第23回目 午前2時のメギーラ
プロフィール
名前
メギーラ
愛称
メギーラ
経歴 動く死体。生命の連環から外れてしまった者。 戦場を『魂が吹き飛ぶほどの』速さで駆けることを求めるスピード狂。 曰く、『すでに運命が朽ちた者』。 当人も記憶を失っており、それ以上のことは不明。 『死してなお戦う、なんとまあ馬鹿らしいことだな!』 『私はきっと、自由がほしいのだろう。もう面倒事に巻き込まれない、何にも阻まれない自由が。』 『ああ、今の真面目そうだったな!自由を求め空を駆ける、実直な戦士。肩書としては悪くなさそうじゃないか! 問題は、私が真面目や実直とあまりにもかけ離れすぎていることぐらいだな!』 |
◆日誌
【餓えた獣、澄んだ欲望】
──見上げ見えるのは、赤い空。
禍々しい空の中に、私は落ちていく。真っ逆さまに、あっという間に加速していく。
『ああ、しまったな』
ヴォイドステイシスは、想像以上の力を持っていた。その深淵によって、私は戦いが始まるなりあっという間に吹き飛ばされてしまった。機体からも投げ出され、頼みの綱はフィルタースーツだけとなった。
隣にいた者はどうしただろうかと、目を閉じ考える間にも、タワーも何もかも眼下へ置き去りになっていく。
『楽しかったな、ティア・ドロップ。戦場で果てることができたのなら、本望さ』
独り言にも満たない言葉が、溢れていく。
『……生きているのかも、死んでいるのかも……人間なのかも、AIなのかもわからないこの私に、存在している感覚を与えてくれたのが、闘争だった。
このくすんだ灰のような魂が、再び赤く燃え上がるあの感覚……私が、最も愛したもの……。
あの刹那こそが、淡く不安定な私のすべてだった。だから、悔いなんて……ないさ』
そうだ、楽しかった。大いに満たされた。ならばもう、望むこともないだろう。
考えるのも面倒になって、意識も手放そうとしたその時……ヴォイドステイシスが、心に問いかけてくる。私の戦う、動機……ひどく、簡単な疑問を。
『戦う動機か。暇潰し、だったのだが……今は『心底楽しいから』だといえよう!戦うということは楽しいのさ。これが君にわかるか?』
声は届かなくとも、心の中で答えを与える。もしや、これでタワーの戦況が変わったのだろうか。どちらにせよ、私は落ちていくだけだった。
戦うことは、本当に楽しい。その闘争の中で終われるというのなら、本望だ。本望の、はずだ。
本当に?
『……ティア・ドロップ……!?』
突如、遠くの遠く……あまりにも見慣れたセンサーの赤色が視界に映った。粉塵ではっきりと確認することはできないが、それでもあれは確かに、大破したはずの……愛機、ティア・ドロップのもの。それが、ゆっくりとこちらへ近づいて来ている。
『……フフッ、そうか……来てくれたのか、私の思念に呼応して!』
ニヤリと、思わず笑みを浮かべる。そうだ私は、私達は……。
『より多くの戦場を望む、この私の度し難い貪欲に喚ばれたか、ティア・ドロップ!君もあれだけ食い散らかしておいて、まだ足りないか!
あれだけ引き裂き、叩き落として、それでも足りないのか!そうか……ハッハッハッハ!』
まだ満足なんて、していない!
いつも通りの独り合点と高笑いをして、手を伸ばす。それに応じて、ティア・ドロップが速度を上げる。ガタガタと、ここまで聞こえるひどい音をたてながら。
『やはり、私はまだ戦っていたい!こんなことで、私の闘争を阻まれてなるものか!
私は戦いの中にしか存在できない……これこそが、希薄ですべてが不確かな、蜃気楼《ミラージュ》たる私の存在意義……!』
吐き捨て、手を目一杯に伸ばし……魂を燃やし、腹の底から叫ぶ!すぐ目の前まで来た、愛機へぶつけるように!
『私を乗せろ、ティア・ドロップ!私に、もっと戦場を!君に、もっと狩りの場を!』
グレムリンが呼応し、腕を伸ばし……軟弱な操縦士の体を、唯一無二の主人をその半壊した操縦棺の中へ収める……!
