第23回目 午前2時のジェリィ
プロフィール
名前
ジェリィ
愛称
ジェリィ
経歴 自身のことを人間ではなく、 ”なんらかの戦闘用コンポーネント” だと認識している何者か。 その証拠のように、前に垂れた長い髪のような部位は 力強いマニピュレーターのように動く。 正体は歴史の傍流に消え去った、「人型バイオ兵器」の一体。 見た目と声は小さい女の子。ジェリィは便宜的な個体名。 割と毒舌。感情表現が下手だが感情自体はきちんとある。 グレムリンのことを「なんかしっくり来ない兵器」 と評価しており、 自分が本来乗るべきだった兵器は 何か別の系統のものだったのではないか、 と推測している。 搭乗グレムリンは中量~軽量の高速タイプ。 有機的で異形の細身フレームに、 直線的で簡易的な金属装甲が取り付けられているという ちぐはぐな印象がある機体であり、 ”純正の装甲や装備品”を身に着けているわけではない模様。 ……だったのだが、大改装によって 意力制御識を重視した鈍重構成となった。 「不可視の力」がなんだか性に合うものらしい。 |
◆日誌
ヴォイドステイシスが撃破される。
さすがネームドっつーかランキングで見たことのある名前ばっかだ。
私が何かする暇も無くの瞬殺。ラクできて良かったぜ。
けっ、ざまあみろ、と思うと同時、「それ」は来た。
脱力感。
一瞬で猛烈な眠気が私を襲い、思わず頭を押さえる。
2轍か3轍でもしたかのような意識の混濁。
――そして、腑に落ちた。
「バイオ兵器が活動を停止する条件……」
バイオ兵器は、永久に活動しているわけではない。当然だ。
基本的に一戦闘ごとの使い捨てであり、次の戦場に同じバイオ兵器を持ち込むことは
原則、できないようになっている。――できるモデルも存在している可能性はあるが。
ヴォイドステイシスの撃破で、ここに集まった勇士達が湧いた。
”ひとつの戦い”が終わったのだと、操縦棺の中で、皆がそう思ったはずだ。
「想いを……思念を具現化にする機械の中で」
「”戦いが終わった”なんて思われちゃあな……」
手からも力が抜ける。足はもうフットペダルすら踏んでいられず、
反発で押し返される。
「参った」
もうちょい見届けたかったんだが。
兵器だからか、死ぬことへの恐怖は無かったが、
少しの後悔を感じた。
-------------------------
↓dive into next stage↓
-------------------------
私は、物心付いた頃には孤児院で育っていた。
孤児院と言うか……養護施設と言うか。まあともかくそんな感じの、
身寄りの無い子供を預かるような施設だ。
親は不明。ある日玄関先に捨てられていた赤子……なんていう、
物語だとメチャクチャよくあるベタな境遇ってヤツ。
そのせいか、どうにも口が悪いと言うか、言葉遣いがあまりよろしくない。
なんか、どうやっても治らないのだ。しゃーねえだろ。
そんな私だが、年齢が2桁になる前ぐらいには、”世界”に対してなんとなく違和感を覚えていた。
自分がいるべき世界がここではないような、もっと違う世界の存在だったかのような。
大人達に言ってみたこともあったが、そうすると彼らは揃って生暖かい笑顔を浮かべ、
「ああ、うん、若いうちはね、あるよね」
などと返すのだ。
……うん、こうやって文字に起こすと自分でも完全に”アレ”みたいだって分かる。
そんな違和感が消えないまま、少しの時間が経った。
その間の私は、妙に戦争映画やロボットアニメ・ロボットゲームに惹かれた。
特に、パーツを自由に組み替えて自分だけのロボを作る系のゲーム、
アレに自分でもワケ分かんないぐらいにのめり込んだ。
やがて、私は「アレ」に乗るべく生まれてきたような気がし始めた。
巨大ロボット兵器に。
そうして戦うのが、自分本来の役目だと感じ始めたのだ。
……ということを話すと、以前より更に生暖かい目で見つめられた。
そーだよな。私もそう思う。
自分の本来の役目は戦うことで、前世はきっと聖戦士か何かだった、なんて、
なんかもう、完全に教科書に載せられるぐらいの――
「中二病じゃねーか……」
そうして机に突っ伏した。
妙に強固でしつこい中二病を抱え続けたある日、
いかにも怪しいメールが端末に飛び込んできた。
曰く、この世界は偽物であるとか、なんとか。
よくある新興宗教みたいなメールだったので鼻で笑い飛ばした。
だがそのメールには添付ファイルが一緒になっており、
そちらのファイルを見た途端、雷に打たれたような衝撃が走った気がした。
『グレムリン戦記』
普段ならそんな事絶対しないのだが、ファイルを解凍すると、
それは一本のシミュレーションゲームだった。
ロボットユニットを使って敵と戦う、ターン式SLG。
グラフィックも演出も安っぽく、ゲームとしてはそんなに面白くないはずなのだが、
ストーリーや世界観に妙に惹かれた。
幼い頃からずっと持っていた、「あるべき世界にいない」感覚。
それが、このゲームの中にあるような気がして、窓から外を見た。
青い海。その向こうには何があるのか。
私は完全にメールの内容を信じるようになってしまっていた。
そうなってくると、観測船がもたらす情報も、
「外界を調査しているというポーズ」「政府による情報操作」なんかに思えてくる。
中二病で陰謀論者。救いようの無い数え役満のアホだ。
そんな数え役満のアホは、本気で観測船のクルーを目指した。
自分の目で実際に外界を確かめたかったのだ。
そうして14歳になった。
自分で言うのもなんだが、私は狂的な情熱と執念で勉強と訓練を重ね、
