ENo.0126　ÅLONE

　オルオーネ
『死んだ赤子』は極光を見ていた。


「音も、光も、消えてなんていないわ、グロリア」

「こんなに綺麗な光の粒がたくさん！

　わたしたちの"視線"の先のあの点！もっと光があるに違いないわ！

　一緒に見にいきましょう、グロリア。」

「本当は、ここへ来る前にも、出会った人たちにだって、見せたかったの。

　みんな、いなくなってしまったけれど。

　だからグロリア、あなただけでも。

　あなただけは、絶対についてきて！」


　　　　　　　　　　　ｿﾏｰﾚﾌｫｰｹﾞﾙ
ついに形も保てなくなった　機体　　から零れ落ちた『死んだ赤子』は、極光を見ていた。

電磁波の塊が空間を押して虹色の光帯を翻すたびに、躰は粒子に分かれ散らされてゆく。


彼女は知らない。

何も知らない。

その電磁波の塊が、細胞の代わりを成しているナノマシンたちの結合を解き、

ナノマシンから情報を取り出し、届き得ぬ次元へ落とす

・・・・・・・・
情報を裁断する刃であることを。



「見えるわ。グロリア」

「この先に、××××××××が」

「あるのよ」

「まだ、何にでもなれる××××××××を持っているの」


彼女はその刃に撫で刻まれ切ってもなお、ついぞ知ることはなく、

やがて薄煙のような、疎らな光点となって、消えていった。


∵ほんとうよ！∵

∵なににでもなれたら……また、会いましょうね！　グロリア！∵






∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵

『死んだ赤子』は、横断歩道をわたった。

それが真実。