第23回目 午前2時のS.Owen

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プロフィール

名前
S.Owen
愛称
S.Owen
プロフ絵経歴

鴉にも鷹にも成れなかったただの鳶。

頭部と左手の甲に大きな傷跡があり、肉体と脳の所有者が異なる。

【脳: Helijah】
記憶の欠落を自覚しているが、かつてC.C.という名の機体を駆っていた過去だけは忘れた事がない。
愛想がなく口が悪いが、唯一部下のことだけは信用している。
本人は認めたがらないが乗せられやすく、少しいいメシや健康温泉で釣られる。

稼働限界を迎え、停止した。


【肉体: Shawn】
灰色の短髪と目付きの悪さが特徴的で、若干筋肉質。くしゃみが豪快。
脳の持ち主を上長と呼び慕っていた。良く言えば献身的。
時々脳の命令を無視して勝手に動く。

元真紅連理の末端研究機関所属員。
実験段階の■■■■■■を■■逃亡中。


【Sub: Nicolai】
東南東海域『南の島』第十二番工廠所属を名乗る整備士。
白髪に大きなゴーグルを着用している。
グレムリンとグレイヴネット・インターフェースが大好きで、両者について話す時は特に早口。

翡翠経典を「悠久の■■、希望の担い手」と称する。
南の島にて『シームルグ』に搭乗し交戦後、■■■

(以降の記述は読み取れない)



◆日誌


//
!Emergency!
Overwriting the definition――
――
――――completed.
//
――
――――
何処かで目覚まし時計が鳴っている。


……ああ。『また』か。

いつの間にか寝てしまっていたらしい。
はっきりしない視界に目を擦りつつ、重い肉体に鞭打ってゆっくり上半身を起こす。

目覚めたのは自室のベッドの上。
窓の外は暗闇に覆われ、部屋は微かな非常灯が照らすばかり。
時計を見れば、時刻は20時を回ろうとしていた。

「……」

立ち上がると、頭がずきりと痛んだ。
酒を飲んだ覚えはない。疲れが出ているのだろうか。
溜息を吐き、壁のスイッチに手を伸ばす。

20時丁度。もうすぐ、彼がやってくる時間だ。

******

程なくして、扉を叩く音がした。

「おーい、ショーン。生きてるか?」

返答する前に扉が無造作に開けられ、声の主が顔を出す。

「お、今日は残業せずに――って、うわ、こりゃまた随分と……」
 現れた男は部屋を見るなり絶句し、肩を竦めた。
「大方戻ってすぐベッドに倒れて、たった今起きたってとこか。
 ほら、待っててやるから顔洗って来い」
「……付いてますか、涎の跡」
「くっきりとな。更に言えば寝癖で髪が爆発している」
「整えてきます……」

鏡の前で格闘して戻ると、机の上に缶飲料が並べられていた。
「すみません。片付けて頂いたようで……」
「全くだ。と言いたいところだが、最近多忙を極めているようだからな。
 俺が代わりに掃除してやろうか。ん?」
「いえ、その……遠慮しておきます。恥ずかしいので……」
「何を恥ずかしがる事が……ああ、見られたくない物の五つや六つあるか」

男だものな、と一人で頷いた客人は、近くの缶を手に取った。
「何はともあれ週末だ。好きなものを飲むといい。酒にするか?」
「あ、出来れば他のものを……少し、頭痛がしまして」
「そうか。ならコイツだな」

手渡されたのは、ラベルに青い花が印刷された清涼飲料。
「……頂きます」
「遠慮は要らん。――して、」
温いそれをぐいと煽ると、彼が問うた。

「ここ暫くお前の表情が晴れないのは、仕事が原因か?」

******

「……」
「そう、その表情だ。どうした?俺の居ぬ間に何かあったか?
 言ってみろ。理不尽に詰められたか?成果を取られたか?」
「いえ、……俺は大丈夫です、」
「慣れていますから、耐えるのは――などと言ってくれるなよ。
 俺を頼れ。俺は、弟分を一人で苦しませたくはないのだ」