若くして民間の観測船クルーに抜擢された。明日は初航海の日だ。
施設の皆は心配してくれていたが、私は余裕の心境だった。
むしろ、身元不明の親の元に帰るような心地良ささえ感じている。
「さーて、そんじゃま」
「見せてもらいますか。”外”ってヤツをよ。
クジラとかベルーガとか居っかなァ」
外。
そこには何が待っているのだろうか。
雲の影が、巨人の姿になっているような気がした。
Boot……連環・傷跡
さすがネームドっつーかランキングで見たことのある名前ばっかだ。
私が何かする暇も無くの瞬殺。ラクできて良かったぜ。
けっ、ざまあみろ、と思うと同時、「それ」は来た。
脱力感。
一瞬で猛烈な眠気が私を襲い、思わず頭を押さえる。
2轍か3轍でもしたかのような意識の混濁。
――そして、腑に落ちた。
「バイオ兵器が活動を停止する条件……」
バイオ兵器は、永久に活動しているわけではない。当然だ。
基本的に一戦闘ごとの使い捨てであり、次の戦場に同じバイオ兵器を持ち込むことは
原則、できないようになっている。――できるモデルも存在している可能性はあるが。
ヴォイドステイシスの撃破で、ここに集まった勇士達が湧いた。
”ひとつの戦い”が終わったのだと、操縦棺の中で、皆がそう思ったはずだ。
「想いを……思念を具現化にする機械の中で」
「”戦いが終わった”なんて思われちゃあな……」
手からも力が抜ける。足はもうフットペダルすら踏んでいられず、
反発で押し返される。
「参った」
もうちょい見届けたかったんだが。
兵器だからか、死ぬことへの恐怖は無かったが、
少しの後悔を感じた。
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↓dive into next stage↓
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私は、物心付いた頃には孤児院で育っていた。
孤児院と言うか……養護施設と言うか。まあともかくそんな感じの、
身寄りの無い子供を預かるような施設だ。
親は不明。ある日玄関先に捨てられていた赤子……なんていう、
物語だとメチャクチャよくあるベタな境遇ってヤツ。
そのせいか、どうにも口が悪いと言うか、言葉遣いがあまりよろしくない。
なんか、どうやっても治らないのだ。しゃーねえだろ。
そんな私だが、年齢が2桁になる前ぐらいには、”世界”に対してなんとなく違和感を覚えていた。
自分がいるべき世界がここではないような、もっと違う世界の存在だったかのような。
大人達に言ってみたこともあったが、そうすると彼らは揃って生暖かい笑顔を浮かべ、
「ああ、うん、若いうちはね、あるよね」
などと返すのだ。
……うん、こうやって文字に起こすと自分でも完全に”アレ”みたいだって分かる。
そんな違和感が消えないまま、少しの時間が経った。
その間の私は、妙に戦争映画やロボットアニメ・ロボットゲームに惹かれた。
特に、パーツを自由に組み替えて自分だけのロボを作る系のゲーム、
アレに自分でもワケ分かんないぐらいにのめり込んだ。
やがて、私は「アレ」に乗るべく生まれてきたような気がし始めた。
巨大ロボット兵器に。
そうして戦うのが、自分本来の役目だと感じ始めたのだ。
……ということを話すと、以前より更に生暖かい目で見つめられた。
そーだよな。私もそう思う。
自分の本来の役目は戦うことで、前世はきっと聖戦士か何かだった、なんて、
なんかもう、完全に教科書に載せられるぐらいの――
「中二病じゃねーか……」
そうして机に突っ伏した。
妙に強固でしつこい中二病を抱え続けたある日、
いかにも怪しいメールが端末に飛び込んできた。
曰く、この世界は偽物であるとか、なんとか。
よくある新興宗教みたいなメールだったので鼻で笑い飛ばした。
だがそのメールには添付ファイルが一緒になっており、
そちらのファイルを見た途端、雷に打たれたような衝撃が走った気がした。
『グレムリン戦記』
普段ならそんな事絶対しないのだが、ファイルを解凍すると、
それは一本のシミュレーションゲームだった。
ロボットユニットを使って敵と戦う、ターン式SLG。
グラフィックも演出も安っぽく、ゲームとしてはそんなに面白くないはずなのだが、
ストーリーや世界観に妙に惹かれた。
幼い頃からずっと持っていた、「あるべき世界にいない」感覚。
それが、このゲームの中にあるような気がして、窓から外を見た。
青い海。その向こうには何があるのか。
私は完全にメールの内容を信じるようになってしまっていた。
そうなってくると、観測船がもたらす情報も、
「外界を調査しているというポーズ」「政府による情報操作」なんかに思えてくる。
中二病で陰謀論者。救いようの無い数え役満のアホだ。
そんな数え役満のアホは、本気で観測船のクルーを目指した。
自分の目で実際に外界を確かめたかったのだ。
そうして14歳になった。
自分で言うのもなんだが、私は狂的な情熱と執念で勉強と訓練を重ね、
若くして民間の観測船クルーに抜擢された。明日は初航海の日だ。
施設の皆は心配してくれていたが、私は余裕の心境だった。
むしろ、身元不明の親の元に帰るような心地良ささえ感じている。
「さーて、そんじゃま」
「見せてもらいますか。”外”ってヤツをよ。
クジラとかベルーガとか居っかなァ」
外。
そこには何が待っているのだろうか。
雲の影が、巨人の姿になっているような気がした。
Boot……連環・傷跡
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