
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>>Eno.140

「ふぁーた・めがぷてら……。不思議な響きの名前。あなたも、不思議な姿を、しているように、見える。不思議だ」

「僕は、スリーピング・レイル。それから、この、グレムリンの名前も同じ」

「あたしはミアっていいます。グレムリン『スリーピング・レイル』専属の整備士ってところですね!」

「僕らは、未識別機動体と、戦ってて。戦わなきゃと、思ってて。多分、ハンプバックさん? も、そうなのかな」

「それとも、グレムリンテイマーにも、色々、いるのかな。僕は、よく、知らないんだ。その……、何も、覚えてなくて」

「だから。……ハンプバックさんのお話、もう少し、聞かせてもらってもいいだろうか。どうして、戦っているのか、とか」
>>Eno.15

「…………」

「どうしたの、レイル。真剣な顔してコンソール叩いて」

「少し、……調べ物を、していた」

「調べ物? 何調べてたの?」

「『スリーピング・レイル』について」

「レイルについてって、どゆこと?」

「僕の、エンブレム。エンブレムに刻まれてた、『スリーピング・レイル』という言葉。……きっと、誰かのもの、なんだよな。記憶を失う前の『僕』かもしれないし、そうじゃないかもしれない」

「レイル、……気になるんだ、やっぱり」

「でも、何も、見つからないな。調べ方が悪いのかな」

「レイル、そういうの下手くそそうだもんね~」
◆3回更新のメッセログ
受信ログ
ENo.15からのメッセージ>>
ミア
「勝手に飛び出してごめんね、みんな」
ミア
「でも、心配しないで。元気にやってるから」
ミア
「あたし、今、スリーピング・レイルっていうグレムリンテイマーと一緒に、あちこちを巡ってるところ。何だか、危なっかしくて、ほっとけなくてさ」
ミア
「それに、あちこち巡っていたら、もしかしたら……、ううん、なんでもない」
ミア
「とにかく、あたしは大丈夫! また連絡するね! じゃあね!」
スリーピング・レイル
「ミアさん、どこに、通信してたの?」
ミア
「お世話になってた整備工場! 勝手に出てきちゃったからさ」
スリーピング・レイル
「……帰らなくて、大丈夫なのか?」
ミア
「うん。何よりも、レイルが心配だしね」
スリーピング・レイル
「僕、信用ない、んだな……」
ENo.140からのメッセージ>>
ハンプバック
「ハロー、ヒューマン。
こちらファータ・メガプテラ、どうぞ。」
ハンプバック
「……ほう?
通信ミスとは可愛らしいアクシデントだね。」
ハンプバック
「ボクは……ここいらではハンプバックと名乗っている者だ。
しがないグレムリン乗りといったところか。」
ハンプバック
「『グレムリンテイマー』、良い響きだ。
整備の心得があるガラクタ漁りなんて、おおよそ名乗り難いものだからね!」
ハンプバック
「そしてキミらが通信を受けている『彼女』がファータ・メガプテラ。
空を華麗に駆ける可愛らしい機体(いきもの)さ。
さて、これだけ話したんだ。
キミらの事もボクと彼女に教えてもらえないかい、ヒューマン?」
送信ログ
>>Eno.51
スリーピング・レイル
「ねぼすけ、やろう……」
スリーピング・レイル
「余計なことを、する気は、ないけど、戦場に赴く以上は、戦う。それだけ」
スリーピング・レイル
「何も知らないのは事実だけど、僕には、戦う力しかなくて、ここに戦場があって」
スリーピング・レイル
「その上でただ黙って震えている、ということは。僕には、できそうもない」
スリーピング・レイル
「もちろん、戦うのが好き、なわけではない。でも、それは……ネグロさんだって、同じじゃないか?」
>>Eno.96
スリーピング・レイル
「チャルミィ、さん。僕の声が聞こえてたなら、何よりだ」
ミア
「わ、かわいい……! もふもふだぁ!」
スリーピング・レイル
「僕とこの機体は『スリーピング・レイル』。それから、こっちは整備士のミア」
ミア
「よろしくね、チャルミィちゃん」
スリーピング・レイル
「それで……、チャルミィさんは、もふもふの、ヒトなのかな」
ミア
「それは違うと思うよ?」
スリーピング・レイル
「そういうひとも、いるのかなって、思って」
>>Eno.15
ミア
「勝手に飛び出してごめんね、みんな」
ミア
「でも、心配しないで。元気にやってるから」
ミア
「あたし、今、スリーピング・レイルっていうグレムリンテイマーと一緒に、あちこちを巡ってるところ。何だか、危なっかしくて、ほっとけなくてさ」
ミア
「それに、あちこち巡っていたら、もしかしたら……、ううん、なんでもない」
ミア
「とにかく、あたしは大丈夫! また連絡するね! じゃあね!」
スリーピング・レイル
「ミアさん、どこに、通信してたの?」
ミア
「お世話になってた整備工場! 勝手に出てきちゃったからさ」
スリーピング・レイル
「……帰らなくて、大丈夫なのか?」
ミア
「うん。何よりも、レイルが心配だしね」
スリーピング・レイル
「僕、信用ない、んだな……」
ENo.15からのメッセージ>>

