ENo.0056　メギーラ

未来傷跡希望祝福

未来傷跡希望祝福

未来傷跡希望祝福

未来傷跡希望祝福

未来傷跡希望祝福

未来傷跡希望祝福

希望未来傷跡祝福

希望

とうに戦場で死んだという者の、目撃情報。
在り得るはずもない、魂の解放を信じる者。
死と隣り合わせのこの世界で、霧の向こうに虚像を見出し、幻想を追い。
敗者は想いを抱えたままあっけなく朽ちゆき、勝者はまた戦火に身を刻まれに行く。
私はただその近くで愛機を駆り、取るに足らない的を、壊し続ける。

彼らを見ていてわからなくなったことが、ひとつある。
私は本当に、死んだのか？

本当に死んだのなら、その死因は？
『生き返らせた』というその手段は？
そして『生き返らせた』者の目的は？

本当は、なんとなくわかってきてしまっている。
死んだ者をもう一度起こす方法なんて、どうやらどこにもないようだ、と。

なぜ私は、自らを『死んだ者』と認識している？

何もわからない。
何も、思い出せない。

『まあ、いい。真剣、硬派、深慮……私はそういったものはトンと無縁でな！今明らかなことは、どうやら私は戦った方がよさそうだ、ということだけ。なら、私はただ戦うだけさ！どうせ暇だし、』

なら今は、わからなくていい。
何もわからなかろうと、私が何かを考えていようとなんだろうと、敵は来るのだしそれを叩き落とすことは、できる。

『戦うのはけっこう楽しいからな！』


『さあティアドロップ！暇で暇でまた死にそうな私に、今日も素敵な話を聞かせておくれ！』

本日のニュースです
雨音列島では園児たちに「ソーメン」が振舞われました
「ソーメン」はメシの原料からできた高級な麺類です
生き残った園児たちは、みな笑顔でソーメンを食べています
戦火の世にも、人々の連環を。我々はまだ、戦えます

深く、深く海の底へと沈みゆく夢。
あの中空を、赤い粉塵に刻まれながら、近づく水面から目を逸らすこともなく。
そして、いつかこの世界にも存在したらしい、すべてを見下ろす青と同じ色をたたえるその水の底へ、際限なく落ちてゆく、夢。
あれほど望んだ静寂が、あれほど望んだ真の自由が、今、私の目の前に。そして私の腕を掴み、霧なき地の果てへと、

導いてくれる、はずだった。


『寒くない？ほら、とりあえずこの上着を羽織って』
《死んだら寒さもなにもあるわけがないだろう？とはいえ私は貰えるものはすべて貰っていく主義だ！ありがとう》
『あげるわけじゃ……まあいいか。とにかく、あまり時間がないんだ。説明できるだけのことは全部説明して、ああ、先に機体を見せた方がいいかな。いやでもまずは君の名前を……』

《やれやれ、終わることすら許されないとは、私がいったい何をしたというのだ？》


＊＊＊

『なんっだこの鉄板は！？もう鉄板だらけじゃないか、こんなものばかり拾うつもりは……ティア・ドロップ！こう……どうにかしろ！このままでは私まで鉄板になってしまうぞ！いいのか！？』
『そういえばティア・ドロップ、君のパーツをいろいろと新しいものへ変えてみたのだが、どうだ？フッフッフ、グレイヴネットと出品者達に感謝感激雨霰、だな！』
『しかし世界を取り戻すといっていたが、どういうことだろうな？私は別に戻ろうとなんだろうと関係ないのだが……まあどうせ暇なんだ、この渦中に何か面白いものがあるかもしれないし、飽きるまで付き合っておこうじゃないか』
『……ってこら、ティア・ドロップ！ちゃんと迷惑メールは分けて破棄しておいてくれよ！ポイッと。まったく……』
『おや、またデメテルの同志と共闘か！いいことだ、今一度世話になろうじゃないか。私がいつまでデメテルにいるかてんでわからんが、協力できるだけ協力していきたいものだな！』

『さて、今日もひとつ面白い話をしてくれよ、ティア・ドロップ……のラジオ！』

本日のニュースです
ヒルコ・トリフネでは今日も「にわとりさま」の祭事が行われています
「にわとりさま」は食された鶏肉の神と言われています
にわとりさまはどう見てもひよこですが、にわとりさまと呼ばなければ祟られるそうです
戦火の世にも、人々の連環を。我々はまだ、戦えます

『アッハッハッハ！！見ろ見ろ見てるかティア・ドロップ！そこら中なんにもないじゃないか！塵、塵、赤い塵！馬鹿の一つ覚えもいいところだな！聞かん坊の幼児だって、こんなに何もかもめちゃくちゃにはしないぞ！これでも世界は今のままで十分美しいとは……信じがたいな！ハハハ、世界がこうまでなってしまうほどの戦、どんなものだったか気になるじゃないか！どうだティア・ドロップ！君も気になるだろう？そして是非是非参戦してみたかっただろう！？私はしてみたかったぞ意味もなく！！』
『それにしてもあの女！よりにもよってこの私にメシの話を振るとは、なかなかやるじゃないか！なんせ死んでるからメシなどいらぬというのに！フッフッフ、やはりこの見た目は完璧に完璧なほど生者のものということだな！さすが！さすが……さすがだな、この私を作った誰かよ！……メシはその辺の輩に譲ってやることにしよう』

『っと、おいなにか拾ったぞ！燐光の小瓶……こういう淡いものこそが美しいといえるものなのではないか？あの電話男にも見せてやりたいものだな！男だったかは忘れてしまったが！しかしこれでどうやって……まあいい、私は細かいことは気にしない主義だ！ティア・ドロップ！あとは任せたぞ！』


『さて行くぞティア・ドロップもっと面白いものを見つけに！今日も今日とて辺りは遠足日和、それになんといっても暇で暇で仕方ないからな！しっかりしてくれよ、なんせこの私のすべては君にかかっているのだからな！まあ、今の私に乗せてどうにかなるほどの重みはないのだがな！ハハハハハ！ああ、ラジオでもつけておこうかラジオ！とびきり新鮮なやつを頼むぞ！』

本日のニュースです
南の島では今、謎の珍獣「カビャプ」が多数目撃されています
人々の気配が消えた町などを横切る姿が確認されています
ピンク色でもふもふしていてかわいいですね。血を吸うそうです
戦火の世にも、人々の連環を。我々はまだ、戦えます

『そういえば同じ企業に協賛してる者と戦場を共にするようだな？そもそもメシのいらぬ私がメシの企業に協力するというのもなんとも妙な話だが……まあ飽きたらそのうち乗り換えるし……それはそれとして今のところ確か5人だかしかいない貴重な仲間だぞティア・ドロップ！御辞儀をしてこい！』