ENo.0053　残念すぎるイケメンども

今日の閉店セールも終わり、客のいなくなったまるよしマートにて。


お疲れ様でしたわね。
[最早何か言う気力もない]
とりあえず僕ら、これで帰れるんだよね？
はい、お役御免ですわ。私も見ていてとても楽しませて頂きましたし。
かーえーせ、かーえーせ、
さっさと帰らせれー、
分かりましたは、それでは･･･、


マダムが中空にひらりと大きな輪を描く。
すると虹色の･･･これが異世界への扉、とでも言うべきものなのか･･･穴が出来た。


わーい！しぐしぐにまた会えるー！！

花織が真っ先に飛び込んだ。ぐにっと妙な音がして、穴は花織の身体を飲み込んだ。

んじゃ俺も帰ろうかね。ま、楽しかったぜ！

ボイジャーが続いて飛び込む。同じ様に穴は何の変わりなくゆらめいている。

ん？ネヘミヤ、行かぬのか？
俺最後でいいや。
そうか。ではヒコが行くぞ。貴様も元気でな。

ヒコの小さな身体が完全に穴の向こうに消えてしまったのと同時に、ネヘミヤはマダムの顔をじっと見て。

なあ。お前。手紙に「各々の望むものを手に入れて」って書いてたろ。
ええ。それがどうかしまして？

俺、何を手に入れられたのかな。

･･･さあ。私には分かりかねますわ。
･･･。
でも確実に手に入れる事ができたのは、所謂「友人」なのではないでしょうかしら。

巧いことまとめたつもりか？
うふふ、どうでしょうかしら。それとも、本当に望むものが手に入るまで、ここで働くおつもり？
･･･やだよ。こんだけ手に入れられりゃあ充分だし。

そうですか。では、さようなら、ネヘミヤ様。
二度と顔見せんじゃねーぞ、ババア。じゃあな。

ネヘミヤも、また、穴の向こうに消えていった。



･･･さて。

マダムは誰も居なくなったまるよしマートのレジカウンターに立って、頬に手を当てると、ほうと溜息を吐いた。
静かな店内。戦争とでも形容したくなるあの喧噪が嘘の様だった。

まるよしマート、これにて店じまい。

おわり。