ENo.0175　ラスティ・ネイル

薄暗い部屋、独房……、『ぼく』という兵器の格納庫。
鉄格子から見える景色はあの時と同じ、無機質なコンクリートがただ横たわっているだけ。

ラキア・パラミダスとの戦いから1週間……。
崩壊に向かう世界と暴走するセンチネルを止めるため、『グレイル』は準備を進めていた。
対センチネル作戦への参加を条件に自由を提示されたぼくは、たった今彼らに自由を奪われている。
きたるべき最終決戦から、ぼくが逃げ出さないようにするための措置だろう。

「ニーア……」

――今はただ、彼女に会いたい。
あの戦闘で手痛い敗北を喫した後、ニーアは別の基地に移送されてしまった。
少し前までは、ずっと独房で一人だったのに。今はこの状況が、他のなによりも苦しい。
心細くて潰れてしまいそうだった。ぼくはあの頃から弱くなってしまったのだろうか。
孤独なんて、気に掛けるほどでもない些細なことだったのに。

膝を抱えて、ため息をこぼす。
大洪水が世界を飲み込み始めたらしい。それはハイドラ持つ水の力が、そのまま襲い掛かってきたかのようで。
ニーアは……、彼女は無事だろうか。何もかもを放り出して、今すぐ君を助けに行けたらいいのに。
そうすれば心にぽっかりと空いた穴が、少しでも埋められるだろうか。

なぁ、結局ぼくはどうすればよかったんだよ。
研究所の言いなりになって、ただただ『生体兵器』を続けていればよかったのか？
あのクソ野郎を引き渡して、あいつが彼女にしたことを無視してへらへらと生きていればよかったのか？
それともあの時パスポート受け取っていれば、『人間』として彼女といられたのだろうか。
……馬鹿馬鹿しい。いまさらそんなこと考えたって、どうしようもないというのに。

彼女の温みが欲しい。背にもたれた壁はあまりにも冷たく、どこまでも無機質だ。
君が与えてくれる微睡みの中で眠りに就けたら、それだけでいいのに。寒さでやけに目が冴える。
長い夜になりそうだ。この深い闇の中で、いつかぼくは眠れるだろうか。

――これがただの始まりでしかなかったと気づくのは、ずっと後になってからのことだった。

ラキア・パラミダスが治める国『ランストラ』から派遣された遠征騎士団。
紛争の鎮圧が目的で残像領域にはよく訪れる部隊だが、今回の目的は遺跡の調査と解明が主。

人員はどれだけあっても足りないようで、様々なライダーに広く協力を募っている。
正式に入隊する必要はなく、寝床や飯の確保、小遣い稼ぎでの助力も大歓迎。
隊長の『祟鬼漬クロガネ』が温かく迎えてくれるはずだ。

部隊に不足している近接特化のライダーを育成するため、ユニオン活動は【格闘×5】。
ユニオン購入は【機動力+3%】、たまに【素材+1】になる予定です。（その時はなるべく通知します）