ENo.0030　『TIER』

*ぐちゃぐちゃと 二重に書き殴られた跡*



クソ、何が滅びた世界だ ついてねえ。
まあでも、帰れるアテがあるってんなら、
埋まった神秘を知るにゃあ 丁度良いな。

彼は今日も 愛機の上でパイプをふかす。
原材料不明。製造元不明。効能は■■。
何時何処で買ったかも忘れたソレ。
気が付けば 無くてはならない物になっていたソレ。
いくら吸ってもなくならないソレ。
彼のパイプの葉は 煙は、彼を彼たらしめるものだ。

「……」

ピンク。紫。赤。
自分の髪色によく似た煙が 空気に混ざって融けていく。
それに 彼は手を伸ばそうとして …… やめた。
煙を掴もうとする事程 無知で無意味な行為は、
きっと どこにも 無いだろう。

溜息と共に、煙が消えていく。

人の気配が現れ始める頃。
彼の手の中は黒いパイプから、
一般的な、ただのタバコになっていた。

一回臨死体験をした身としては、
いつ死ぬのか判るのは 最悪な気分だ。


あんとき 確かにオレは死ぬようにやったはずなんだがな。

何故グレムリンにAIを付けているかと言われれば、
ひとりで生きていくにゃ気が狂いそうだったからだ。

組織にもAIの奴は居る。随分と人間クサイのがな。
あんぐらいの人間らしさは必要ない。


「〘お疲れ様でした。珈琲をどうぞ〙」

「……おうよ」


ただ、オレに声をかけてくれりゃあ良いだけだ。
このアホみてえなクスリの山に、埋もれねえように。
だが、この音声にももう慣れちまった。
フェドを引っ張っときゃ暇つぶしにはなるし……

……ランダム性でも組み込むか。

+++

『お～いとり。鳥頭～～～』


『あーあーはいはい。好きに言いなさいな。
それでとり、今日は部屋から出ないつもり？』


『ま～あたしに関係ないんだけどさ。
『上』から呼ばれてたよ。新しい『仕事』だってさ！
いままでサボってきたツケじゃない？ガンバレ～っ』


『は？なんでって……あんた朝飯も昼飯もバックレただろ？
だからかわいい同僚の【COLLAR　PALLET】ちゃんがわざわざ電話してやってるってこと。
あ、おれんじちゃんでもよかったんだよ？』


『あははおもしろ！んじゃね、言うこと言ったしさいなら～。
夜飯は来なよ、【TRIPPER】！』

+++

オレにでも言えることは、
どこの『世の中』も大抵は最悪だってことだ。
……全く、なんでオレがこんなとこに……。
そもそもここに来てからどのくらい経ったんだ？……。
考えるのは止めだ。