「勝手に飛び出してごめんね、みんな」

「でも、心配しないで。元気にやってるから」

「あたし、今、スリーピング・レイルっていうグレムリンテイマーと一緒に、あちこちを巡ってるところ。何だか、危なっかしくて、ほっとけなくてさ」

「それに、あちこち巡っていたら、もしかしたら……、ううん、なんでもない」

「とにかく、あたしは大丈夫! また連絡するね! じゃあね!」

「ミアさん、どこに、通信してたの?」

「お世話になってた整備工場! 勝手に出てきちゃったからさ」

「……帰らなくて、大丈夫なのか?」

「うん。何よりも、レイルが心配だしね」

「僕、信用ない、んだな……」
ENo.140からのメッセージ>>

「ハロー、ヒューマン。
こちらファータ・メガプテラ、どうぞ。」

「……ほう?
通信ミスとは可愛らしいアクシデントだね。」

「ボクは……ここいらではハンプバックと名乗っている者だ。
しがないグレムリン乗りといったところか。」

「『グレムリンテイマー』、良い響きだ。
整備の心得があるガラクタ漁りなんて、おおよそ名乗り難いものだからね!」

「そしてキミらが通信を受けている『彼女』がファータ・メガプテラ。
空を華麗に駆ける可愛らしい機体(いきもの)さ。
さて、これだけ話したんだ。
キミらの事もボクと彼女に教えてもらえないかい、ヒューマン?」
送信ログ
>>Eno.51