彼の眼差しに嘘偽りはなかった。しかし。
「お気遣い、ありがとうございます。ですが、ご心配には……」
「……分かった。では話を変えよう。
 明日は休日だろう。何か予定はあるのか」
「休養に充てるつもりです。先輩は……妹さんのところですか」
「ああ。よく分かったな」
「声が弾んでいますから」
「流石だな。まあ、大目に見てくれ。
 何たってエリヤに会いに行けるのだ。こんなに嬉しいことはない!」

引き締まった顔が、満面の笑みで彩られる。
「見ろ、俺の妹は可愛いだろう!」

押し付けられた携帯機器に映るのは、白い部屋で微笑む長髪の女性。


ずく、と頭の奥が疼いた。
赤い髪。錆色に似た、赤。赤い――


世界がぐらりと回る。
傾いた肉体は、痛みを感じる前に人の腕に触れた。

「――ショーン!」
「……すみません、少々眩暈が……」
「今日はお開きにしよう、続きはお前が回復してからだ」

気付けばベッドに座らせられ、片付けを終えた男と目が合う。
「すまない、無理をさせたな。看病は必要か」
「いえ、少し眠れば回復します。俺は大丈夫ですから、戻って明日の支度を」
「……分かった。何かあればすぐに呼べ」

そう言うと、彼は部屋を出て行った。

******

部屋が静寂を取り戻す。
「……酷い悪夢だ」
気付くと唇が動いていた。

「アルフレッド、申し訳ありません。
 ……気にかけて下さったあなたに、何度謝罪をしても足りません。
 それでも俺は、もう引き返す事は出来ないのです」

口に出せば、もう止められなかった。
立ち上がって紙を数枚掴むと、机の上に重ねて敷く。

「きっかけは、些細な喪失感でした」

右手で額に触れる。傷跡のない、ややかさつくだけの肌に。
「何かが欠けている。大切な存在がいない。
 『自分の脳』があるだけの頭が、外的異常もないのに疼く。
 拭えない違和感は日ごとに膨らみ、脳を抉り出したくなる衝動に駆られ、」

部屋を見回すと、カッターナイフが目に留まった。

「……思い出しました。エリヤ上長の事を。
 おかしい。俺があなたの事を忘れるなど、万に一つもあり得ません。
 何者かに操作されたか――と考えて、一つの名に辿り着きました。
 ケイジキーパー、デッキィ。
 この世界は記憶ごと、そう名乗る存在に塗り替えられたのだと」

左手を紙の上に置き、カッターナイフを右手で握る。
「あなたは、戦禍の絶えない世界に干渉するために作り出されました。
 平和なこの世界では、最初から存在しなかったことになっています。
 俺の頭蓋の中だけではなく、世界の何処にも……」

一瞥した左手の甲に、切り傷の跡はない。
溜息を吐くと、真っ新な肌に刃を突き立てた。


「……忘れていた方が、幸せだったのかもしれません。彼のように。
 アルフレッドの笑顔は、二度と見られないと思っていましたから」


ぎりぎりと刃先を埋めると、鮮烈な痛みと共に赤い血が滲む。
引き抜けば、溢れた血が紙に滴り落ちた。

「しかし、俺は思い出してしまった。
 戦いの先に辿り着いた世界がどれほど美しくとも、
 あなたがいないのなら、まだ戦い続けざるを得ません」

気付けば出血は治まり、左手の甲には古い傷跡が浮かび上がっていた。
幻影が剥がれ、元の状態を取り戻したかのように。
「やはり『ここ』でしたか。
 他に、不都合なものが隠蔽されている可能性が高いのは……」

かつての世界との差異。
全てが異なる中でも特に、到達を禁じられているタワー外海。

「……行きましょう」

慣れた手付きで血を拭き取ると、丸めて部屋の屑入れに捨てる。
簡単に荷物をまとめると、誰にも見つからないように部屋を後にした。

******
暫くの後。
部屋の扉が数度ノックされ、再び赤髪の男が顔を出す。
「おいショーン。これでも食って元気に……ショーン?」

ベッドの上にも、洗面所にも人の姿はない。
部屋を見回した男は、屑入れに捨てられた紙玉を目に留めた。
「……鼻血か?」
白い紙に付着した赤い血を見た瞬間、男の脳裏に映像が閃いた。