『ああ、そうだ……流石だな、ティア・ドロップ!この私の、戦場における四肢!』
いかなる寝床よりも落ち着く、棺の中で一息つき、再度叫ぶ。ヴォイドステイシスによく似た、新たな力の根源が現れたことを、タワーから離れた空にも届くそれを、魂で感じながら。
取り戻した四肢を繰り、ガタガタと間抜けた音を鳴らしながら、魂を込めた思いの丈を響き渡らせる。
『さあ私に更なる戦場をよこすがいい、ケイジキーパー共!』
『大義名分など知るものか!この私の大いなる欲望の前に、そんなものは無に等しい!』
『たとえ世界が巻き戻ろうと、何度記憶を失おうと、どのような世界に私自身が在ろうと、この原初の欲望が潰えることはない!』
『君達全員との決着がつくまで、戦場が在ってそこに私達が存在する限り、私達は何度でも挑みにいってやるとも!』
『停滞の中にも、再生の中にも、決着なんてものはない……』
『そして決着のつかない戦いなんぞ、つまらないにも程があるからな!』
『アッハッハッハッハ!!!!』
──彼とその機体は遥か彼方へと失せ行き……そして、世界が巻き戻る。
──見上げ見えるのは、赤い空。
禍々しい空の中に、私は落ちていく。真っ逆さまに、あっという間に加速していく。
『ああ、しまったな』
ヴォイドステイシスは、想像以上の力を持っていた。その深淵によって、私は戦いが始まるなりあっという間に吹き飛ばされてしまった。機体からも投げ出され、頼みの綱はフィルタースーツだけとなった。
隣にいた者はどうしただろうかと、目を閉じ考える間にも、タワーも何もかも眼下へ置き去りになっていく。
『楽しかったな、ティア・ドロップ。戦場で果てることができたのなら、本望さ』
独り言にも満たない言葉が、溢れていく。
『……生きているのかも、死んでいるのかも……人間なのかも、AIなのかもわからないこの私に、存在している感覚を与えてくれたのが、闘争だった。
このくすんだ灰のような魂が、再び赤く燃え上がるあの感覚……私が、最も愛したもの……。
あの刹那こそが、淡く不安定な私のすべてだった。だから、悔いなんて……ないさ』
そうだ、楽しかった。大いに満たされた。ならばもう、望むこともないだろう。
考えるのも面倒になって、意識も手放そうとしたその時……ヴォイドステイシスが、心に問いかけてくる。私の戦う、動機……ひどく、簡単な疑問を。
『戦う動機か。暇潰し、だったのだが……今は『心底楽しいから』だといえよう!戦うということは楽しいのさ。これが君にわかるか?』
声は届かなくとも、心の中で答えを与える。もしや、これでタワーの戦況が変わったのだろうか。どちらにせよ、私は落ちていくだけだった。
戦うことは、本当に楽しい。その闘争の中で終われるというのなら、本望だ。本望の、はずだ。
本当に?
『……ティア・ドロップ……!?』
突如、遠くの遠く……あまりにも見慣れたセンサーの赤色が視界に映った。粉塵ではっきりと確認することはできないが、それでもあれは確かに、大破したはずの……愛機、ティア・ドロップのもの。それが、ゆっくりとこちらへ近づいて来ている。
『……フフッ、そうか……来てくれたのか、私の思念に呼応して!』
ニヤリと、思わず笑みを浮かべる。そうだ私は、私達は……。
『より多くの戦場を望む、この私の度し難い貪欲に喚ばれたか、ティア・ドロップ!君もあれだけ食い散らかしておいて、まだ足りないか!
あれだけ引き裂き、叩き落として、それでも足りないのか!そうか……ハッハッハッハ!』
まだ満足なんて、していない!
いつも通りの独り合点と高笑いをして、手を伸ばす。それに応じて、ティア・ドロップが速度を上げる。ガタガタと、ここまで聞こえるひどい音をたてながら。
『やはり、私はまだ戦っていたい!こんなことで、私の闘争を阻まれてなるものか!
私は戦いの中にしか存在できない……これこそが、希薄ですべてが不確かな、蜃気楼《ミラージュ》たる私の存在意義……!』
吐き捨て、手を目一杯に伸ばし……魂を燃やし、腹の底から叫ぶ!すぐ目の前まで来た、愛機へぶつけるように!
『私を乗せろ、ティア・ドロップ!私に、もっと戦場を!君に、もっと狩りの場を!』
グレムリンが呼応し、腕を伸ばし……軟弱な操縦士の体を、唯一無二の主人をその半壊した操縦棺の中へ収める……!
『ああ、そうだ……流石だな、ティア・ドロップ!この私の、戦場における四肢!』
いかなる寝床よりも落ち着く、棺の中で一息つき、再度叫ぶ。ヴォイドステイシスによく似た、新たな力の根源が現れたことを、タワーから離れた空にも届くそれを、魂で感じながら。
取り戻した四肢を繰り、ガタガタと間抜けた音を鳴らしながら、魂を込めた思いの丈を響き渡らせる。
『さあ私に更なる戦場をよこすがいい、ケイジキーパー共!』
『大義名分など知るものか!この私の大いなる欲望の前に、そんなものは無に等しい!』
『たとえ世界が巻き戻ろうと、何度記憶を失おうと、どのような世界に私自身が在ろうと、この原初の欲望が潰えることはない!』
『君達全員との決着がつくまで、戦場が在ってそこに私達が存在する限り、私達は何度でも挑みにいってやるとも!』
『停滞の中にも、再生の中にも、決着なんてものはない……』
『そして決着のつかない戦いなんぞ、つまらないにも程があるからな!』
『アッハッハッハッハ!!!!』
──彼とその機体は遥か彼方へと失せ行き……そして、世界が巻き戻る。
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◆アセンブル
【腕部】にオフプライスシャワーを装備した
【主兵装】にオフプライスシャワーを装備した
【副兵装】にオフプライスシャワーを装備した
◆僚機と合言葉
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