「ねぼすけ、やろう……」

「余計なことを、する気は、ないけど、戦場に赴く以上は、戦う。それだけ」

「何も知らないのは事実だけど、僕には、戦う力しかなくて、ここに戦場があって」

「その上でただ黙って震えている、ということは。僕には、できそうもない」

「もちろん、戦うのが好き、なわけではない。でも、それは……ネグロさんだって、同じじゃないか?」
>>Eno.96

「チャルミィ、さん。僕の声が聞こえてたなら、何よりだ」

「わ、かわいい……! もふもふだぁ!」

「僕とこの機体は『スリーピング・レイル』。それから、こっちは整備士のミア」

「よろしくね、チャルミィちゃん」

「それで……、チャルミィさんは、もふもふの、ヒトなのかな」

「それは違うと思うよ?」

「そういうひとも、いるのかなって、思って」
>>Eno.15

「勝手に飛び出してごめんね、みんな」

「でも、心配しないで。元気にやってるから」

「あたし、今、スリーピング・レイルっていうグレムリンテイマーと一緒に、あちこちを巡ってるところ。何だか、危なっかしくて、ほっとけなくてさ」

「それに、あちこち巡っていたら、もしかしたら……、ううん、なんでもない」

「とにかく、あたしは大丈夫! また連絡するね! じゃあね!」

「ミアさん、どこに、通信してたの?」

「お世話になってた整備工場! 勝手に出てきちゃったからさ」

「……帰らなくて、大丈夫なのか?」

「うん。何よりも、レイルが心配だしね」

「僕、信用ない、んだな……」
◆2回更新のメッセログ
受信ログ
ENo.51からのメッセージ>>
ネグロ
「おい、ねぼすけ野郎。テメエがどうなろうと俺はしったこっちゃねえ、が、戦場で余計な事するなよ」
ネグロ
「俺ァな、テメェみてえなタイプが一番気に入らねえ」
ネグロ
「何も知らねえヤツは、だまって隅で震えてりゃいいのによ、クソッ」
ENo.96からのメッセージ>>
チャルミィ
「ご機嫌麗しゅうございますですわ!
あなたの声はワテクシにも届いておりましてよ」
チャルミィ
「ワテクシの名前はチャルミィ。
あなたもテイマーですのね?」
チャルミィ
「同じくこの世界をいくのですもの、
挨拶は大事でしわね。
その点ワテクシはバッチリですわ!」
チャルミィ
「あなたのお名前も教えてくださるかちら?」
送信ログ
>>Eno.140
スリーピング・レイル
「わ」
スリーピング・レイル
「なんか動いてる。これ、どうやって止めるんだ。あれ?」
ミア
「何やってんの、レイル?
って、誰に向かって録画通信してるの?」
スリーピング・レイル
「ろくが、つーしん……?」
ミア
「もー! しっかりしてよね!
通信機能くらいは使えるようになってよ、テイマーはそっちなんだから!」
ミア
「あっ、この通信受け取った方、すみません!
こちら『スリーピング・レイル』。
操縦士が手を滑らせて、通信を送っちゃってたみたいです」
ミア
「ほんっとーに失礼しました! ほら、レイルも謝る!」
スリーピング・レイル
「えと、ご、ごめんなさい……?」
ミア
「あの、それで、聞きづらいんですが、そちらはどなた様、ですか?」
>>Eno.51
スリーピング・レイル
「」
ENo.51からのメッセージ>>

「おい、ねぼすけ野郎。テメエがどうなろうと俺はしったこっちゃねえ、が、戦場で余計な事するなよ」

「俺ァな、テメェみてえなタイプが一番気に入らねえ」

「何も知らねえヤツは、だまって隅で震えてりゃいいのによ、クソッ」
ENo.96からのメッセージ>>

「ご機嫌麗しゅうございますですわ!
あなたの声はワテクシにも届いておりましてよ」

「ワテクシの名前はチャルミィ。
あなたもテイマーですのね?」

「同じくこの世界をいくのですもの、
挨拶は大事でしわね。
その点ワテクシはバッチリですわ!」

「あなたのお名前も教えてくださるかちら?」
送信ログ
>>Eno.140

「わ」

「なんか動いてる。これ、どうやって止めるんだ。あれ?」

「何やってんの、レイル?
って、誰に向かって録画通信してるの?」

「ろくが、つーしん……?」

「もー! しっかりしてよね!
通信機能くらいは使えるようになってよ、テイマーはそっちなんだから!」

「あっ、この通信受け取った方、すみません!
こちら『スリーピング・レイル』。
操縦士が手を滑らせて、通信を送っちゃってたみたいです」

「ほんっとーに失礼しました! ほら、レイルも謝る!」

「えと、ご、ごめんなさい……?」

「あの、それで、聞きづらいんですが、そちらはどなた様、ですか?」
>>Eno.51

「」
◆戦闘結果
戦闘結果は*こちら*
◆ダイジェスト結果
◆友軍からの通信
南西海域【星の海】の戦果通信
>>友軍の戦闘結果
「終わりました~」



>>友軍の戦闘結果

「……カズ……ザーッ…゙ーッ…ーリオ…ザーッ…、戦果良好だ」



>>友軍の戦闘結果

「良い知らせだ。そちらはどうだ?」



>>友軍の戦闘結果

「ふぅん? 勝ったんだ。そっか」




>>友軍の戦闘結果

「なになに、かったの?やったー!いえーい!」



>>友軍の戦闘結果

「ENo.0111、バルク・クォーリーARより
領域内の全ヴォイドテイマーへ。
こちらは無事、敵勢力の撃破に成功しました。
損害状況は軽微。各機の作戦成功を祈ります」



>>友軍の戦闘結果

「こっちは無事、他も大丈夫ですよね」




>>友軍の戦闘結果

「よし! 」




精算
報酬 30
経費 0
フラグメンツ獲得 30
【!】弾薬獲得 あなたは弾薬を 9発 入手しました
【!】増殖 フライトレス・フェザーは弾数が増加し 42発 になりました
経費 0
フラグメンツ獲得 30
【!】弾薬獲得 あなたは弾薬を 9発 入手しました
【!】増殖 フライトレス・フェザーは弾数が増加し 42発 になりました
あなたはフラグメンツと交換でゲーミングチェアを手に入れた……
あなたはフラグメンツと交換でレストアチップを手に入れた……
あなたはフラグメンツと交換で改良システムを手に入れた……
【物資援助】あなたは[多脚解放]が付与されたポルターガイストを入手した……
夜空には静かに星が浮かぶ……(コンテナ入手率 10%)
キャラデータ
__0






__6






_12






_18






_24






_97






103






109




所持品リスト

種別:術導重機関砲 [連射聖魔射撃火器]
零4耐3《広域DLパーツ:スリーピング・レイル(Eno15)からのDL》
▮▮▮▮ FULL ▮▮▮▮
【装弾数】…… 42
[tips]