――赤い長髪。赤い粉塵に煙る世界。赤い空を駆ける機体群。


それらが数秒でかき消えた後も、男はその場を動けなかった。
(……なん、だ?今見えたのはエリヤか?しかしあの服は、)

フィルタースーツだ、と記憶が答える。見覚えもないのに、明確に。
嫌な予感がした。これ以上思い出してはいけない、と本能が訴える。

頭の奥から声がする。
(……俺の妹を返せ、ショーン・オブライエン……?)
怨嗟の声は自身のもの。しかし、その言葉を発する状況に心当たりがない。


(く、そ。この頭痛は一体何だ。何故俺は震えている?
 だが……逃げるな。あの二人に関わる事なら、俺は知らねばならん)


言い知れぬ忌避感に抗うように歯を食いしばると、先程の映像を手繰り寄せる。
そして――男は思い出した。

******

タワー西端の船着場から夜の海へと、一艘の小型ボートが滑り出す。
最低限のランプを灯し、レーダーを頼りに進む船は、振り返る事なく外海を目指す。
暗闇の中で船室内部に身を納めた男は、どこか安堵を覚えていた。

「……グレムリンの操縦棺に似ています。
 この世界の『C.C.』。俺に力を貸して下さい」

夜間のためか、外海に向かう連絡船も見当たらず、海上は静かに凪いでいる。
一面の暗闇の中、男は独り呟く。

「上長。俺の身勝手に巻き込んで申し訳ありません。
 かつての俺は、興味も意志も薄く、ただ指示に従うだけの人形でした。
 『彼』――ヴォイドステイシスがそうであったように。
 しかし、彼は戦う意志を見せ、上長は過去に踏み込んで下さった。
 であれば俺も、次こそは……」


レーダーが、外海が近い事を告げる。警告音が鋭く響いた。
しかしボートは減速する事なく進み続ける。
「再製前の世界では、上長の脳の一部をお借りしていましたが、
 ここに在るのはただの俺の脳です。
 つまり、今この身が消滅しようと、上長に負荷がかかる恐れはない。
 このまま、俺自身を世界に対する投石とします」

視界が突然赤く染まった。レーダーは外海との境を示している。
船体と男を包んだ光は赤から黒へと、思考を塗り潰し分解していく。

「……世界など、とうに敵に回しています。
 今回も……いえ、何度でも同じ選択をするだけです。
 俺はこの肉体を以て、あなたという存在を匿います。
 実験体のElijahではなく……そう、Helijah(エリヤ)という個人として」


「――生き延びましょう、エリヤ上長。あなたを世界なぞに奪わせはしません」


その言葉を最後に、男は意識を手放した。

******
――斯くして世界は巻き戻る。
幾多の意志と願いを飲み込んで。


→→Dive into the next season...

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→→to be continued.

※PLより: S1お疲れ様でした!お付き合い頂きありがとうございました。


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AR_Hawksbillを破棄した
S.Owenは圧縮型レーダーシステムを手に入れた!!(フラグメンツ-1)

◆アセンブル

頭部【頭部】に鉄の仮面を装備した
腕部【腕部】にレジスタントアームを装備した
操縦棺【操縦棺】に097-COFFIN《CENTRAL》を装備した
脚部【脚部】に005-LEG《REX》を装備した
エンジン【エンジン】に塞式ガードナーエンジンを装備した
エンジン【エンジン】に塞式ガードナーエンジンを装備した
索敵【索敵】に広域レーダーL型を装備した
索敵【索敵】におおば(広域レーダー電波撃高耐久)を装備した
主兵装【主兵装】にアヴァランテを装備した
背部兵装【背部兵装】にフレイムランチャーを装備した

◆僚機と合言葉