ENo.0056　メギーラ

昏き追憶。腐り堕ちた記憶と共に、戦場にて過ぎる思考。


『暇だったから戦場に出る。』
責任もなにもまるでない、非常に気楽といえば気楽な立場だ。身勝手極まりないが、縛るものがないのだから仕方ない。
しかし縛るものがない、というのは、寄る辺ない、というのと同義でもあるのが問題だ。
強い信念も、避けられぬ使命も熱い闘志もなく、ふらふらと戦場へ赴く。
それは上空を当てもなく渡る一羽の水薙鳥。
掴むものも伸ばす腕もなく宙に舞う一片のヘレニウム。
果てなき大海を水平線へとただ流される一艘の小舟。
頼むものがなければ、人間は、早々に壊れる。そういうものだ。
恐怖や絶望は容易く精神を蝕み、そして精神の弱った人間は、容易く壊れる。
得体の知れぬ敵が跋扈し、今なお崩壊へ向かうこの恐怖に満ちた世界では、それはなおさらだろう。
これが、これこそが私の求めた自由だったのだろうか。

『まあ別に、なにもなくても死ぬ時は死ぬからな。
全部行き当たりばったりで決めればいい。』
元より空っぽの脳には、考えがなければ恐れもない。
今日も明日も、いい加減にこの空を飛び続ける。
それでなんとかなればそれでいいし、ならなくてもそれでいい。

すでに死した身に、そもそも行先なんてないのだから。

『ちょうどいい、また死ぬまでの暇つぶしをしよう。』



『いい感じにラジオがついてるじゃないか、この機体。
ではひとつ景気の良い話を頼む。』

本日のニュースです
コロッセオ・レガシィではいまひよこコロシアムが開かれています
戦闘で疲れた人々を励まそうと、企画されました
ひよこが頑張って餌を早食いする姿は癒されますね
戦火の世にも、人々の連環を。我々はまだ、戦えます