ENo.0049　Marie

Quadrantの加速に身を預けながら、昔のことを思い出していた。
時空震に飲み込まれて、この赤茶けた海に浮かぶ前のこと。

あの頃も世界は終わりに怯え、恐怖は怒りとなって拳をあげる。
私たちは何とか正気を保とうと、あるいは元から狂っていたのか。
成すべきことは幸いにも変わらず、冷たい川底に炎を振りまいて。

当時の私はハイドラで皆を守り、そしてハイドラに守られていた。
機神の一撃を受けてなお眼光は潰えることなく。
最後の力で私を乗せたゆりかごを海原へ送り出した水蛇の騎士。

ふと、爪先にぶつかる荷物を見やれば。
それは以前に押し込んだまま埃を被るジャンクパーツ。
一人の愚かなテイマーと、一人の愚かな研究者が遺した、夢の名残り。

そうだ。いずれ醒める夢ならば、これを置いていくわけにはいかない。
全てを救済するなんて、だいそれた夢を掲げる方舟は。
カザミサを、仲間を閉め出すような、ちっぽけな器なんかじゃないと。

「性根を叩き直してあげるよ、坊や」

+傷跡+

未来連環祝福

未来祝福

未来祝福

未来祝福

未来祝福傷跡

未来祝福

未来祝福

未来祝福

未来祝福

未来希望祝福

世界はいつも終わりに向かっている。私がゆりかごに守られ震えていた頃だって、そう。
世界はいつか終わるのだろう。その日がいつなのか、誰も知らないけれど。
誰も知らない、見たこともない世界の終わりに怯えて、いくつもの夢が膨らんでは破れていった。
そして、またひとつ。
あの人が間違っていたのかなんて、私には判らない。
記されるのは、テロを計画したテイマーの１人が理想と共に爆散した事実だけだ。
それでも。
扉を開ける正解は、自分が思っている以上に多いものだと知っていたら。
何なら、錠前に合わせて針金を曲げる姑息ささえあれば。
もう少しだけ先へ進めていたのかもしれない。

私は動かないFCSを操縦棺の隙間に押し込み、再び赤茶けた海へ漕ぎ出した。

未来希望

未来希望