ENo.0045　クロウラー

部屋内のステレオシステムから流れる音楽は、
音を奏でていた。足音とも、爆発音とも違う心地の良い音。

目の前には白いメシに魚のソテー、飲み物には透き通った清浄水。
食卓に並ぶ豪勢な料理。…ああ、これは過去の情景だ。
毎日ではないが、そういった食事を摂っていた時期があった。

子供の時分の話。父も、母も居たあの頃は
今にして思えばきっと幸せだったんだろうなと思う。

次に浮かんだ情景は、血反吐を撒き散らして倒れた父と母の姿だった。

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『敵性存在の接近を確認』

その声に目を開ける。
そして操縦桿に手をかけ、戦闘機動へ遷ろうとした最中…

『夢の終わり、それは……新しい朝の始まりでもあります』

私のグレムリンが語りかけてくる。
そんな人間滋味た言葉だからか、自然と返事が出てくる。

「そうか、朝が来たら腹が減るな」
『モーニングの準備をしておきます。
　あなたが好きなレコードをかけておきます』

先程垣間見た情景が脳裏を過ぎ去る。
きっとそれはもう叶わぬ事。

『そして、私は目覚ましを持ってあなたの眠るすぐそばへ』
『あなたはきっとすべて忘れてしまうかもしれません』

なんだか、これも夢見心地。
こんな会話に非現実感を覚えて、ようやく夢なんだと思い至った。

「…忘れてしまったのなら、悲しいな」

私が今やれる事、やりたい事はできていたと思う。
だからこそ、夢でも悲しいのだ。失ってしまう事に対してはそう思う。

『それでも、私はきっと、あなたの隣に』
「……エンジンは温まったな？戦闘機動に切り替えろ」

慰めるような言葉を遮って、気持ちを切り替えるように指令を与える。

操縦桿を握った。センサー類の情報を読み、
監査網に引っかかった敵機の識別をする。

…やれ、今回も索敵は万全にとは行かなかったか。
照合の済んだ機体が殆ど居なかった。他の者は仕事をしていない。
救援もナシだ。そんな戦場は日常茶飯事だが…

機体を空へと遷す。地平線に浮かぶタワーと手前にある空母船団が、
モニターを彩る。その反対側から敵機はやってくる。

「死のとば口を開かん」

飛翔。この夢の終わりへと飛び立った。

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「我が盾、城壁となり」

クロウラーの設立した配達会社。

配達だけに留まらず、戦力投入や演習訓練などの傭兵事業や各種兵器製造など、手広くやっている。